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割と波乱万丈な人生だから何かの片手間くらいで気長に見てくれ
1987年夏、俺様爆誕。
翌月、母親自殺にて死去。
まあそれは置いといて、俺が覚えてる中で一番古い記憶は5歳の頃
ブロックで遊ぶのが趣味だった俺は六畳の部屋いっぱいにレゴで作った街を築き上げるのが趣味だった
ブロックを入れておくバケツみたいなのをひっくり返して山に見立てて、塔や病院なんかを作って両手で人形を動かしては独り言をブツブツ呟く気色の悪いガキそれが俺
そんな珍事に耽っていたある日、リビング兼台所の方からガラガラ声の父さんが「おーいスグル(偽名)ー」と呼んできた
いつもは機嫌が悪いのにその日だけ少し嬉しそうだったから鮮明に記憶に残っている
また殴られるんかなーとか思いながら恐る恐る戸を開いたら、ぎこちない笑顔の父さんが椅子に座って「ちょっと来い」って手招きしてた
大体見てきたのが怒った顔だったから、俺は不思議に思いつつも席に座った
そしたら父さんは円卓の上に置いてあるでっかい何かを指さして「おう、食えや」みたいな事を言った
テーブルにはよく見るとケーキが置いてあった
俺が初めて祝ってもらった誕生日
ロウソクも刺さってて吹き消したりなんかもした
祝い慣れてない父さんも心無しか嬉しそうで俺も嬉しかった
でもケーキは不味かった
>>5 質問随時受付中
書き溜めはしてない
反省はしている
とんで2年後の春
晴れて小学生になった俺は無事いじめられていたらしい
声がキモイとか口がクサイとかお前の母ちゃんでべそとかイヤお前俺の母ちゃん死んどるわと思いながら俺はいじめに耐えた
というか虐められてるって知らなかった
それを教えてくれたのが初めて出来た親愛なる友ボンちゃん(偽名)
ある日いつもの如く俺が引き出しに入れたはずの筆箱を探してたら、前の席から鉛筆がニョキっと差し出された
差出人はボンちゃん
ボンちゃんはその時「いじめはする方が100%悪いけん!」という有難いお言葉もプレゼントしてくれた
俺は「そやろか」と言ってその鉛筆を受け取った
俺のマイベストフレンドとの初めての会話
その日から何か知らんけど事ある毎に目の前にボンちゃんが現れた
俺が延髄チョップを喰らいかけた時
うんこ入りの便器に顔を押し込まれた時
死ね死ねコールを浴びせられた時
なんか知らんけど現れた
死ね死ねコールの時は面白かったわ
「しーねっ、しーねっ」ていじめっ子グループに囲まれよった時に「スグルは死なんわー!」って叫びながら乱入してきよったから、俺が「えっいつか死ぬやろ」って言ったらボンちゃん含めみんな「えっ」て顔しよったの笑える
いや文面だと伝わりにくいけど本当にシュールだった
俺なんであの時あんな悟ったみたいなセリフ言ったんかなーと思ったけど今考えたら父さんの受け売りだったわ
で小三の頃
まあだいぶ仲深まったなーって自分でも漠然と思ってた頃合いで俺はボンちゃんに自分の将来の夢を打ち明けた
というのも、昼休みの時間に何でだったかなー……何かそういう話題になって、ボンちゃんが二時間サスペンスの刑事ばりに机に片腕乗せて俺に将来の夢を聞いてきた
多分その圧にやられて自白したんだと思う
「そうやねー……大きくなったら王になりたい」
そう言った記憶がある
ボンちゃんは「いいやん!」と言ってくれたけど多分二人共とち狂ってたんだと思う
言いっ放しもなんだからってボンちゃんの夢も聞いたけど「公務員」だった。いやお前そこ堅実なんかい
でもまさか俺が大きくなる前にその夢を叶えてしまうだなんて、この時は思いもしなかった……(伏線)
一旦ボンちゃんは話の隅に置いといて、その頃の家庭事情も書いとく
というのもここら辺の経験が俺の人格形成に八割くらいの影響を与えたと言っても過言だわ書いてて思ったけどそれは過言だったわすまん
まあ六割くらいは与えてた
まあーーーー虐待されてた
凄い虐待されてた
そんじょそこらの虐待がただの乳繰り合いに見えるくらい虐待されてた
父さん土木作業員なんだけど、仕事で何かストレス溜まっとんか性欲溜まっとんか知らんけどもうそれはそれはオリンピック選手も顔負けのエネルギッシュな虐待だった
父さんが持てば皿も空き缶も座布団も全部武器になる
まるで傭兵だった
おいそこ座るなだのやれ早く来いだの俺はお前のペットかと
虐待されるにつれて段々俺は10歳にもならずして哲学的な思考を持つようになった(ドヤ顔)
人は何故生きる事に執着するんだろうとか人は何故怒るんだろうとか
それでもまだ子供だったからその時は大体「人はなぜ〜」から始まる疑問が殆どだった
教えてアルプスのモミの木
そんな不毛な疑問の中でも俺は一つ確固たる結論を得た
「人は何故怒るのか?」
それは「期待するから」だ
「全ての怒りはあらゆる期待から生まれる」
これは俺が今日まで持ち続けている数少ない持論の一つだ
この答えを得ただけでも、もしかしたら虐待という経験も俺には糧となるものだったのかもしれない
虐待の話を他人に打ち明けると「ひどい父さんだね」とか「親として失格」とかいう人がめちょめちょ多い
確かに俺は最初の頃こそ父さんを恨んだ事もあった
早くくたばりやがれとも思った
でもその答えを得た日から俺は父さんに期待するのをやめた
「今日は平和に過ごせるかもしれない」「今日はここで殴られないかもしれない」「今はここで話しかけても怒られないかもしれない」
そんな希望的観測を父さんに対してやめたその日から、俺には父さんの悲しみが見えるようになった
色んな辛い事があるんだろう、母さんが居なくなって寂しいんだろう、会社で上手くいってないのかもしれない……
父さんを許しはしてない
でも少なくとも、「期待しない事」は「気付く余裕」に変わり、確かにそれは「許しの足掛かり」になった
と、鼻くそほじりながら考えた7歳の秋
さてそんな小一病を拗らせた俺の家庭事情だったがもういいや面倒臭い、舞台を学校に戻す
俺が王になる為にはどうすればいいのか
小四に上がり「高学年」の称号を無理やり押し付けられた俺は、王になる為の努力をしてない事に焦燥感を抱いていた
そもそも「王」とは何なのか?
俺は藁にもすがる思いでボンちゃんに問うた
問うた……けどなんて返事されたかは覚えてないので多分クソしょうもない返答だったんだと思う
とにかく形だけでも王になろうと思って俺は王になりきる事にした
王のロールプレイだ
王たるもの他人から虐げられていたんでは話にならない
それまでは特に意識してなかった俺に対するイジメだったがその時俺は初めて、まずこの問題を解決せねばと思い行動に移した
これより突然だが俺の王への道奮闘記を記す
なりきりプレイその一
『常に庶民の変化に気を配る』
ある朝、いじめっ子が髪を短く切ってスポーティになってたので隣に近寄りすかさず「スポーティだな!」と発言
ぶん殴られる
恐らくスポーティを何かの悪口だと思ったんだろう
俺もあんまりスポーティが何なのかよく分かってなかったから「短髪=スポーティ」という連想で軽率な発言をしたことを反省した
殴られて当然だと思った
なりきりプレイその二
『日々勤勉たるべし』
ちなみにこのサブタイトル的なのは俺が今考えただけで、小学生の頃は漠然とした王のビジョンに基づいて実際にやってみているだけである
授業で「分かる人〜」と言われたら考えるよりまず先に挙手
当てられたら儲けもん、じっくり考えてから回答
嘘をつくのは悪い事なので熟考した末分からなければ無駄に足掻かずに「分かりません!」と回答
結果先生からは「ふざけないでね」と言われいじめっ子からは「は?だるお前」「ふざけんなちゃ」「ぶち〇すぞ!」と言われる
俺は何が間違ってるのか分からなかったが、次第に「分かってて手を挙げてる人に申し訳ないな……」と思いこれは辞めることにした
なりきりプレイその三
『何事にも動じてはならない』
大体筆箱を隠すとかそういう精神的な嫌がらせは何故かこの頃の俺は全く動じてなかったが、流石にすれ違いざまにボディブローとか雑巾を顔面に押し付けられると否が応でも反応してしまう。悔しいけど感じちゃうのだ
でもそれでは王の威厳が丸潰れである
なので俺はそういう物理的な攻撃も極力小さな反応で応じる努力をした
いきなり殴られても「ぐっ……ぅ」と般若面の顔真似で対応
階段から突き飛ばされても転がり落ちながら(自分の中では)華麗なステップで復帰
雑巾を頭上から絞られても髪をかきあげて水もしたたるいい男感を演出していた
これは結構上手くいったつもりだったが、俺の反応が面白かったようで、皮肉な事にいじめはどんどんエスカレートしていった
確か半年は続けた気がする
色々と試したが、結局俺はある時ふと重大な事実に気付いてしまった
俺 は 王 に な れ る 年 で は な い
小学生にして王になるのは時期syosoだという事に、かなり時間を置いてから気付いてしまった
今やるべきは、王になりきる事ではなく王になる資質を磨くこと
記憶が曖昧だが王になりきっている間ボンちゃんとも深く交流してなかった気がする
自分の名誉の為に友を疎かにするのは本末転倒
その時点で王足りえないのだと
ふぅ……
とりあえず20レスはいけたわ
ここからは時間が空き次第まったり書いてく
バーーーーっと勢いで書いたから疲れた……死のう……
dat落ちの条件とかよく知らないんだけどこんだけ書いたら流石に即死は無いよな
どこまで書いたっけかと思って読み返してみたら小学生だから王になれないって所までか
悲しいよな
俺はそれからいつか来たるべき王就任の時までは、極力自分が王になるという事は忘れておくことにした
おくことにしたのだが……
中学生になった俺は本当にそれを忘れてしまった
将来の夢が変わったのである
子供の夢はコロコロ変わるものだから仕方の無い事でもある
悲しい事にそれからしばらくは俺がその夢を思い出すことはなかった
でも悲しい事だけではなかった
中学に上がると俺へのいじめが軽減されるようになった
うちの地元は小学校が近い所に二つあって、それからまた近い所に中学校がある
この二つに通う生徒の半数は、この同じ中学に行く事になるのだ
生徒の総数が増えた事で俺の存在が希薄になり、いじめ自体が少なくなったって訳だ
水で薄めたカルピスみたいなもん(?)
でも中一になって急にイジメが無くなったもんだから俺は逆に心配になった
え?皆俺の事見えてる?もしかして俺は死んだの?
そう思っていた
でもボンちゃんは変わらずよく話し掛けてきてくれたから、どうやら死んではないらしい
イジメが軽くなったって言っても、別に皆急に俺をチヤホヤし始めた訳じゃなく、軽い嫌がらせとか俺への態度は全く変わっていない
書いてて思ったが、そりゃあ新しい環境に入りたての頃は皆とりあえず様子を見るよな
真っ先にこいつイジメたろ!みたいな奴はクラスで浮いてしまうリスクもあるから恐らくそれで一時沈静化したんだろう
20年越しに真実が分かってしまった
さて、俺は夢が変わったと言ったが、今度の夢は「王になる」みたいな馬鹿げたものじゃなかった
俺もこの頃から段々と常識という物が身についてきたらしい
かと言って普通で平凡でなんの面白みもない大人にだけはなりたくない!
