上海の生鮮市場で、金属ケージ内の生きたニワトリを品定めしている女性がいた。スープに使う鳥を探しているという。中国で広がりつつある新型コロナウイルスの発生源と疑われているのがその場で加工し、包装されていない食肉を販売しているこうした市場だ。
新型コロナウイルスは湖北省武漢市の市場で買い物、あるいはそこに勤務していた人から見つかった。病原体は市場で売られていた生きた動物から人に感染した可能性が指摘されている。
アジアかぜの流行から約60年、重症急性呼吸器症候群(SARS)の発生から約20年が経過した今でも、中国は多くの危険な感染症を生み出す震源地となっている。狭いスペースで買い物客と家禽(かきん)からヘビまであらゆる商品が混じり合うアジアの生鮮市場はその発生源と考えられている。
SARS発生以降、中国は感染症の監視・発見で前進を遂げてきた。国内の一部地域で栄養価が高いとされているものの、通常はあまり見かけることがない動物については販売規制を強化してきた。だが、こうした市場の人気はなお根強く、多くの都市での生活で欠かせないものとなっている。
上海の市場で鶏肉スープの材料を探していた「ラン」という名字の女性は、「完璧な鶏肉スープを作りたいなら、その場で処理された鳥がスーパーマーケットで売られている冷凍肉よりもずっといい」と話す。「風味が豊か」なのだという。
北京大学基礎医学院のワン・ユエタン教授(免疫学)はしっかりと検疫されていない野生動物の新鮮な肉が好まれていることで「動物と人の濃厚接触を通じ、中国は新型ウイルスの発生リスクにさらされやすくなっている」と語る。
上海の生鮮市場は先週末、生きたニワトリを買い求める多くの買い物客でにぎわっていた。購入したニワトリは隣で処理される。SARS発生以降、ヘビやマーモットなど身近でない動物を見かけることは少なくなったが、ひそかに売られることもある。
新型コロナウイルスの発生源とされ、閉鎖された武漢市の市場で定期的に買い物をしていたといい、生きているワニやハリネズミ、シカを見かけたこともあると振り返るリウ・ユアンフェイさんは市場の閉鎖を残念がる。
「何らかの危機が起きると、人々はなぜ、なぜ、なぜと尋ね始めるが、需要があるから市場が存在している。ここに市場がなくても、需要がある限りどこかで姿を現すことになるだろう」と述べた。
原題:
China’s Food Markets Can Be Breeding Grounds for Deadly Viruses(抜粋)
ブルームバーグ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-01-21/Q48E15T0AFB501
上海の市場で購入客のために鳥を処理する販売店
広東省の市場でケージに入れられたニワトリ
2020年1月21日 12:30 JST