弾劾案可決、しかし適用には数ヵ月
12月14日、韓国の尹錫悦(ユン・ソンヨル)大統領に対する弾劾案が2回目の試みで国会を通過した。1週間前の1回目の弾劾案採決では「不参加」を党の方針として選択した「国民の力」も、国民世論に勝てず、参加に転換し、12票以上の賛成票が出た。
結局、「賛成204票 対 反対85票」(棄権+無効が11票)で、12.3戒厳令から11日目で尹大統領への弾劾案が国会を通った
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■社会混乱は尹大統領に不利に
第二に、尹錫悦(大統領)の弾劾案の主な理由である「内乱罪」が刑事告訴され、捜査が進行中という点も憲法裁の判断を遅らせる要素になりうる。憲法裁判所法51条によれば、「弾劾と同じ理由で刑事訴訟が進行される場合は審判手続きを停止することができる」と規定されている。
現在、韓国のすべての捜査機関が内乱罪に対する捜査に取り掛かっているだけに、近いうちに、尹大統領が刑事起訴される可能性が高い。この場合、尹大統領側では憲法裁法第51条を根拠に審議停止を憲法裁に要請することを考慮しているというメディアの報道もある。
過去、朴槿恵大統領の弾劾当時には、憲法裁判所で弾劾引用判決が出た1ヶ月後の2017年4月、朴元大統領を賄賂罪などで刑事起訴し、3年9ヶ月後の2021年1月の最終審で懲役20年刑が確定した。この点を考慮すれば、尹大統領への内乱罪起訴後、最終審まで何年がかかるか分からない。憲法裁が尹大統領の要請を受け入れるかどうかから、尹大統領側と国会側の相当な法的論争があるものとみえる。
このような点から、韓国では、次期大統領選挙が来春ではなく、来夏以降に行われる可能性が出ている。
ただ、大統領弾劾による国政空白が社会混乱を加重させているという点は、尹大統領に不利に作用している。
現在、検察、警察、公捜処が合同で設置した「内乱罪合同捜査本部」は戒厳事態の関連者を手当たり次第に逮捕している。捜査本部はこれまで、元国防長官、陸軍総長、特戦司令官、防諜司令官および隷下部隊長、警察庁長、警察ソウル庁長を逮捕した。さらに、共に民主党は国会で法務部長官と行政安全部長官を弾劾し、安保と治安の司令塔が空白状態だ。
北朝鮮と武力対峙中の状況で、安保と治安に空白状態が長く続くことを憲法裁判所で放置してはならないという世論が強い。すでに積極的な弾劾賛成に転じた『朝鮮日報』などの主流保守紙でも、「一日も早く弾劾案を国会で通して社会混乱を最小限にしなければいけない」と「国民の力」党に圧力をかけた。憲法裁にも同じ要求をするものとみられる。
■「内乱同調犯の清算」という未来
結局、もう一度強調するが、今後の尹大統領の運命は「法理」ではなく「国民世論」が左右することになるだろう。そして、進歩陣営に対抗して一度も世論戦で勝利したことのない保守陣営は、今回も自滅するものとみえる。
国民世論に従い、憲法裁判所がサッサと弾劾案を受け止めれば、来年の春には早期大統領選挙が行われ、現在としては李在明(イ・ジェミョン)共に民主党代表が次期大統領に選ばれる可能性が極めて高い。すると今後韓国社会はどうなるだろうか。
朴槿恵大統領弾劾後に政権を握った文在寅大統領と共に民主党は「積弊清算」という名前で検察を総動員し、1000人余りに近い保守政治家を捜査し、この内200人を拘束した。この過程でひどい侮辱感を感じた5人は自殺した。
李在明(イ・ジェミョン)代表は2017年の民主党大統領候補予備選挙の時期、「権力は残忍に使わなければならないのに、文在寅候補は善良すぎる」という恐ろしい言葉を残した人物だ。もし李氏が韓国の大統領になれば、「内乱同調犯の清算」という名前で国民の力の政治家はもちろん、尹政権の閣僚に対する強力な捜査が進行されるだろう。
すでに「共に民主党」は、秋慶鎬(チュ・ギョンホ)「国民の力」院内代表と韓悳洙首相を内乱同調罪で告発している。すでに政界では、「共に民主党」が12月4日未明の国会での「戒厳令解体要求決議案票決」に参加しなかった「国民の力」の90人の議員を「内乱共犯」で刑事告発し、「国民の力」を違憲政党として解散申請をする計画を持っているという恐ろしい噂が流れている。
今回の弾劾事態は、韓国の保守陣営に朴槿恵弾劾当時よりも大きな後遺症を残し、文在寅政権下で始まった左右分裂が、韓国社会でさらに根を下ろすものとみられる。
現代ビジネス 金敬哲 2024.12.16
https://gendai.media/articles/-/143282