いっちょまえにそんな生意気な思考はあった
結果俺の中で出した答えは「小説家」だった
非現実的でも現実的でもない微妙な夢だとお思いだろうが、なんと驚くべき事に当時の俺は
100%なれる!なれて当然!すまん、なれない奴おる?wくらいに思っていた
俺は外で遊んだりするのはあまり好きではなく、昼休みはもっぱら図書館で本を読み耽っていた
恐らくそれが小説家という途方もない夢を抱くきっかけになってしまったんだと思う
小説家になるからにはやっぱり豊富な知識がないとまず話にならない
そう思った俺は勉強を頑張った
国語、数学、化学、歴史、もちろん美術なんかも含めて全ての教科の知識を強化しようとした
教科を強化しようとしたのだ
もう一度言う
教科を強化しようとしたのだ
その甲斐あってか、俺は中間テストや期末テストでは基本的に100点、低くても90点を下回る事は無くなった
俺の小学校時代を知らないクラスメイトからは、
「スグル君って頭良いんやね!」
「優等生やん」
など多数の高評価をいただきました
誠に恐縮でございます
生意気注意報発令
以下の文章には生意気な表現が含まれております
生意気アレルギーの方は閲覧を御遠慮下さい
生意気が苦手な方は医師に相談の上、十分注意してご閲覧下さい
しかし俺はクラスメイトに褒められる度に、嬉しいと同時に腹立たしかった
知識は「頭の良さ」という括りで見れば、それが占める割合はもの凄く少ない部分だ
何故なら知識は「知っているだけ」であって、頭の容量的には誇示する意味があるものの、それ以外の何物でもないからだ
俺がテストで100点を取っているのは勉強したから
授業で教えられた事を知っただけに過ぎない
どんな知識も教えられれば誰だって知る事が出来る
それなのに俺の事を頭が良いと言うのは、単に自分が授業を真面目に聞きたくない、テストで低い点を取っちゃうのを
「あいつは頭がいいから自分より点数が高いんだ」と決めつけて無理やり納得させているに過ぎない
そんな事を鼻くそほじりながら考えた中一の夏
言い訳をさせて貰うと、別にイキってた訳じゃない
本気でそう考えていただけだ
でも確かに周りからそう言われ始めて、優等生というキャラクターを演じ始めていた自分がいた事も事実である
現に、ボンちゃんからの遊びの誘いもそれまではノータイムでOKしていたがその時期は、
「ごめん、今日は図書室で本を読むから」
と誘いを断る事も多くなった
図書室で本を読みたかったのは本当だが、「図書室で本を読む自分」に酔っていた節もある
まあボンちゃんは毎回図書室についてきてくれたんですけどね
そんな折、またも俺に2つの運命的な出会いを果たす
という事で事件その一
『雨天に降り掛かる災厄!?あの人は見た!』
俺は昼休みのチャイムがなると同時に、誰よりも早く席を立ちいつものように図書室へと向かった
この日はボンちゃんが休みだったため一人で歩いた
朝から雨が降っていて、いつもは直線距離で行くところを、中庭に隣接する渡り廊下を通って行く事にした
その道の途中には体育館がある
入学から約半年、部活に入った新入生達は先輩の指導のもと日々練習に切磋琢磨している
半開きの扉の向こうから気合いの入った掛け声が篭もり気味に俺の耳へと伝わってきた
俺はその練習風景を頭に描き、俺も部活に入れば良かったなぁとか思いながらその前を横切ろうとした
横切ろうとしたら、転んだ
入口前のマットに足を取られて後頭部を盛大に強打した
それだけならまだ良かったが、直後に後方からゲラゲラと笑い声が聞こえ始めた
この時の記憶は未だに頭で動画再生出来るくらい印象に残っている
突然の事に呆気に取られて馬鹿みたいに仰向けで硬直していた俺の顔を、見た事もない男子生徒が覗き込んだ
俺が何か口にしようとした瞬間それを遮って
「えっ?www転んだんお前?何で?www普通転ばんやろそこでwwwそこで転ぶ奴初めて見たwwwアホなん?wwwウケるwww」
と怒涛の煽り文句が飛んできた
俺は普通転ばんやろと言われても転んだんやからしゃあないやろと腹を立てた
まさか煽って来るとはミジンコ程も思ってなかったので何を言っていいのか分からず、俺は「しらん!」と意味不明な言葉を口にし自力で起き上がろうとした
そしたらそいつがあろう事が手を差し伸べてきたのだ
やだ……イケメン……?
だが当時の俺はその小さな気遣いにもイラッと来て、結局自力で立ち上がった
出会いは覚えてるのにそこから何であんなに仲良くなったのか覚えてない
俺のマイベストフレンドとの出会いその2
前レスで言ったベストフレンドその2はパンサー向井に似てるので、以降名前を向井とする
事件その二
『裸踊りがもたらす悪夢の再来!』
俺はハッキリ言って裸が好きだ
でもそれは女性の裸に限った話であって、野郎の裸なんか見ても全く勃起しないしむしろ萎える
何でそんな事を話すかと言うと、例によって俺は昼休みに図書室に行こうとしていた
廊下を歩いていたら、ボンちゃんが「ねぇ今隣の教室で面白いことありよるらしいよ!見に行こうや!」と言ってきた
俺はその前に何でいつの間に隣にいるんだこいつと思ったが、面白いことと噂されるほど面白いことに興味を持ち、ボンちゃんと一緒にそこに行くことにした
教室で待ち受けていたのは、とても面白いとは形容しきれない、イジメの現場だった
どうやらいじめられっ子のデブ男子が無理やり服を脱がされ、踊る事を強要されているらしい
何故か知らんがデブはヘラヘラ笑いながら、踊りそうで踊らない微妙なラインの動きを維持していた
焦らし上手である
ちなみにこのデブはデブなので名前はデブとする(無慈悲)
よく見るとデブはヘラヘラしているものの半泣きである
俺はドン引きしながらボンちゃんの方に顔を向けた
ボンちゃんもドン引きしていた
どうやらいじめっ子の構成員が教室に宣伝して回っていたらしく、ボンちゃんもまさかイジメが行われているとは知らなかったらしい
俺はこのまま回れ右して図書室に行っていいものか悩んだ
イジメの現場を見て知らんぷりしておくのも気分が悪い
かと言ってこのまま見続けるのも傍観者みたいでそれも嫌だ
結局俺は何も出来ずにただ情けなく突っ立っていた
俺もイジメを経験した事あるから他人事とは思えなかった
(この時は既に俺は小学生時代の経験がイジメだったと理解していたから)
見てると踊りを強要しているいじめっ子側の一人が、
「誰かこのデブ殴りたい人ー!」と募集を募り始めた
そんな奴おるわけないやろ……と思っていたら案の定誰も、面白がって見てはいるものの舞台に上がるのはゴメンだって感じだった
いじめっ子はちょっと待った末、周囲をキョロキョロし始めた
ここで俺はどこかに行くべきだったのかもしれない
いじめっ子と目が合ってしまった
MajiでKoiする5秒前
いじめっ子ってのはどうやらいじめやすい子に鼻が利くらしい
俺と目が合った瞬間何かを感じ取ったかのように、
「あっじゃあ君さぁ、ちょっと来て!」
と観客を招く司会者ばりの気迫で手招きしてきた
ボンちゃんが「行かんでいい行かんでいい……!」と小声で必死に腕を掴んで来たが、
俺も俺で「ここで逃げるのは癪」という謎の男気さんが心の中でチラ見してきたので、出来るだけ堂々と、肩で風を切りながらポケットに両手突っ込んで歩き始めた
もうこうなったらいじめられっ子の素質があるという才能を見抜かれてはならない
俺は周囲の生徒に「ちょおっとごめんねぇ〜」と言いながら野次馬の群れの間を割いて闊歩した
そして俺を呼んだいじめっ子の顔になるべく接近し、多分数センチくらいの顔面距離で「なぁにぃ〜?」とメンチを切った
いじめっ子は俺の迫真のオラオラ演技にも全く動じず、「あっうん、ちょっとさぁ」と話を進めだした
こいつ……只者じゃない!
「ちょっとこいつ殴ってん?こう、こう、こう」
いじめっ子は突如その場でシャドーボクシングを始めた
俺に殴り方をレクチャーしたいらしい
でも今の俺はオラオラなので、殴り方なんて数多の場数を踏んできたから知ってるという設定だ
俺は「あー、OKOK」と心の中で冷や汗を書きながらこれどうしようと必死に頭を働かせた
殴ったらイジメに加担した事になるしデブにも悪い
いくらデブは弾力があるからと言って、ノーガードの中学生に思いっきりパンチを食らわせたら流石に痛いだろう
俺はガリガリだけど多分痛いはずだ
痛くあって欲しい
それくらいの腕力が自分にはあると信じたい
思考が混線する中、俺は閃いた
>>42 有り難き
殴るのがイジメなら殴り合えば良いじゃない!
マリーアントワネットもビックリの逆転の発想で、俺は何とかこの場を切り抜けられないかと思った
「でもただ殴るだけやとつまらんしさぁ……」
「ボクシング、しようや☆」
俺の人生史上イキった場面ベスト5に入るキモイ台詞を口にし、周囲の反応を伺った
周りの生徒は俺の痛々しさにドン引きしていたような記憶があるが、いじめっ子だけは何故か反応が良かった。苦笑いしてたけど。
「あ〜いいやん!じゃあ名前は?」
この時俺は「スグルだ。覚えとけ」と言いたくてたまらなかった気がする
実際は多分「あっスグルです」みたいに名乗った
「じゃあスグルVSデブ!レディ〜ファイ!カンカンカン!」
さあ一ラウンド目
裸のデブと服を来たガリガリの因縁の対決が始まる
デブは「えっ?えっ?」とまだ状況が飲み込めてなかったようだが、この試合はそんな迷いや困惑が一番の敗因になるのだ
俺がとりあえずファイティングポーズを取ると、デブもファイティングポーズなのかウンコ気張ってんのかよく分からんポーズで答えてくれた
とりあえず勝負を仕掛けなければ話にならないので、俺が先手を仕掛ける事にした
あんまり痛くないようにデブの腹をペチッと殴った
まあジャブみたいなもんだ
俺が人生で初めて故意に人に暴力をふるった瞬間である
実際マジで痛くなかったんだろう、デブは頭に「?」を浮かべたような顔をして首を傾げた
段々腹立ってきたわこいつ、リアルで首傾げていいのは可愛い子だけなんだよ
そんな事を思った記憶がある
しかしこの様子だとデブは反撃してきそうにない
デブが反撃してこなければ俺がしてるのは結局一方的に暴力をふるうイジメと何ら変わらない
どうしよう!助けて!誰か助けて!
あっ……!そうだボンちゃん助けて!
小学生の時みたいに俺を助けて!
チラッとボンちゃんのいた方を見る
い な い
絶望した
ボンちゃんは変わってしまったのだ
イジメの現場を目にして逃げてしまう臆病者に
……いいや、そんな事は誰だってする
ボンちゃんは悪くない
普通になっただけだ
ボンちゃんはいつまでも友達だ……!
俺の中で謎の葛藤が生まれたが、そんな事は今はどうでもいい
絶望ばかりもしてられない
この状況を打破するのは自分に他ならない、誰かを頼っている時点で駄目なんだ
そう自分に言い聞かせた
「ほら〜、やれや!デブも殴れや!頑張れ〜デブwww」
いじめっ子が健気に応援する事によって、俺のイタさにドン引いていたクラスの野次馬も次第にガヤを飛ばすようになった
「いけ〜!負けんなデブー!」
「頑張れデブー!」
「デブ殴れ!みぞおちを殴れ!」
もしかして俺はアウェーなのか?
しかし俺はへこたれずにその流れに乗じてデブを挑発した
「ホラ、殴ってこんのか?ビビっとんかデブwww」
わざと煽った
デブはデブの癖にデブと言われたら怒り始めた
苛立ちがあからさまに顔に出た
まあ確かにいきなり現れた謎のキモくてイタいガリガリ男にデブだの何だの罵倒されたらそりゃ怒るだろう
だがこれはデブの為そして俺の為でもある
デブが殴ってこなければ俺も困る
「そんなんだからデブなんだよ」
色々と煽った中のこの発言、よっぽどデブの琴線に触れたらしい
デブはさっきまでヘラヘラ笑いながら裸でモジモジしてた奴の顔とは到底思えない、鬼のような表情に変わり始めた
「ん〜ふぅ〜……!!!!」
デブは腰を深く落とし今にも螺旋丸を打ち込みそうな体勢で構えた
えっ?ちょっと待って?
