作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。今回は新型コロナウイルスへの日本政府の対応について。
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「疫病と増税が重なるとは……」
ネットではそんな声がざわざわと広まりつつある。そろそろ一揆の季節でしょうか。隣の村と比べると、やっぱりこの村の残酷さは極まっているように見えて、自分が惨めだし。
なにしろ、お隣の韓国では全国100カ所以上(2月26日時点)に検査機関を置き、1日5千人が検査できる態勢を整えているという(3月には1日1万3千人が検査できるという)。テレビではマスクをした文在寅大統領が奔走する姿が報道されている。韓国でも感染者数はどんどん増え、死者も出ているけれど、それこそ嘘(うそ)のない「現実」なのだろう。危機を矮小(わいしょう)化せず、ただ直視して真摯(しんし)に対応する。国民の健康と命を優先して動く。そんな国の姿が、お隣からは見えるのだ。
対して日本は、なかなか動かなかった。危機感もリーダーシップも激しく欠けていた。何より衝撃的なのは、重症にならないと検査対象にならないと決めたことだ(27日現在)。高熱が続いていても肺炎にならなければ、日本に暮らす私たちは検査すらしてもらえないという。新型コロナウイルスは初期での対処が重要だと、専門家が口をそろえて言っているというのに、重症になるまで待てとは、どういうことなのだろう。検査数が少ないので日本での感染者は“少なく”見えるが、真実が見えないことで深まる不安に、底はない。
怒りは細部にまでわたる。だいたい「クラスター」って何よ? 政府が率先して「クラスター」とか言っているけど、普通に「集団感染」と言ってほしい。こんな危機的場面で、分かりやすい言葉を使わずカタカナに言い換えたり、妙な解釈をしたりと現実逃避する今の政府に、命を握られていることが屈辱だ。
現代の疫病が私たちに教えるのは、人類はまだ病を克服できていないということ、だからこそ政治が命だということなのかもしれない。今の政府は、ずっと前から合理的な思考をやめ、嘘を平気でつき、憲法や法律の解釈を自分流に行い、なにかあれば閣議決定し、都合良く既成事実をつくってきた。本当の危機に、「解釈」や「嘘」は通用しないのだ。
年末に本屋をぶらぶらしていて、タイトルを見て迷わず買った新書がある。『百姓一揆』(岩波書店)。つべこべ言わない、説明もしない、ただ一言の「百姓一揆」。ああ、この言葉になぜ、こんなにも、21世紀の日本人女が胸突かれてしまうのかしら。
著者の若尾政希氏は近世の一揆は決して「非日常」ではなかったと記す。「困ったときに領主は救ってくれるはずだと考え、そのために訴訟するのはあたりまえの日常だった」からだ。もしうまくいかなければ強訴となり、最後は一揆となる。人は生きるために訴えるのだ。
現代の百姓一揆が必要なときがやってきたのだと思う。非日常的な暴動や事件としてではなく、生の意味を求める私たちの知の結晶として。声をあげよう。
https://dot.asahi.com/wa/2020030500012.html?page=1
朝日新聞ウイークリーAERA 北原みのり2020.3.7 16:00
北原みのりwiki
北原 みのり(きたはら みのり、1970年(昭和45年)11月24日 - )は、日本の著作家、活動家、運動家。アダルトグッズショップ『ラブピースクラブ』代表[1]。ポルノ・買春問題研究会外郭団体ポルノ被害と性暴力を考える会理事
2017年、慰安婦問題日韓合意に反対する一般社団法人「希望のたね基金」の理事に就任。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E5%8E%9F%E3%81%BF%E3%81%AE%E3%82%8A
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