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[東京 27日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は27日の金融政策決定会合後の記者会見で、北朝鮮情勢などの地政学リスクが日本経済や物価に影響を与える場合は追加緩和を辞さない姿勢を示した。もっとも同会合では景気判断を引き上げ物価が目標の2%を2018年度に達成するとのシナリオを堅持。よほどの有事がなければ金融政策を据え置く姿勢を示した。
<地政学リスク「頭の体操している」>
総裁は足もとの北朝鮮情勢についてはコメントを控えつつ、中東や北朝鮮など「地政学リスクには、今後とも十分注視する」と強調。中央銀行として「頭の体操はしている」とし、「経済や金融、物価情勢に影響する場合は、対応する」と明言した。もっともその場合の追加緩和手段について、金利引き下げか、量的な緩和拡大なのか「対応手段は経済・金融・物価情勢次第だ」として、現時点では「先験的には言えない」とした。
日銀は同日公表した「展望リポート(経済・物価情勢の展望)」で、足もとの景気について「緩やかな拡大に転じつつある」とし、従来の「緩やかな回復基調」から上方修正。2017年度と18年度の経済成長率見通しを上方修正した一方、2017年度の物価見通しを従来の1.5%から1.4%に小幅下方修正した。
<物価の弱さ、一時的>
総裁は「足もとの物価が弱い」ためと説明したが、理由は「主として携帯電話機と通話料の値下げであり一時的」と判断。景気好転や人手不足により賃金や物価が上昇するとの日銀シナリオは変更の必要がないとの考えを強調した。
春闘での賃上げが前年並みの水準にとどまった点についても、「物価(生鮮を除く消費者物価指数、コアCPI)が、昨年度はマイナス水準で推移した中で、昨年並みの賃上げは評価できる」と述べた。
<80兆円文言維持、「問題生じてない」>
日銀の国債買い入れが、瞬間風速で年間50兆円台にとどまっており、債券市場では、政策運営を量から金利にシフトした昨年9月以降も、「年間80兆円」との国債買い入れメドを声明文に掲げることとの整合性を問う声もある。総裁は「買い入れペースは80兆円を上回ったり下回ったりしているが、80兆円をメドとすることで問題が生じているとは考えない」と述べ、政策の目安はあくまで金利との考えを強調した。
米欧中銀の金融政策をめぐる出口議論が広がりをみせる中で、黒田総裁は「時期尚早」との公式答弁を繰り返し、「物価目標をどの程度達成したら、どのような出口戦略をとる、というような機械的なルールはない」とした。
昨年9月にスタートした現在の金融政策の枠組み「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)」では、金利目標は物価目標の達成とは独立の理由で操作可能だが、日銀保有資産の増加は物価が2%を超えて、2%前後に安定推移するまで継続すると定めている。このため総裁は物価が「2%を超えて安定推移するのは18年度より先の可能性が高い」と説明した。
(竹本能文、伊藤純夫)
2017年 4月 27日 5:53 PM JST