そんな感じで来るの?待って待って煽ったのはごめんてでも待って
俺そんな本気でいってないしそもそも俺殴ったの一発だけだしそのあとベラベラ喋ってただけだし
俺ガリガリだしあと俺今うんこ漏れそうだしデブにそんな感じで構えられたら流石に命の危険感じるしあと俺うんこ漏れそうだし
殴られるまでの数秒間で俺は死を覚悟した
直後デブは自らの体重全てを拳に乗せて、パンチと言うにはいささか凶暴性に溢れ過ぎた、タックルとも形容出来るようなそんな一撃を俺のみぞおち目掛けてお見舞した
いやお前みぞおち狙うんかーい、かーい、かーい……
殴られて吹っ飛ぶ間やまびこのようにその言葉が頭の中にこだました気がする
殴られて吹っ飛ぶ
漫画だけの話だと思っていた
俺の貧弱な体は教室前方から教室後方まで綺麗に吹っ飛んだ
傍から見ればそれはそれは綺麗なアーチを描いていたと思う
後ろの机や椅子を盛大に巻き込みながら、まさにドンガラガッシャン的な音を立てて俺は背中から着地した
痛かったのは痛かったが、幸いにも俺は日常的に家で暴力を受けていたので、痛みに耐性があった
それよりもまず吹っ飛んだことに自分で驚いていた
数秒間息が出来なかったのも驚いた
それまでやいのやいの言っていた周りは俺が吹っ飛んだ瞬間ピタリと静寂に包まれた
いじめっ子も野次馬も、皆俺とデブを交互に見ていた
程なくして、ボンちゃんが呼びに行っていた生活指導的な先生が駆けつけるなり怒鳴り散らした
ボンちゃん、そういう事だったのか……
許してくれメロス、俺はちらと君を疑った
事の顛末は事実と同じ形で先生に伝わり、いじめっ子が一番怒られ二番目に俺が怒られた
うちの先生からはイジメに関する指導の方針を帰りのホームルームで語っていた
多分隣のクラスでもそうだっただろう
しかしそんなただお説教でイジメが無くなるなら、全世界の学校はとっくにいじめゼロになっている
デブがいじめられることは少なくなったらしいが……
俺へのイジメが再び怒り始めた
理由は自分でも分かる
あの事件で見せた数々の痛い発言や行動、貧弱な体つき、キモイ声……
まあ再び起こっただけで元々経験していた事なので大したダメージはなかったが、それでもやっぱりそれからの日々は憂鬱だった
とまあこれが小卒から中一の頃の学校の話
マジでただの自分語りだから別にオチとかはないけど許してヒヤシンス
これからもこんな感じでちょっとずつまったり書いてく
このペースだと次あたりに本格的にヤバい出来事の話に書けそうだから楽しみにしてる(自己完結)
また時間空いたら書きますわ
読んでくれた人ありがとう
中二になった夏休み、俺は小説家になるという夢を叶える為にとある大きな決断をした
それは文藝会新人賞に応募する事だ
確か初秋の頃くらいに締切があって、夏休み丸々使って小説を書きあげればギリ応募出来ると思った
夏休みの課題なんかは超優等生の俺は数日で全て終わらせ、小説を書くことだけに全てのエネルギーをぶつけられる環境を整えた
ボンちゃんから遊びに度々誘われたので、当初昼間に家で書く予定だった俺は、次第に近くの市民センターでボンちゃんと一緒に過ごしながら小説を書くようになった
その頃は既に向井(
>>35~参照)からもちょいちょい遊びに誘われたが、奴はどちらかと言うとアウトドア派でバスケやサッカーとかがほとんどだったので俺は丁重にお断りしていた
それでもしつこく誘ってくれるので良い奴
ちなみに向井はサッカー部だった
さて、俺はいつものように市民センターにてボンちゃんの他愛のない話を聞き流しながら、必死に小説を書き進めていた
確か小説の内容は、記憶喪失の青年が記憶を取り戻そうとするが、それを進めていくうちに実は自分がとんでもないクズ人間だと発覚してしまう、みたいな内容だったと思う
俺はこの極めて陳腐な内容の書き物を、極めて稚拙な文章力で必死に表現しようとしていた
中学生の語彙力なんてたかが知れているもの
しかしこの頃の俺は自分の才能に対して全く疑いを持っていなかった
ところでその市民センターは遊び部屋みたいなのがあって(というより子供の入れる場所はそこしか無かったような気がするが)、マットやブロック、小さなちゃぶ台と座布団など最低限勉強と遊びができる道具及び空間は用意されていた
夏休みということもあってかたまーに近所の小中学生が遊びに来たり、おばちゃんが受付みたいな人と雑談しに来たりしていた
だが別にそれを邪魔だとは思っていなかった
俺はその会話や笑い声、近くで鳴る車のエンジン音や蝉の鳴き声を無意識に聴きながら、リラックスした状態で書いていた
もし俺が家で一人寂しく書いていたらとっくに執筆を投げ出していたかもしれない
家で書くこともあったが、ここで書いている時はやたらと筆が軽かった
ボンちゃんに感謝だ
そうして順調に原稿用紙をクソ汚い字で埋めていたある日、事件が起こる
いつものようにボンちゃんに誘われ、俺は昼から7~8時間ほどぶっ通しで小説を書いていた
途中でボンちゃんがお菓子を買ってくれたり、マットで一人遊んでいたりして、よくこんな俺と一緒に長時間居られるなと思ってた
夜も次第に更けていき、外が薄暗くなってきた時だ
見ない顔の中学生グループが市民センターに入ってきた
一目で分かった
こいつらはいじめる側の人間だ
いや、誰でも見れば分かったと思う
というのも、入ってきた3人組の内の一人は髪を金色に染め上げ、一人はゴリゴリの筋肉に真っ赤なタンクトップ、一人は金属アレルギーの人なら発狂してしまうほど衣服にジャラジャラとチェーンを付けていた
どっからどう見てもコテコテのヤンキーである
三人組はどうやらこんな時間からプロレスを開始するらしい
入ってくる時に一瞬目が合ったが、幸いにもマットは奥の方にあり俺達に構うことは無かった
ボンちゃんはその三人組を一瞥して「もうそろ出ようや」と言ってきたが、俺はこの時凄くいいところで、今辞めるのは惜しかったので「俺はもうちょっとおる」と返事した
ボンちゃんはそれを聞いて一人で帰ることも無く、黙って俺のそばで座ってた
しばらくの間、奥の三人組はギャアギャア騒ぎながらマットの上でプロレスをしていた
たまにチラッと目をやると、二人の男がくんずほぐれつの取っ組み合いをし、もう一人がジャッジを行っている光景が目に入った
腐女子大歓喜
それから一時間くらいは経っただろうか、流石に疲れたらしく三人でぐでーっとマットの上に寝そべったりヤンキー座りで会話し始めた
面白かったのはどのタイミングでも三人同じ体勢だった事だ
三つ子かお前ら
俺とボンちゃんもその頃には一段落ついて、うまい棒かなんかを貪り食ってた記憶がある
突然、三人のうち一人が「何食べよーん!?」と大声で絡んできた
俺はその瞬間やっちまったと思った
もうちょっと早く帰れば絡まれずに済んだかもしれない
俺は努めて真顔で「駄菓子です」と答えた
ヤンキー達はその返事を合図に
「えー何何ー?」
「なんて?声小さいね君www」
「俺らも腹減ったけん分けてくれーん?」
とズカズカこちらに歩み寄ってきた
ボンちゃんと俺は顔を見合わせた
まだ別に何か良からぬ事態が起こった訳では無い
だが俺達は察していた
このあと面倒な事になるというのを
目の前に来た三人は白々しく駄菓子に興奮し
「おっ〇〇(駄菓子の名前、覚えてない)やーん!」
みたいな事を言って騒いでみせた
ほどなくして一人が、「それ何?宿題?」と俺の原稿用紙を見て言った
ボンちゃんはこの時すごく慌てふためいていたと思う
だがこの時の俺はどこかズレてた
自分の才能を披露してヤンキー達に尊敬され崇め奉られる未来しか見えていなかった
「小説です。文藝会新人賞に応募するものです」
俺は鼻高々と答えたと思う
ヤンキー達は一瞬キョトンとした
さぁ、ひれ伏せ!
夏休みのこんな時間まで小説を書いている趣溢れる俺に感服し、感動せよ!
くるしゅうない、ちこうよれ!
「何?ちんちんショー?」
ぶん殴ってやろうかこいつと思った
「小説です。文藝会新人賞に応募するものです」
確か同じ事を二回言った気がする
チェーン付けた野郎が「小説だってよ」と気取った態度で俺の言葉をまんまそいつに伝えた
つか何で標準語なんだこいつと思った記憶がある
「ふーん、ちょっと見ていい?」
待ちに待っていた言葉をそいつが発したので、俺は気を良くして「どうぞ」と答えた
確かこの時ボンちゃんは「あっいやっちょっと」みたいな事言ってた
俺の素晴らしい文章能力を見ればそんな生意気な態度は取れないだろう
信じて止まなかった
「えーある嫌味のように晴れ渡った朝のこと〜」
「ぇっ……!?」
まさか朗読されるとは思ってなかった
流石にちょっと恥ずかしいな……
大丈夫かなこいつ、俺の文章を読んで素晴らし過ぎて己の矮小さを恥じ自殺とかしないかな……
だが、当たり前の事だが、そんな期待はいとも容易く裏切られた
ろくに全部読みもせず、数枚だけ読んだ後奴らは急にゲラゲラ笑い始めた
「えーっなんこれキモッwwwwww」
「うわぁ……ドン引きだわ……www」
「嫌味のようにwww嫌味のようにwww」
当時の俺には予想外過ぎて思考がフリーズした
えっ何で?
どこがキモイの?どの辺りが?
確かに添削途中だけど基本的な物語は成り立ってる筈だよ?
混乱で今にも奇声をあげそうな俺の肩をポン、とヤンキーの一人が優しく叩いた
「何か知らんけどこれ応募するんやろ?……やめた方がいいよ……(笑)」
今にも笑いだしそうな顔でそう諭された
俺は混乱に怒りが加わって「は?は?うぇ?うぇ?」と結果奇声をあげた
見兼ねたボンちゃんが何かフォローの言葉を投げ掛けていたが何と言っていたかは覚えてない
なんせ俺はこの時「は?」と「うぇ?」しか喋れない猿になっていたから
その時、部屋の入口の方から聞き覚えのある声が聞こえた
「おースグルー、……と〇〇?(恐らくヤンキーの名前)」
振り返ったそこに立っていたのは向井だった
どうやら向井はこのヤンキーと友達らしく、俺は勝手に年上だと勘違いしていたがヤンキー達は俺と同学年らしい
「お、向井この子知っとん?この子小説書いとるらしいんよwww」
「うん、知っとうよ」
あれ?向井知ってたっけ?と一瞬思ったが、そう言えば夏休みに入る前に言った気がする
じゃあスポーツ遊びに誘うなよ
「あ知っとん?この子ちょっとアレやね…キモいねwww」
「は?」
向井は一瞬苛立っているように見えた
俺の為に怒ってるのか?それともただ単にキモイという単語が気に入らなかっただけなのか?
その時の俺は分からなかった
そんな向井の威圧も気にせずヤンキーはとんでもない事を言い出した
「あっそうや、これ俺が捨ててあげようか?」
「いや、え?いや、ダメです、やめて」
突然に突然が重なり過ぎて俺の思考は追いつかなかった
ただそれはやめて欲しいという事だけは感じた
ボンちゃんは流石にキレてた
普段あまり怒らないボンちゃんが必死に怒り顔をして「返して!」と言ってヤンキーに挑みかかろうとした
まあそれは他のヤンキー達に「まあまあ」と適当に押さえられてた
向井は「やめとけっちゃ……」と苦笑いしながらヤンキーのすぐ近くまで歩み寄ってた
肝心の俺はというと、意味不明すぎる展開にただ棒立ちだった
ヤンキーはそれをいい事に
「じゃあ、今からこの原稿を処分しまーすwwwwww」
と破る体勢に入った
ニヤニヤしながら俺の反応をうかがった
俺は流石にまずい!と思って「やめt」と取り返そうとしたが……
時すでに遅かった
俺が必死に、何日も掛けて書き進めた原稿は、突然現れたゴリゴリヤンキーの腕力によって一瞬にして
ビリビリという音とヤンキー達の笑い声と共に
破れ去った
と同時に、誰かの拳がヤンキーの顔面に物凄い勢いでめり込んだ
殴ったのは向井だった
あの時の顔は忘れられない
秒速30回は舌打ちしてそうな苛立ちの顔にとてつもない怒りを帯びていた
ヤンキーもまさか自分が殴られるとは思ってなかったんだろう
鳩が豆鉄砲を食らったような顔でほっぺた押さえて座り込んで向井を見てた
それに追い打ちとして向井は「ぶち殺すぞ」と言い放った
殴られてみんなポカン
あれ……?この光景どこかで……
俺はそんなクソどうでもいい事を思った
段々自分が何をされたのか理解したヤンキーは、「はぁああぁ!!!??」と馬鹿でかい雄叫びをあげて向井の胸ぐらを掴んだり原稿をさらにグシャグシャにしたり発狂してた
そのあと何やかんやゴタゴタがあったが、あまりに混沌とした中学生共の喧嘩なので割愛する
その喧嘩はヤンキーの声と騒ぎを聞いて駆けつけた市民センターのおばちゃんwithおじちゃんによって終息した
おばちゃん達の良心?によって各学校への連絡などは無しになった
俺の小説の件も話そうかと思ったが、ヤンキー達の酷評でショックを受けていた俺はそんな余裕も気力もなかった
ヤンキー達が先に帰らされ、おばちゃん達にはただの喧嘩として扱われ、この事件は終わった
そのあと市民センターが閉まるってんで俺達も帰らされる事になったが、ボンちゃんはギリギリまで俺の書いた原稿の欠片を必死に寄せ集めて俺に手渡してくれた
ボンちゃん確か泣いてた
何で泣いてたのか、今でも色々と考える
向井はその間ずっとブツブツ悪口を言いながら座ってた
俺は向井にお礼を言うべきだったのかもしれない
でも何故か言えなかった
何でだろうな
俺はヤンキー達からの小説の評価と、ヤンキーが帰り際最後に言い放った一言の事ばかり考えていた
「お前、マジで覚えとけよ。知らんけんな」
妙に引っかかっていた
俺の嫌な予感通りこの事件は、後の「あの事件」を起こす小さな引き金に過ぎなかったのだ……(流れるような次回への繋ぎ)
10数レスしかしてないけどやっぱ疲れるわ……
まあまったりゆっくり書くつもりだから今日はここまでで……
自分語りって意外と記憶探ったり文章にまとめたりで消耗するんだな
また時間あったら書きますわ
ありがとうございました
支援タスカル
中々時間空かなくて日にち飛び飛びですまんこ
今日の深夜例によって突如書き始める
来た
毎度毎度深夜だから書き残す形になるけど書いてく
話は前回の続きからだな
俺はこの日を境に小説の続きを書くのをやめた
俺の文章への自信というものが完全に消え失せてしまったからだ
ボンちゃんがかき集めてまで俺に渡してくれたクシャクシャの原稿用紙は、引き出しの奥の奥にしまったまま夏休みの間取り出す事はなかった
それでも捨てる事が出来なかったのは、まだ微かに未練があったからかもしれない
まあだからといって新人賞に応募する勇気はもうなかったけども
俺はボンちゃんとよく遊ぶようになった
金があまりないから近くの公園で駄弁ったり、いつも通り市民センターで喋ったり、ボンちゃんの自転車に2ケツして割と遠くに行って喋ったり……
まあとりあえず喋ってた
インドア派の俺の限界である
まるで俺は諦めた夢から目をそらすように、他の楽しいことに専念するようになった
ただこの時気掛かりだったのは、俺がよく遊ぶようになったと同時に、今まであれだけ誘ってくれた向井からの誘いがパタリとなくなってしまった事だ
俺はそれを気にする度にあの言葉を思い出していた
「お前、覚えとけよ。知らんけんな」
まさか向井の身に何か起こっているのかもしれない
夏休みも終盤に差し掛かった頃、俺は向井の家に向かう事にした
……( ゚∀ ゚)ハッ!
寝落ちしてたつつ続きを書く
向井の家に着いてチャイムを鳴らすとお母さんが出てきた
「すいません、向井君居ますか」
ボンちゃんが割と大きな声でそう聞くと、お母さんが返事をする前に奥の方の廊下から向井が出てきた
顔中絆創膏とアザまみれだったのを覚えてる
その時歩き方が変だったから多分顔以外にも何かしらあったんだろう
「帰れ」
単刀直入にそう言われた
俺の予感は的中していた
だからこそ、誰にやられたのか、いつどこでやられたのかは分からないが俺は
「帰らん」
と毅然として言うべきだと思ったし、そう言った
向井はため息をつくと何も言わずに奥に消えていった
「ごめんね、何か先週喧嘩して帰ってきてからよう分からんけど怒っとんよ。……おぉいアンタ!友達に帰れは無いやろ!……ごめんねぇ、悪いけど今日は多分あいつ出てこんけん、また近い内来ちゃらんかね?」
向井の代わりにお母さんは、こんなニュアンスの事を言って俺達を諭した
向井が喧嘩したのは先週だというのはハッキリ覚えてる
もっと早く来れば良かったと死ぬほど後悔したから
一旦退こうというボンちゃんの提案で、俺達はすぐ近くの公園で作戦会議をする事にした
まずは向井と直接話さないと何も始まらない
じゃあ向井をどう家から引きずり出すか、それが問題だ
ああでもないこうでもないとかなり悩んだ末、またもボンちゃんの提案により、俺達は手紙を書いて向井のお母さんに「本人へ直接渡してくれ」と頼むことにした
これなら向井のお母さんにも迷惑が掛からないし、こちらの気持ちを向井本人に使えることが出来る
早速ボンちゃんが家からノートとペンを持ってきて、俺達は手紙に思いをぶつけることにした
今現在、その手紙は俺が何やかんやあって持ってるので、ちょっとそのまま書く
「向井へ
出てこい。
俺がこのあいだ小説をビリビリに破られて、向井がヤンキーを殴ったけど、多分、それが原因だれかから暴力を振るわれたんやろ?
何で出てこんの?俺は1回直接会ってしっかりお礼と話を聞きたいし、ボンちゃんも心配しとる。
警察に言えば良いと思うし、ボンちゃんもそう思っとる。
とりあえず出て来ないと話にならないので出てきて下さい」
読み返すと謎に高圧的だし、この言い方だと俺がお礼を言われたいみたいになってるが、この手紙で俺の中学生の頃の語彙力を察してくれ
兎にも角にも、俺達はその手紙を向井のお母さんにに渡した
お母さんが嬉しそうな顔をしてたのを覚えてる
その次の日から、俺とボンちゃんは向井の家が目視出来る公園で遊ぶようになった
遊んでる途中に家から向井が出てくればそれを現場で拘束し、問いただす
言わば張り込みである
来る日も来る日もアメニモマケズカゼニモマケズ俺達はその公園で遊んだ
向井の家をチラチラと見ながら
そしてついに、もうすぐ始業式が来るくらいのギリギリの日に、俺達はついにその現場を押さえた
向井が俺達の気も知らずにポケットに手ぇ突っ込みながら外にブラブラと歩いていくのを目撃した
「ボンちゃんボンちゃん!あれ、向井やない?」
「あっ……あっホントや!行こ!」
向井の姿を確認するなり俺達は全速力で向井のもとに駆け出した
「おーい!向井くーん!!!」
ボンちゃんが走りながら大声で叫び掛けると、向井は一瞬だけこちらの顔を見てギョッとした後突然逃げ始めた
何故逃げる!
メタルスライムもビックリの逃げ足の速さで、向井の姿はどんどん遠くなっていく
流石サッカー部といったところだ
このままでは俺達の脚力では追いつけない
向井が角を曲がるのを見計らって、俺達はあわよくば先回りするつもりで別の方向へと走った
一度掴みかけたチャンスをこのまま易々と無駄にする事は出来ない
その一心で俺達は頭をフル回転させながら町中を動き回った
そしたら
「あっ」
いた
逃げ切ったと思っていたのか、歩きに変わっていた向井の姿をかなり近くで正面から捉えた
向井は急いでUターンしようとしたが時既にお寿司、俺達はやっとの思いで向井を拘束した
「何で逃げるんって!何があったん!誰にやられたん!?教えてくれんと分からんわ!」
今まで投げ掛けたかった質問が怒涛の勢いで口から溢れ出た
ボンちゃんに抱きつかれる形で身動きもままならなくなった向井は、それでもその問いに答えようとはしなかった
「ついてくんなちゃ!危ないやろ!」
……?
危ない?
何が…………?
俺とボンちゃんは意味不明な回答にアホ面で見合わせた
しばらく押問答を続けていると、奥の空き地から馬鹿でかい怒号が飛んできた
「おい!一人で来るっち言ったやろうがちゃ!くらすぞきさんコラァ!!」
OK,Google.
「おい!一人で来るっち言ったやろうがちゃ!くらすぞきさんコラァ!!」を日本語翻訳して♡
Googleさん
「おい!一人で来るって言ったでございましょ!ぶん殴ってやりますわよ貴様コラァ!!」
見るとそこには、高校生くらいのいかにもなヤンキーが鬼の形相で立っていた
俺達はますます混乱に陥った
………………
ここでちょっと解説する
後々分かった事ではあるがこの状況に陥るまでの経緯を今話しておこう
流れとしては
向井がヤンキーを殴る
↓
ヤンキーが自分のお兄ちゃんにそれをチクる
↓
お兄ちゃんが向井をボッコボコにする
↓
プライドの高い向井は警察にも親にもそれを言わず(親は察したみたいだが)、俺達を巻き込まないようにと暫く距離を置く事を決意
↓
腹の虫が治まらない向井はヤンキー兄に「タイマンはろうや☆」とコンタクトをとる。
↓
サシで勝負のはずなのに俺達も一緒に着いてきてヤンキー兄激おこプンプン丸←イマココ!
>>86 おぉっ!リアルタイムで見てくれてる人いるとは!
俺とボンちゃんはずっと混乱してたが、向井とヤンキー兄は既に戦闘モードに入っていた気がする
とりあえず俺が脳内コンピュータどだした結論は
「フタリ、キレテル。アブナイ。オレ、ムカイツレテ、ニゲル」
それだけだった
だから俺は引っ張って行こう!(?)と思って向井にしがみついた
ボンちゃんもつられて向井にしがみついた
だかその行動は向井の動きを封じ、ヤンキー兄の一方的な暴力に加担することになった
ヤンキー兄は躊躇なく向井の顔をぶん殴った
凄い勢いとガォンという音と共に、俺達は3人まとめて別方向に仰け反った
まるでコントである
向井が顎をガクガク言わせて絶句してたのを覚えてる
あぁ分かるぅ、それ痛いよね。わかるぅ〜
とJK並の感想を抱きつつ俺は向井に駆け寄ろうとした
だが向井はそんないたいけな俺を突き飛ばした
もうやる気満々らしい
向井はやたら大振りにヤンキー兄に殴り掛かったが、避けられて腹パンされたりしてた
本気の腹パン食らったことある人なら分かると思うけど、不良漫画みたいに何度殴られても殴り返すなんてのは素人、それもただの中学生には到底不可能だ
腹パンってマジで痛いんだぞ
たった一発で、それまで滾りまくっていた戦意がスっと消え失せる
そんくらい痛いんだマジで
そしてそんな腹パンを向井は食らったんだ
俺はキモイ奇声を上げながらブチ切れた
腹パンと顎パンはマジで痛い
それを知っていた俺だから、多分その場の誰よりもブチ切れてた
俺の為にヤンキーに拳を向けた向井の怒りより
そんなに関わりの無い友達を本気で心配してくれるボンちゃんの優しさより
ましてやただ殴る事だけが生き甲斐ですみたいなお遊び感覚のふざけたヤンキー兄より
俺が一番感情を昂らせていた自信がある
俺は無我夢中で泣き喚きながらヤンキー兄に掴みかかった
運良く俺はヤンキー兄の懐に潜り込めた
抱きつくような形で俺はヤンキー兄を押し倒した
何でガリガリの俺がこんなイカついヤンキーを押し倒せたのかは分からない
火事場の馬鹿力ってやつなのか、それともただ単にコケただけなのか、とにかく俺達はその場に倒れ込む形で崩れ落ちた
ヤンキー兄は余った両手で俺の背中を執拗に殴り続けた
背中は殴られると息が出来なくなる
だが体勢の関係でそこまで力は強くなかった
何より俺は痛みに耐性がある
俺はずっと泣きながらヤンキー兄の顔を掴んで言葉にならない声をあげていた
今にもごっつんこしそうな至近距離で、そいつの両眼を噛み付く勢いでのぞき込みながら
この時に向井とボンちゃんはどうしてたのか分からない
目の前の人間に対してしか意識がなかった
俺が最初に逃げようと思ったのは、俺じゃこいつには決して勝てないと思ったからだ
でも掴みかかった瞬間から考えは逆転した
こいつじゃ俺には勝てない、決して
ただ暴力をふるうだけの、獣とさして変わらないようなこいつじゃ、俺には何が起ころうとも絶対に勝てない
ずっと威嚇し続けた
この時俺は殴ろうと思えば殴れたのかもしれない
向井が俺と同じ状況なら絶対に殴っていた
でも俺は絶対に殴りたくなかった
俺の強さのか弱さなのか、殴るという発想はこの時全く持っていなかった
どれくらい時間が経ったか分からない
ヤンキー兄に馬乗りにっていた俺の膝元に何か温かい感覚が伝わってきた
見ると、そこには液体が流れていた
え?血?もしかして知らない内に俺は殴っていた?
それとも誰かがナイフで刺した?
だがそれにしてはあまり赤黒くない
いや、というより全然色がない
何だこれ
雨?いや、雨じゃない
雨は降っていない
俺はふとヤンキー兄の放心したような顔を見て、やっと気付いた
こ れ は お し っ こ だ
どうやらヤンキー兄が漏らしたものらしい
ヤンキー兄は怒りとも悲しみとも恥じらいともとれるような顔でこちらから目を逸らしていた
急に熱が冷めた
ずっと我慢してたのか、キチガイに絡まれビビってチビったのか、ヤンキー兄はナイアガラの滝のようなおしっこを辺り一面に広げていった
この瞬間から俺は怒りよりもまず先に「きったね」という感情でいっぱいだった
俺はよろよろと立ち上がって向井とボンちゃんに
「おしっこや」
と迫真の真顔で伝えた
二人はドン引きで「う、うん」と答えてたと思う
洗わなきゃ、拭かなきゃ
そう思った俺はとりあえずおしっこで濡れたズボンをどうにかしたいという旨を二人に話した
どちらも快く了承してくれて、その場を後にしようという事になった
俺が立ち上がってからその場を後にするまで、ヤンキー兄はずっと動かなかった
高校生にもなっておしっこをしてしまう恥ずかしさから悟りをひらいてしまったのかもしれない
俺達は近所の牛丼屋に入り、俺がトイレでズボンを拭きまくった
トイレから帰ると向井の奢りで牛丼を食った記憶がある
最初の内は三人とも映画を見終わったような気分で放心していたが、牛丼を食っているうちに段々現実に引き戻された感があって少しずつさっきの事件の話を振り返り始めた
この時からだろう
ボンちゃんと俺
俺と向井
みたいな一本線の関係じゃなく
ボンちゃんと、俺と、向井
そんな輪っかみたいな関係になったのは
「三人」として友達になった初めての日だったのだと思う
それから数日間、ヤンキー兄からの報復にビクビクしていた俺達だったが、何故かそれ以来まるで何もなかったかのように平穏が続いた
あちらの事情で何があったのかは分からないが、とりあえず俺は「おしっこをしたのがよっぽど恥ずかしかったから」だと思うようにしてる
この一連の事件をきっかけに俺がある「決意」をしたのはまたあとのお話……
俺達は残りの短い夏休みを3人で遊びながら過ごすのでした
でめたしでめたし
とまぁこれが中二の夏休みの出来事
これまでの出来事は暴力が絡んでくる事が多かったが、これより後の出来事はちょっと方向性が変わってくる
まあ今日は疲れたのでまた例によって時間ある時に続きを……
次回!王に俺はなる!
といったところでさようなら
また近い内来ます
キタ
カク
まとめサイトの管理人さん居りましたらまだ終わってないのでよろしくお願いしますナンツッテ
根気勝負になります
さてさて、夏休みも無事終わり二学期に突入した頃、俺はある決意をした
というのも今回の騒動、元はと言えばヤンキーに原稿用紙を破られたのがそもそもの原因であり、もっと言えばヤンキーにそんなふうに絡まれてしまう俺の性格に原因があるという事になる
毎度毎度誰かがヒーローのように助けてくれるとは限らないし、助けてくれたとしても俺がこのままであり続ける限り何度でもこんな事件は起きる
原因を断ち切るには、俺がしっかりしないといけないのだ
そんなふうに考えた俺は、誰からもナメられないような人間になる事を決めたのだ
……とは言え性格なんてのはそう簡単に変えられるものではない
考えた末に俺が出した結論は、性格ではなく肩書きで周囲を圧倒し萎縮させてやろうと思った
要するに俺は
生徒会長になろうとした
どこも同じなのかは知らないが、うちの中学は秋頃に選挙活動を初め、大体初冬に選挙があり三学期から生徒会就任って流れだった……気がする
あんまり細かな時期は覚えてない
2年生だった俺はタイミング的にも生徒会長を狙いやすい時期だとお思いだろうか
だが、現実は全く違う
そもそも生徒会なんてのは一年生の冬にまず何らかの役職(書記委員とか副会長とか)に立候補し、二年生でそれに就任
そして二年の冬、エスカレーター式にその役職の1ランク上(風紀委員とか会長)に立候補し、当選
この流れが普通である
生徒会長は前の代で副会長を務めた者が成り上がるのが普通であり、実際わざわざその流れに割って入ろうなどと思う者は居ない
俺はもちろん生徒会に入っていなかったので、入るとしたら唯一各学年で一人づつ就任可能な副会長あたりが妥当である
というか実質ここしか割り込みで入れる空き枠がない
だがしかし、それでは駄目なのだ
どうせなるならトップオブトップ、生徒会長じゃなきゃやだやだやだ
俺はある日のホームルームで生徒会長に立候補した
もちろん周りからは散々罵声を浴びた
「は?お前何いいよん?」
「調子乗んなやお前」
周りの生徒からの非難の雨など俺には十分予想出来ていた事だ
だが、意外な事に肯定したり面白がる声もあった
単に物珍しさでちょっと乗っかってやろうという気持ちもあったのかもしれないが、当時の俺は「イジメられっ子」というより「いじられっ子」と言った方が妥当なポジションだった
なので全員から絶対的に嫌われている訳じゃなく、ちょっと頭のおかしい変な子だと思っている層もチラホラいた
賛成派も多かったのは好都合だ
選挙は校内生徒の清き一票によって勝敗が決まる
全くのアウェーから開始ではなかったことに安堵した
しかしその罵声の嵐の中、引っかかる言葉もあった
「後藤に悪いと思わんのかちゃ」
後藤と言うのは昨年副会長を務め、所属するバスケ部でも県大会に出場するなどの好成績をおさめたスポーツマン優等生
勉強面は並よりちょっと上くらいだが、特に人格者という訳でもないがこれといって性格に難がある訳でもない為、無難に信頼を得ている人物だ
確かに割って入るのは悪いと思う
だが規則に「いきなり生徒会長になってはならない」などといったものは無い
少し心が痛んだが、俺にとってはわずかな犠牲だと自分に言い聞かせた
立候補の手続きを済ませるため俺は、助っ人を探した
というのもウチは、立候補するために選挙活動をサポートする相棒みたいなのが一人要るのだ
正式な名前があった気がするけど思い出せないので助っ人と書く
当初俺はボンちゃんか向井に頼むつもりだった
と言っても向井は恐らく断るだろう
奴は表に立って目立つというのを嫌うタイプだ
ましてや俺みたいないじられっ子のサポートをしてます!というのを全校生徒に公表するのは嫌うだろう
優しい奴だが世間体みたいなのは気にするのだ
だから俺はノータイムでOKしてくれそうなボンちゃんの元に行った
しかしその途中、予想もしない人物から声を掛けられる事になった
「スグル生徒会長になるんやろ?俺が助っ人しちゃろうか?」
声を掛けたのは中本という奴
ライバルの後藤と同じバスケ部で、ちょっと頭のおかしい奴だった
いや、もう後藤と同じ部活なのに俺にそんな提案してくる時点で頭がおかしいのは分かると思うが
こいつは面白い事に積極的に関わってくるタイプだ
おそらく興味本位での提案だったんだろう
俺は少し考えたが、これは願ってもないチャンスだと思いお願いする事にした
もし中本が助っ人になれば、バスケ部内が後藤派と俺派に別れるかもしれない
向こうのホームを侵食できれば勝利に大きく近付く
手続きをした翌日から、俺立候補の噂は同学年に瞬く間に広がって行った
俺といういじられキャラがまさかの生徒会長!?
廊下を歩く度に俺は様々な反応を投げられた
嘲笑う者、興味津々に話し掛けて来る者、敵意を向ける者、応援してくれる者……
俺は自分の知名度に驚いた
いや、流石に二年も学校にいたら同学年なら誰もが知ってはいるだろうが、いじられキャラって見方を変えれば愛されキャラでもあるんだなと思った
体感ではけっこう肯定的な反応が多かったような気がしないでもない
気を良くした俺は、早速その日の放課後から選挙活動に励む事にした
まず取り掛かるべきは『自分のポスター作り』だ
俺は中本と何故かついてきたボンちゃんの3人で、美術室に向かっていった
例年、この学校の生徒会立候補者は自分のポスターを美術部に依頼する
手作りでやる人も居るには居たらしいが、少しでもクオリティを高くして見栄えを良くする為には、そっちの方が無難だ
美術部は女子生徒のみで構成されていて、立候補者はその女子達に媚びへつらいながら何とかポスター作りをしてもらおうと懇願するのだ
ところで、俺はドキドキしていた
選挙活動を実際に始めたからではない
美術部の中には俺が当時気になっていた女の子「尾上」さんがいたからだ
尾上さんにポスター作りを依頼して、あわよくばそれがきっかけで仲良くなってそれで最終的に……ムフフ
と実現しないであろう妄想に浸りながら俺達は美術室に到着した
「ごめんくださーい……」
ゆっくりと扉を開けると、そこはまさに女子の秘密の花園、当時の俺には楽園とも言うべき光景が広がっていた
「あっスグルやーん!ポスター?」
クラスメイトの名前も覚えてない女子が、俺を見るなり好奇心100%といった顔で近付いてきた
「あぁ、うん」
そうだけど貴様に用はない、失せるがいい
俺はその子の顔を一瞥すると、部屋の中をキョロキョロと見渡した
尾上さん尾上さん尾上さん……
いた!
尾上さんはどうやら後輩に、「あれが噂の痛い子よプププ」みたいな感じでこちらを嘲笑しながら話していた
だが俺にはMの気質があるので、興奮しながら尾上さんにズカズカと近寄った
若干引きながらこちらを見上げる尾上さんに俺は言った
「ポスター、作ってくr」
「ごめん今他の人の作りよるけん他当たって」
若干食い気味に断られたのを今でも覚えている
相当ショックだった
何がショックだったってよく見たら尾上さんが作っていたのは
後藤のポスターだった
後藤許すまじ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
思い出したら何かすごい腹立ってきた
何でよりによって後藤なのか
俺はこの瞬間、生徒会長になる目的が
「ナメられないようになるため」から
「後藤を完膚なきまでに叩きのめして靴舐めさせながらヒィヒィ言わせて謝らせ尾上さんに振り返って貰う事」にすり替わった
今振り返ればとんでもない逆恨み
逆ギレもいいとこである
結局俺は、最初に好奇心で近寄ってきてくれた名前の分からない女子にポスターを頼む事にした
どんな構図が良いか、謳い文句は何にするか、色々注文している間も俺は上の空だったと思う
帰る途中、ボンちゃんになんか言われて慰められた気がする
中本は終始ヘラヘラ笑ってた
とりあえずポスター作りはこれで問題ない
次に取り掛かるべきは、『生徒への根回し』だ
俺はこの頃からコミュ障を発症しつつあったので、知らない人にいきなり投票をお願いするのは気が引けていた
ボンちゃんは人当たりがよく割と人間関係も広いため、この活動の大部分をボンちゃんにお願いした
しかし俺もただ単に恥ずかしさで自分から投票を募らなかった訳では無い
こういうのは自分で言うよりも、周囲の人間が宣伝する事によって「信頼のある人間なんだ」とみんなを錯覚させられるだろうと、俺なりに考えた結果でもある
ある日の昼休みに廊下を歩いていると、一年生の見知らぬ団体から声を掛けられた
「スグル君っすよね!?俺ら投票するんで頑張って下さい!」
君達は誰だねとキョドりながら問うたところ、サッカー部の部員らしい
どうやら向井はひっそりと陰でサッカー部内で宣伝してくれていたらしい
良い奴やんけほんまお前
自分の直接の後輩なら宣伝しやすかったんだろう
だがこれは相当な効力がある
なぜかというと、現生徒会で部活に入っている生徒の中に「サッカー部」に所属している人間は一人もいない
そして学生というのは往々にして
「野球部」「サッカー部」「バスケ部」に謎の信頼がある
その三大イケてる部活の一つを完全に掌握したと言っても過言ではない
誰の息のかかっていない部活を一つ勝ち取れた事を知った瞬間だった
この時、俺は一つのアイデアが浮かんだ
そうだ
全部活の部長に投票を頼んで回った方が、虱潰しに行くよりよっぽど効率的ではなかろうか?
思い立ったが吉日、俺は一日ずつ色んな部活に顔を出してまわることにした
以下、おぼろげな記憶による選挙活動奮闘記である
No.1「ボランティア部」
まず初めに手を付けたいと思ったのがこの部活だ
理由は2つある
地味でありながらも十数人とそこそこの部員がいる事
コミュ障の俺でもなんか話しかけやすそうな雰囲気だという事
俺は放課後、職員室前の廊下でジョウロに水を入れている同クラスの遠藤くんに声を掛けた
「えーんどーうくーん」
「………………えっ何?俺?おースグル君やん、どうしたん?」
「俺今ちょっと選挙活動して回りよんやけど」
「……あーね、なる。いいよ、俺入れるよ、どっちでも良いし」
「えっホントに!?」
察しが良すぎる遠藤くんは何も言ってないのに了承してくれた
どっちでも良いというのが引っかかったが入れてくれるのなら有難い
俺は調子に乗って駄目押しした
「ありがとう!……でさ、部活の人にも言って欲しいんよね」
「あー、うん、OKOK言っとく言っとく」
どこかで聞いた事がある
人が同じ言葉を2回繰り返した時は嘘をついている可能性が高いと
だがまあOKしてくれてるのだから疑ってもしょうがない
俺はひとまずの収穫に満足し、次の部活を考えた
No.2「囲碁将棋部」
誰も足を踏み入れないような別棟の一階奥、そこにひっそりと活動を続けるのがこの部活だ
ここを選んだ理由は上記のボランティア部と全く同じである
だが、ボランティア部の場合は誰か一人になった隙を見て話し掛けられるがここはそうはいかない
皆一つの部屋にまとまって、静寂の中黙々と碁石や駒をパチンパチンいわせているのだ
俺は部室の前に立つとパチンパチン音がある程度無くなり、談笑が聞こえ始めたタイミングでそろりと戸を開けた
「失礼しまーす……」
「?」
「?」
「?」
みんなの視線が一斉にこちらに集中した
全員が一様に「誰だこいつ?」といった顔でただ俺の顔を見つめた
しかも誰も口を開かない、俺の次の挙動を待つのみである
こんちくしょう!コミュ障らめ!なんか言えや!
とコミュ障の俺は思った
「えっと、今年生徒会長に立候補するスグルと申します。選挙活動に参りました……」
言い切ってから結構な時間が経った気がする
それとも俺がそう感じただけなのか
奥に座る部長らしき男子生徒の笑い声でこの沈黙は絶たれた
「はっはっはっはっはっ」
清々しい、嫌味のない笑い声だった
「いやスグル君ね。知ってるよ、突然生徒会長になろうとしてる子がいるって話は聞いてた。おいでおいで」
俺は言われるがまま、そろそろと奥に歩いていった
この時も周りはみんな俺に注目していた
「はい……」
「よし、じゃあ将棋しよう。ルールは知ってる?」
「は?」
突然の提案だった
この時はマジでびびり過ぎて、素で「は?」って言ったのを覚えている
だが俺は将棋のルールを知っていた
そしてそれを反射的に「知ってます」と答えてしまった
「よし、じゃあ今から君と僕が将棋をして、それで僕が投票するかしないか決めよう」
この部長の仰々しい、芝居がかった物言いは脚色ではない
マジでこんな喋り方だった
何かの漫画に影響されたのかは知らないが、だけどもとてもこの喋りが似合う雰囲気だった
俺はその世界観に押されて、何故か「分かりました……」と答えてしまった
ルールは知ってるが、ルールを知っているだけの俺が勝てるはずないのにも関わらず
俺は「角の斜め上の歩を上げて、攻める」
それだけ考えて打ち始めた
自分の具体的な打ち方はよく覚えてないが、この時の部長は今思えば「早石田」っていう戦法を使ってた気がする
将棋を知らない人に説明すると、早石田は奇襲戦法というものに近い
ボクシングだっつってんのにいきなりスネを蹴られるあの感じ、というと棋士の人に怒られるかもしれないが、感覚としては本当にそれに近い
結果、対処をミスった俺の飛車側はみるみるうちに崩れていき、一瞬でガタガタの陣地になった
もうこの時点で中学生の俺にはほぼ負けだったが、何としてでも勝ちたいという一心で必死に食らいついた
相手が隙を見せた所で、守りも捨ててひたすら攻める
それを繰り返した
繰り返した結果、負けた
俺は悔しくて、今にも泣きそうになった
部長はさぞ満足そうに
「ありがとうございました」と言い放った
俺も「あでぃがどぅごだいまじだ」と半泣きで答えた
だが、次の部長の発言で俺は良い意味で予想を裏切られた
「よし、僕は君に投票するよ」
キョトンとした
え?負けたのに?
「君の打ち方は面白かった。指していてとても楽しかったよ。それに僕は『負けたら投票する』なんて一言も言っていない。『将棋をして、投票するかしないかを決める』と言ったんだ」
そんなふうな事をドヤ顔で口走りやがった
多分このセリフは漫画かなんかの受け売りだろう
流石に中学生の言い回しではない
でも当時の俺は不覚にも「やだ……カッコイイ」と思ってしまった
囲碁将棋部入ったろかなとさえ思っていた
それくらいかっこよかった
俺は何度もお礼を言ったあと、その部室を去った
部長のファンになりつつあった俺は気を取り直して、明日はどの部に行くかを考えたのだった
No.3「吹奏楽部」
前回の一件で段々選挙活動が楽しくなってきた俺は、いよいよ文化部の花形、吹奏楽部に突撃訪問する事にした
ちなみにうちの学校は吹奏楽とは名ばかりで、やる楽器はリコーダー、木管、金管くらいだった気がする
まあそれはそれとして、音楽室へ向かう途中に俺はボンちゃんと鉢合わせた
選挙活動をしていると伝えると、ボンちゃんはノリノリで付いてきた
到着すると丁度休憩タイムだったのかいつもこうなのか知らんが、生徒達で談笑しているところだった
「失礼しまーす!選挙活動しに参りました!」
俺がものを言う前にボンちゃんが大声でそれに割って入った
生徒は談笑をやめ、こちらを見るなり目をキラキラさせながら笑顔に変わった
あれ?もしかして俺って人気者?
「ボンちゃーーーーん!!!!!」
そっちか
同学年の女子生徒と、後輩の女子男子混合、皆がボンちゃんの元に走り寄った
どうやらボンちゃんこの後輩の子達と仲良くしてるらしい
みんなすごく優しそうな子だった
抱きついて来たりして、たまに遊びに来る叔父と姪っ子みたいだなと思った記憶がある
「遊びに来たよー」
まあ遊びに来たわけではないんですけどね
ここでは暫くボンちゃんと一緒にくっちゃべっていた
結果的に俺は自分で宣伝する間もなく、ボンちゃんの信頼力によって清き一票を勝ち取れる事となった
やっぱボンちゃんってすげぇや
最初の3つの順番は覚えてるけど後の順番忘れちまった
という事で次回から順不同で書いてく
覚えてないのもあるから
文化部一番の問題児「パソコン部」
宿命の運動部「柔道部」
鬼顧問の鬼門「野球部」
の3つを書いてく
では、後編へー続く
といったところで今日は終わりやす
見てくれた人ありがとうございました
また来る
あっ誤字あったわ
>>104でワンランク上の役職に風紀委員とあるが、これは「書記委員長」の間違いだ
要するに「委員」から「委員長」に成り上がるって事が言いたかった
以上
きたーーー!
たぶん起きてられないから明日みるよ!
楽しみにしてます!!
ありがでぇ……あぁありがてぇ……
じゃあ書き始める
ちょっと記憶を辿ってまとめてた
では行く
No.4「パソコン部」
パソコン部と名前だけ聞くと、眼鏡かけたガリ勉の陰の者達がカタカタキーボードのタイピング練習をしている光景を思い浮かべるかもしれない
確かにそういう人間も部員には存在する
だがしかし、うちの中学のパソコン部はかなり異質なもので、ヤンキーと陰キャと陽の者が混在するカオスな部活なのである
これにはパソコン部の活動内容が関係している
大体ここは顧問の先生がホワイトボードに
「今日の活動:タイピング」
などと殴り書いて生徒諸君に活動を丸投げし、「何かあったら呼んでね」とほざいた後自分は職員室に帰って職務放棄してしまうのが問題なのだ
これのせいで、パソコン部員達の殆どはセーフティの掛かっていないサイトを巡回したり、こっそり持ってきたゲーム機などで遊んだりしてしまうのが代々受け継がれる伝統になってしまっている
そして俺はそんな混沌とした部室に、投票を頼みに行こうとしていたのだ
緊張で歯をガチガチ言わせながら、俺はパソコン部の扉を開いた
「うぉっ……!!……びびらせんなや!先生かと思ったやねぇかちゃ!」
開くなりヤンキーの罵声が飛んできた
俺はひとまず謝罪して、陽の者とヤンキーが騒ぎ立てる中、本題に入った
本当は静かになってから言いたい気持ちもあったが、この方々はどんな状況でも決して黙らないと悟っていた為やむを得なかった
「生徒会選挙の活動に来ました。投票をお願いします」
「えーじゃあ何か一発ギャグやってー」
……
…………こうなる事は分かっていた
だからここに来るのを躊躇っていたんだ
陽の者とは言っても中学生、まだ何でもかんでも無茶振りすれば面白いと思っているクソめんどくさい時期だ
俺もいじめられっ子からいじられっ子に昇格してからは何度もこんな場面にあった
だがこうなる事が分かっていたということは、こちらに準備があるということだ
ここで簡単に引き下がると思うなよ陽キャ共
数々の羞恥プレイを受けてきた俺は「えっそんな、ちょっ、恥ずかしい/////」などとイモを引くようなヤワなメンタルはしていない
俺は渾身の一発ギャグ(氷川きよしのモノマネ)を披露した
「は?おもんな」
ヤンキーは間髪入れずに反応した
まあそうだろうそう言うだろうよ
例え面白かったとしても、俺みたいな奴には口が裂けても面白いなどいった発言はしないだろう
ヤンキーの反応などどうでもいい
問題は陽キャの反応だ
「おもんな」
おもんなかったらしい
おもんなかったならしょうがない
ここはひとまず一度撤退……
すると思うなよ陽キャ共
数々の羞恥プレイを受けてきた俺は「えっそんな、ごめん、おもんなかった……?」などとイモを引くようなヤワなメンタルはしていない
「えー続きまして……」
ギャグをひとつしか用意してなかった俺は、その場でハイスピードでギャグを考えては一瞬の隙も与えず何発も芸を披露した
色々やったが唯一覚えているのは「卓球の試合をしている途中でいきなり旅館の女将になる」というものだ
めちゃめちゃ面白いので皆にも見てもらいたいくらいだ
結果的に大爆笑、とまではいかないが段々と会場も盛り上がって参りました
その後、後輩も見ているなか油性のマジックで身体に落書きされたり、ヤンキーにスネを蹴られたりした記憶があるが、大体の人間が俺に投票する事を約束してくれた
一番収穫があったと感じたのは、ヤンキーにも最終的に好感触で終われた事だ
ちなみにこのヤンキーは一個学年が上だったのだが、この成果が後で重要な役割を果たすことになる
まあつまり小さな代償も払ったが結果は上々だった、という事だ
No.5「柔道部」
前回話したが、生徒会は基本的に役職がエスカレーター式で上がっていく
今年保健委員だった者は今回の選挙で保健委員長になるのだ
つまり、俺が敵と見なすべきは何も後藤だけではない
今年一年間を後藤と一緒に過ごした、俺と同学年の4名の委員
「風紀委員」
「書記委員」
「生活委員」
「保健委員」
も同時に、俺に生徒会長になって欲しくないという絶対的な「後藤側」の人間なのだ
そして今回赴く柔道部は、その内の「書記委員」と「風紀委員」が所属している
自ら敵地に推参するのは途方もない勇気が必要だっただろう
当時の俺を褒めてやりたい
褒めてぺろぺろしてやりたい
武道場の玄関を入ってすぐ、そこに柔道部の活動場所がある
俺はそーっとそこを入り、顧問の小太りで強面のプーさんみたいな先生に軽く会釈をしてから休憩時間を待った
プーさんは怪訝そうな顔で会釈し返してくれた気がする
俺の存在に途中から気付いていたのか、休憩に入るなりすぐに風紀委員の奴が俺に近付いてきて言った
「なんか(半ギレ)」
やだ初っ端からすごい喧嘩腰
だがここで怖気付いてはいけない
努めて冷静で紳士的に俺は返事をした
「選挙活動に来たんやけど?(半ギレ)」
言った後、俺はプーさんに許可を取ってから柔道部の全員に俺の生徒会長への意気込みを語った
全員微妙な空気で聞いていた
それも仕方ない、何しろ一年生にとっては先輩の意見は絶対
その先輩が二人も後藤側なのだから、俺の話を聞くこと事態がいたたまれない気持ちだっただろう
しかし俺はもちろん、ハナから同学年に向けて喋ってなどいない
俺はその運動部の上下関係に辟易しているであろう後輩達に向けて語っていたのだ
同学年の生徒には何をどう言おうともこちらに寝返るのは無理だと俺は思った
だから少しでも票数をバラつかせる為に、ちょっとした内乱でも起こしてやろうという気持ちでこの部に赴いたのだ
「俺は選挙は公平であるべきだと思っています。
誰かに言われたからこうする、先輩があちらだから自分もあちら……それは間違っていると思います。
確かに年上の意見を尊重し、命令通りに行動するのは組織としては正しいかも知れません。
楽かも知れません。
でも、それはあくまで組織としての正しさであって、何もかもにそれが適用される訳では無いです。
こと選挙においては、一人一人がどう思ったか、自分がどっちに投票したいのか、それだけが大事です。
どうか皆さんは、他の誰かに振り回されることなく、自分自身で判断して下さい。
その結果俺が負けるのならそれは構いません。
俺は正々堂々と勝負がしたいです。以上です。
ありがとうございました。」
一語一句違わずこう言った訳では無いが、内容としては概ねこんな感じの内容でスピーチした
コソコソと各部活に根回ししている俺が正々堂々とは大ホラ吹きもいいとこである
俺はその同学年への敵意むき出しのスピーチをドヤ顔で終えたあと、その場を去ったのだった
No.6「野球部」
俺が、一番重要であり何が何でもここだけは行かねばと思っていた部活
それがこの野球部だ
理由は一つだけ
この部活には現生徒会長が所属している、それだけだ
最近生徒会長になる事を一念発起した俺には、現生徒会長がどんな人なのかも全く知らなかった
故に俺はここに来る前に出来るだけ現生徒会長の性格なり行動なりを色んな人から情報収集していた
その結果、彼について分かったことは
・真面目で寡黙な人間
・勉強の成績は並かそれより少し上
・自ら何かを起こす事はあまりないが、問題事には積極的に関与し平和的解決を図る
・めっちゃスポーツマン
以上だ
俺はこの三点目に注目した
会長という立場もあり平和的解決を至上とする彼ならば、俺がいきなり部活に突撃訪問してもあからさまに敵意を向けることはないだろう
それどころか快く迎え入れてくれるかもしれない
俺はそこそこの時間をかけてそう思うに至った末、ついにこの野球部へ自らを売り込む決意を固めた
放課後、部活動がある生徒以外はとっくに下校した時間帯を見計らって俺はグラウンドへ向かった
何やら大声で顧問の先生が生徒に指示をしている
遠くからでも分かる馬鹿でかい声だ
多分240デシベルはある
俺はその指導が切れるタイミングでこっそり後ろから話し掛けた
「あのー……」
「んっ!?何?!!!!!どうした!!!!!?」
めっちゃ近いのにクソでかい声
こういうタイプに弱い俺は、中学生なりにかなり言葉を選んで丁寧かつ失礼のないように自己紹介と目的を伝えた
「今年の生徒会選挙で生徒会長に立候補したスグルという者です。選挙活動に参りました。
もし宜しければお時間頂いてもいいですか」
「あぁ!!!!!!!なるほど!!!!!ちょっと待ってね!!!!!!!!!!はい!!!!!一旦練習やめ!!!!!!!!!!集合!!!!!!!!!!!!!!!早くしろ!!!!!」
うわぁ……なんかとんでもない大事が起きたみたいな集合のかけ方だ
ハードルが上がるぞ……
部員の皆さんは全速力でこちらに走ってくれてるにも関わらず、顧問はひたすら
「早く走れ!!!!!!!!!!」とか
「遅い!!!!!!!!!!」とか言ってた
野球部って怖い
俺はこの時点で心臓バクバクだった
俺みたいな陰キャが今からこの統制された軍隊組織に向かって覚束無いスピーチをするのだと思うと、逃げ出したい気持ちでいっぱいだった
まもなくして集合した泥だらけの部員達は、顧問の「整列!!!!!!!!!!」の合図で手を後ろに組んで俺にめっちゃガンを飛ばしながら一列に並んだ
マジで怖い
「えー彼は今年の生徒会選挙で生徒会長に立候補した……えー……名前は!?」
「ひゃいっ、スグルですっ」
「スグル君だ!!!!!」
「ひゃいっ」
「彼が今からお前らに宣伝するそうなので、皆心して聞kおいこら!!!!!モジモジするな!!!!!!!!!!」
「ひゃぃ……ぁ……」
「じゃあいいよ、どうぞ!!!!!!」
スピーチをするなんて一言も言ってないんだが?
そう思った俺だったが、この空気でそれは言い出せない
何とか俺は即興で、自分のマニフェストやら意気込みやらを捻り出しながら喋った
喋っている時に「あ、この人が生徒会長だな」と目星がついたので途中からその人だけ見て喋った気がする
話し終えた俺は「あっもう、はい、終わりです、以上です」と小声で顧問に言った
顧問が俺の顔も見ずに「拍手!!!!!」と言うと皆無機質な拍手を俺に送ってくれた
スペツナズかこいつら
俺がその場を後にしようした時、顧問はテンションがアゲアゲになってきたのかこんな事を言い出した
「じゃあ、現生徒会長!!!!!!!!!!これに対して何か返事してやれ!!!!!」
無茶振りやんけぇ!
マジでビックリした
そんな願ってもないサプライズ、俺にとっては嬉しいが生徒会長はただ困るだけだろ……
だが現生徒会長は顔色一つ変えずに「はい」とよく通る声で返事すると、前に一歩出て話し始めた
流石に生徒会長になっただけの事はある
突然の事態への対応も優秀だ
「えー……スグル君。
一人で来て立派なスピーチを聞かせてくれてありがとう。感動しました。
その行動力は素晴らしいものだと思います。
頑張って下さい。応援しています。
おわr以上です」
全然感動してる感じはしなかったが感情が表に出ないタイプなんだろうか
とはいえ現生徒会長から「応援している」と言って貰えたのは有難かった
この一言で生徒会長が若干こちらに傾いていると周囲に印象づけられたかもしれない
俺は「ひゃいっ、ありがとうございました……!」と言うと顧問の先生に深々と頭を下げて、未だ後ろ手を組んで突っ立っている部員達をチラチラ見ながらその場を後にした
以上が俺の部活への根回し奮闘記だ
ほんと疲れた
ところで、これをしている間に実は美術部から連絡があった
どうやら例のポスターが完成したらしい
俺はウッキウキでボンちゃんと中本と一緒に美術室へ向かった
ボンちゃんも「楽しみやねぇ!」とまるで自分の事のように喜んでいたのを覚えている
中本はニヤニヤしてた
「おっスグルクーン!待っとったよこっちこっち!」
部屋に入ると例の名前も覚えてない女子生徒に手招きされ、尾上さんの綺麗な横顔をチラチラ見ながら俺は完成品のポスターを見せてもらった
確か俺は超絶美化された自画像と一緒に
「皆さんの清き一票を」みたいなクソテンプレなキャッチコピーを添えてくれと注文したはずだ
さてさて、どうなってるかなぁ……^^
「皆きんの清さ一票を」
^^
^^;
盛大な誤字に挟まれ笑顔で佇む俺の自画像は、某クズの人かなと思うくらい顎が尖っていて、両目もなんか左右非対称で出来の悪い福笑いみたいになっていた
なぁにこれは
顔は百歩譲ってまあ良いとして、誤字は書いている途中に気づかなかったのだろうか
何だよ「清さ一票」って
「おらぁ清さ一票だ欲しいんだァ」みたいな田舎者の話し言葉みたいになってるよ
「皆きん」って誰だよニックネームかよ
しかもこの女子、俺がこのポスターを見て指摘するまで誤字に気づかなかったらしい
俺はこれをどうしても修正して欲しかった
だが、既にライバルの後藤が校内中にポスターを貼っている事と、中本の「面白いしこれでいいやん」という助っ人とはとても思えない発言によって意見が言いづらい雰囲気になった為、泣く泣くこのまま採用という形になってしまった
しかし、これは予想外に大きな反響を呼んだ
中学生はとにかく「意外性」に食いつく
俺はそれを考慮していなかった
ライバルの後藤が張り出した無難で真面目なポスターは、誰もが目には留めるがそのまま素通りしてしまう
対して俺のインパクト抜群のポスターは、目に留めたあと素通りしようとして二度見する生徒が多かったらしい
どうやらみんな面白ければ何でも良いらしい
その影響力は絶大で、ポスターを張り出した翌日から廊下を歩くたびに
「あれっ、写真と顔違いますねwww」
「おい顎どうしたん?整形?」
「皆きんから投票されるといいね」
など、まあ大半は煽りだが何かしら言ってくるようになった
今までチラチラ見るだけで何も言ってこなかった生徒も話し掛けてくれた
このあまりにも悲しい好影響に、例の名前も覚えてない女子生徒は鼻高々に俺に絡んでくるようになったが俺はお前を許さねぇからな
マジで
今でも許してねえからな俺そんな顎とがってねえからな覚えとけよほんと
という訳で、いよいよ俺は中学生というものの本質を見出した
中学生は面白けりゃ何でもいい
どうせそうなんだろ?俺の真面目な話なんか誰も聞いてないんだろ?
半ば諦め気味に俺は悟りを開いた
来るべき選挙当日のスピーチに備えて作る自分用のタスキも、普通は綺麗な字を大きくプリントして作るのだが、俺は
「どうせこういうのがお好きなんでしょ?」
とばかりに大きな紙に習字用の筆でグチャグチャと自分の名前を書き殴って作った
結果それも高評価だった
もうどうでもいいや
例年、冬休みも間近に迫った頃に挨拶運動というのが選挙立候補者で行われる
毎朝早くから校門に立ち「おはようございます!よろしくお願いします!」などと言って自分を売り込む貴重なアピールイベントだ
ポスターの件から何となく吹っ切れた俺は、自前のタスキを堂々と掛けながら
「おはようございます!生徒会長になるスグルです!」と、もう生徒会長になる前提で挨拶していた
その上、強く出やすい年下の生徒には必ず握手を求め、応じてくれたら「応援ありがとう!!」と馬鹿でかい声で言ったりしてた
周りの目なんか気にしていなかった
完全に当時の俺はラリっていた
そうこうしている内に、ついに選挙当日がやってきた
うおおぉぉぉぉいい所だぜぇぇぇ次回が楽しみだぜぇぇぇ
という事で今日はここら辺で……
今回の生徒会選挙編すごい長ったらしいけど次で終わりなので安心して下さい
まさかこんな長くなるとは思わなかった
毎度ながらまた時間が空いた時にまったり書きますわい
いつ終わるのこれ……
めちゃくちゃ時間空いたけど失踪はしてないからな……!
絶対書き上げるからな……!……ゆっくり!!
今夜来ます
時は平成うんぬん年、冬
悴む両手に息を吐きかけながら、全校生徒は体育館に集合していた
小さな舌打ちや貧乏ゆすりがそこかしこで見られる中、生徒会選挙の準備は着々と進められていた
大半にとってはおそらくどうでもいい行事だろう
いいからチャチャッとスピーチしてパパっと終わってくれ
そう思っていたに違いない
しかし、俺にとってこの日は一世一代の大決戦
これまでの俺への決別と、これからの俺への挨拶の日なのだ
体育館の舞台袖に集められていた立候補者とその助っ人達は、皆一様に緊張の顔色を窺わせていた
「スグル君」
すぐ横から声を掛けられた
今まで顔を見た事しかなく、絡んだ記憶のない後藤ーーこの日の俺のライバルだった
「頑張ろう」
オイオイオイ、ここに来て余裕ぶってるつもりかァ?
今に見てろ?そのエリート臭がプンプンしやがる気取った顔を悔し涙でグシャグシャにしてやるからなァ!?
三下の悪役みたいな感情を抱きつつ、俺は極力平静を装って返事した
「えーお待たせしまsオイ!!そこ喋るなぁ!えー…………おぉい……!!喋んなちゃ、お前のせいで皆が迷惑するんぞ?のぉ?喋んな」
あまりに締まりのない開始の合図によって、生徒会選挙の幕は開かれた
俺達立候補者は体育館の舞台上に簡素な椅子で座らされ、自分のスピーチの順番が来るのを待った
下級生の委員立候補者のスピーチはすごく初々しくて、爽やかだった
間違っても票集めの為に一発ギャグを披露するような人間にだけはなって欲しくない
心からそう思った
他の人のスピーチを聞いているあいだ、同学年の後藤派とちょいちょい目が合うことがあったが、毎回睨まれて怖かった記憶がある
今の俺と中本は完全アウェー、舞台上の殆どは後藤に信頼を寄せている人間なのだとその度に痛感した
そして待ちに待った生徒会長ライバルズスピーチの順番が回ってきた
後藤の助っ人は同じくバスケ部の人間だった
そのスピーチの内容は、詳細には覚えてないが後藤を間接的に褒めたり、理想の人間像を語って「そんな人間おるかなぁ……あ、後藤がおるやん!」みたいな感じの技巧的なものだったのは覚えている
素直に上手い話し方だなと思った
ピシッとしたお辞儀で締めて、まあまあの拍手を貰っていた
ここら辺は流石の運動部だ
そして次に後藤のスピーチだ
話し始めた瞬間、館内の空気が急に変わったような錯覚をした
後藤の声はマイク越しでも分かるよく通るもので、ハキハキと、飄々と、堂々としていた
静まり返った体育館に響く後藤の話は、違和感なくスっと頭に入っていく
内容も現実的できちんとしたマニフェストを掲げ、自然と頷いてしまうような理路整然としたものだった
俺は圧倒された
昨年同じ舞台でスピーチを経験したからこその「慣れ」ではない
これは後藤が元来持っている才能だ
話す力と使える力がずば抜けている
大袈裟に思うかもしれないが、そんなことは無い
中学生にしてこれだけ人を惹き付ける話し方が出来る奴なんてひと握りだ
後藤のスピーチを聞いていく内に俺はみるみる自信を失っていき、スピーチが終わる頃には俺は
絶望していた
いや、後悔していた
俺は何でこんな場所に座っているんだろう?
ここは俺ごときが調子に乗って踏み込んでいい舞台ではない
途端に場違い感が俺を襲った
次のスピーチ、中本の番が回ってきて俺に
「行ってくるわ」
と小声で話し掛けた時にも俺は
「ぅん……」
と力ない返事しか返せなかった
あぁ、今すぐ帰りたい
この場から抜け出したい
穴があったら入りたい
穴子があったら食べたい
いや待て俺は穴子嫌いだから食べられない
そんな事ばかり考えるようになった
中本は壇上のマイクを前に45°の綺麗なお辞儀をしていた
やめてくれ
俺の為にお辞儀をするのはやめてくれ
中本は自分のスピーチを書いた原稿用紙を両手で握った
やめてくれ
俺の為に、バスケ部を敵に回してまで恥を晒すのはやめてくれ
中本は選挙開始から今の今までずっとニヤニヤしていた
やめてくれ
やめてくれ
やめてくれ……
「生徒の皆さんこんにちは!俺が生徒会長スグルの助っ人、中本です!!!」
やめ………………………………
あん?
俺は選挙活動の挨拶運動の折、自分を「生徒会長になるスグルだ」と触れ回っていた
中本はそれをパクッたのだろう
選挙の当日の本番のスピーチに、あろう事かそのネタをぶっ込んできた
聞いている生徒達がざわざわとどよめいたのを覚えている
しかし中本はそれを意にも介さず、終始淡々とふざけたスピーチを続けた
後ろ姿からでも分かる
中本はずっとニヤニヤしている
俺の助っ人を提案してきたあの日から、ずっと
ニヤニヤし続けているのだ
何でか俺は泣きそうな気持ちになった
急に嗚咽したい気分でいっぱいになった
俺は舞台下の生徒達の中を目で探った
理屈抜きでずっと俺の味方をしてくれるボンちゃんがいる
サッカー部にこっそり俺のことを宣伝してくれた向井がいる
俺の変なポスターを作った名前も覚えてない女子がいる
囲碁将棋部の部長がいる、遠藤くんがいる、吹奏楽部の皆がいる
そうだ、俺が生徒会長になるもんだと思っている人がいるんだ
当人の俺がそれを諦めてどうする?
俺はもう泣くのを堪えるので精一杯だった
まるでなんかの漫画の主人公にでもなった気分だった
そして俺は、主人公になりきる事にした
中本のスピーチが終わって俺の番
俺はゆっくりと立ち上がり、壇上でお辞儀をした
辺りを見回した
さっきの中本のスピーチによって、俺のスピーチはどんなもんかと期待の眼差しが多くなっていたような気がする
俺は数週間かけて書き上げた原稿用紙に目を落とした
あの時を思い出す
夏休み
俺が必死になって書き続けた原稿用紙をヤンキーによって一瞬で、夢と共に破り捨てられたあの時を
今度は違う
後藤に勝つため、無い頭を巡らせて振り絞ったマニフェストの数々……
どうすれば皆に聞いて貰えるか?
それだけを考えた
だがさっきの後藤のスピーチで俺は痛いほど分からされた
単純な話の構成力では俺には後藤に勝つことが出来ない
だから、俺は主人公になる事にした
原稿用紙を全生徒に見えるように掲げ、俺はそれを
今度は自分自身によってビリビリと引き裂いた
今日一番、舞台がどよめいた
体育館脇で立って聞いていた先生達は驚き、この奇行を止めに入って良いものかどうか迷っていたようだった
誰も止めに入らないのなら好都合とばかりに、俺は話をし始めた
以下、脚色はあるが大まかなそのスピーチの流れを書く
「皆さんお待たせしました、生徒会長になるスグルです
僕はさっきの後藤君のスピーチで分かってしまいました。僕は練りに練ったスピーチで後藤君には勝てません
だから、本当は書いてきたやつを読み上げるつもりだったんですが、やめました
今、僕が皆さんに伝えたい事を考えて、この場でそれを話します」
そして延々と続く俺のマニフェストやら生徒会長への意気込みの話
内容は結局、書いてあったスピーチと同じものしか出てこなかったが、冒頭で主人公になり切った事により、皆が真剣に耳を傾けてくれているようだった
ここで俺は勝負に出る
「〜〜と思うのですが、皆さん如何でしょうか!?
もしいいなと思ったら、拍手で応えて下さい!」
俺の即興のアイデア、「リアクションを求める」
これは今でも自分に感嘆する
中学生のスピーチは自分の意見を皆に聞いて貰って終了、な事が多い
これでは皆が聞いている途中で飽きてしまう
聞いている側も当事者なんだということを知ってもらう為、また、会場の一体感を高める為に、俺はスピーチに相互性を持たせたのだ
しかも中学生というのは大体、「拍手するべき場面」では条件反射的に拍手する
そこに個人の意思が介入する余地はほとんどない
それを踏まえた上でのアドリブだ
当時の俺すげー
結果、少しの間の後大きな拍手が体育館に鳴り響いた
多分大半は面白がってやっているだけだろう
だがそれでいいのだ
この「空気」が、「温度」が、俺を生徒会長にさせるのだ
俺は満足気に「ありがとうございます!」といって締めの挨拶に入り、そのスピーチを終えた
そして自分の席に戻ろうとした時、意図せずその「空気」は形になった
「いよっ!!スグルーーーー!!!!!」
馬鹿でかい声を発したのはパソコン部のヤンキー先輩だった
しかも立ち上がって叫んでいるようだった
完全に予想外だった
もう俺が原稿用紙を引き裂いた時点から皆お祭り気分だったんだろう
何をしてもいいみたいな危険な空気になりつつあったのだ
このヤンキーの発言もおそらくそれによるものだ
流石にこれは先生に注意されていたが、このヤンキーの発言が決め手になって、もはやこの一体感は誰にも手が付けられなくなっていた
中本の大番狂わせと、俺による選挙のお祭り化によって選挙は騒がしいまま幕を閉じたのだった……
後日、結果が校内放送で伝えられた
言うまでもないが、俺の勝利だった(ドヤ)
昼休みにボンちゃんと向井がお祝いの言葉を投げ掛けてくれた
廊下を歩いても皆から「あっ例の奴だ」という反応と声援を頂いた
俺は中本にニヤニヤしながらお礼をした
中本もニヤニヤしながら返事してくれた
ついに ねんがんの せいとかいちょうに なったぞ!
俺はあからさまに天狗になっていた
放課後、ボンちゃんと帰宅しながら選挙当日の武勇伝とアドリブについてドヤ顔でずっと語っていた
ボンちゃんは笑顔でそれを聞いてくれた
その時、ポツンとボンちゃんが呟いた
「いやー凄いね、生徒会長」
俺はそれに社交辞令的に返そうとした
「いやいや、これも皆のおかげ…………」
…………あれ?
何かおかしくね?
ギュルルルルルル
俺の脳内ビデオテープが全速力で巻き戻しを開始した
「毎度毎度誰かがヒーローのように助けてくれるとは限らないし、助けてくれたとしても俺がこのままであり続ける限り何度でもこんな事件は起きる
原因を断ち切るには、俺がしっかりしないといけないのだ
そんなふうに考えた俺は、誰からもナメられないような人間になる事を決めたのだ」(
>>102)
あれ〜?おかしいね〜?
今回俺は色んな人に助けまくられて生徒会長になったし、そもそもそんなにしっかりしてなかったし、パソコン部とかの絡み見て貰ったら分かるように各方面から舐められまくってたね〜?
おっかしいねぇ!?
結局のところ俺は当初の目的を達成出来てなどいなかったのだ
俺はそれに気づいちゃった
急に恥ずかしくなって、結果発表の当日から早くも俺は天狗になるのを辞めた
まあそれはさておき、心を入れ替えまくった俺は生徒会内で地道に頑張った
最初は後藤派の皆からのバッシングが酷かったが、一年間をその仲間達と過ごす内に、段々ではあるが打ち解けていった
中三の秋頃には普通に皆、なんというか俺への態度は悪いんだが愛のある態度というか、まあ一言で言うとツンデレみたいに俺に接してくれるようになっていた
中三の生徒会選挙では、後輩の副会長君が生徒会長になった
俺はある程度予想していたが、去年の俺に影響されていきなり生徒会長になろうとする子が二人現れた
しかし、あえなく散っていった
同じ悪ノリは飽きられるんだよ、ドンマイ
ところで中三ともなると、進路の話を色んな方面からしつこく聞かれる事になる
俺には具体的な希望進路がこの時無かったので、どうしたもんかな〜とずっと思っていた
家庭も貧乏だし、進学するにしても必然的に公立になる
でも今のところ惹かれる高校もない
どうしたもんかな〜
どうしたもんかな〜怖いな〜やだな〜
稲川淳二になりつつあった俺は、ある日偶然ある会話を耳にする
教室だったか廊下だったか忘れたけど、その会話は去年の生徒会長戦で戦ったかつてのライバル、後藤とその友人によるものだった
「後藤はどこの高校に行くん?」
「〇〇高やね」
「えっ!?✕✕高やないん!?」
「うーん……そこに行こうと思っとったけどね……まぁ」
「えー何で?…………あっ」
✕✕高というのは、地域で有名な超絶頭のいい高校だ
後藤は勉強は出来るが、失礼だがそんなところに行くほど頭は良くない筈だ
行けるとしたら推薦……あっ
そこまで考えて俺はやっと気付いた
そうだ、後藤は今ごろ生徒会長になっているはずだったんだ
そう、俺という邪魔が入らなければ
生徒会長に突然なって結局進学先も決めてない俺に対して、後藤には具体的な目標があった
そしてその目標の為に後藤は生徒会に入ったんだ
それなのに俺は……
急に俺は罪悪感に苛まれた
俺って完全に悪者じゃないか……
大した目標も無いくせに人の夢を邪魔しておいて、本人は結局奪うものだけ奪って何もしない
自分という存在がとても卑しく感じた
俺はどうすればいいんだ?
分からなかった
そして考えた結果、俺は地域の最底辺高校に入学する事になる
馬鹿げた判断だと思うだろう
俺も未だに何でこんな事をしたのか分からない
贖罪のつもりだったのか、誰かに許して貰いたかったのか
俺は同学年の誰よりもランクの低い高校に入学希望することによって、自分の罪悪感を無理やり合理化しようとしたのだ
独りよがりの自分勝手な罪滅ぼしによって、俺はその名前さえ書ければ受かるような超絶馬鹿高校に進学する事になってしまいましたとさ
次から、その高校は便宜上ウマシカ高校とする
はい、今日は終わりですはい
盛り上がりからの後味の悪い終わり方になってしまったが、まあ人生こんなもんだよ(悟り)
という事で中学生編終了、長かった
こんだけ短く要点だけ抜き出して書いたのにまだ中学生かよ……
次から高校生編の始まりです
盛り始めた俺の恋バナモリモリと、ついに警察の絡む事件発展になります
ありがとうございました
いじめられっこからの生徒会長て純粋にすごい
なんだかんだ人柄良いんだろうね!
なんという思慮深い中学生なんだ。。。
高校編も楽しみにしてるよ!
ここのスグルって名乗ってる人の友人です。
ここではぼんちゃんと書かれている者です。
スグルはもう続きを書けません。楽しみにして下さった方、すみませんでした。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)という病気で、徐々に体が言う事を聞かなくなってくる病気なのですが、4日ほど前からスマホを扱うのも困難になってきました。
今はスグルのスマホを借りて書き込んでいます。
動けなくなる前に自分の人生をどこかに記しておきたかったんだそうです。
まだ喋る事は出来るのですが、少し辛いそうです。
明日スグルにスマホを返しに行くので、書き込むのはこれが最後になります。
本当にすみませんでした。暖かい書き込みの数々拝見しました。ゆうの話を聞いてくれてありがとうございました。
本当にありがとうございました。
途中までだけど読み物として充分楽しませてもらったよありがとう。今でもぼんちゃんと繋がっているのは嬉しい。
おつでした!
人より不自由なことたくさんあると思うけど、その分幸せなこともたくさんありますように。
え??まじでボンちゃん??
スグル病気って本当なん??
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