国内に流通する主要な雑誌などをそろえる日本初の雑誌図書館「大宅壮一文庫」(東京都世田谷区)が、5月に財政立て直しを図りクラウドファンディングを利用した支援を呼びかけたところ、3日間で目標金額の500万円を獲得した。利用者離れが進み、年間2千万円の赤字が続いている同文庫にとっては、久々の明るい話題。インターネットの隆盛で苦境に立たされた図書館が進化するネットに助けられた形だ。
同文庫が、インターネットを利用し運営資金を募るクラウドファンディングで支援を呼びかけたのは、5月18日。「6月30日までに500万円を集め、1万種類78万冊の雑誌の記事索引データベースシステム改修費用などを捻出したい」としていたが、報道された効果もあってか、わずか3日間で目標額に到達した。
その後も支援は寄せられ、6月16日正午現在で607人から675万円を集めた。予定通り、今月30日午後11時まで募集している。
「これほど短期間に、これだけの方々からご賛同を得られるとは、まったく予想していなかった。皆様からいただいた声を、あだやおろそかにはできないと思うとともに、身が引き締まる思いです」
そう話すのは同文庫の事務局、鴨志田浩さん。
国内最大級のクラウドファンディングサイト「レディーフォー」の大久保彩乃・広報部マネージャーは、次のように分析する。
「赤ちゃんを虐待死から救う事業に9日間で2500万円の支援が寄せられたことがあるが、今回の達成も驚くほど早かった。(ジャーナリストの)津田大介さんらがツイッターなどで広めてくださったおかげで、大宅文庫の存在を知らなかった若い世代やネットユーザーにも情報が届いたのでは」
編集関係の仕事をしている人を中心に応援
「大宅壮一文庫を存続させたい」との悲痛なメッセージが掲げられるサイト内の応援コメントを見ると、『週刊誌で仕事をしていたとき、ものすごくお世話になりました』や、『職業柄なくてはならない』『インタビューの仕事のたびに…』など、やはり編集関係の仕事をしている(していた)と思われる人の声が掲載されている。
『大学時代にゼミの共同研究で通わせていただきました』『卒論で使った』など学習に利用した人の声も連なる。
その一方で『まだ一度も行ったことはありませんが…』など、未体験の人たちの声も多い。
『貴重な文化遺産』と書き込む人も。雑誌は文化的資料で保存する必要があると考える人が、少なからず存在するのだ。
〜中略〜
「初めて来たという方や、励ましの声をかけていただく利用者もいる。あまり間をおかず、次の企画を考えていきたい」と鴨志田さんは大宅文庫存続への意欲を燃やす。(文化部 伊藤洋一)
●大宅壮一文庫●日本で初めての雑誌図書館。評論家の大宅壮一さん(1900〜1970年)の雑誌コレクションを引き継ぎ、明治時代以降の雑誌を所蔵している。没後の71年に設立。「蔵書は多くの人が共有して利用できるものにしたい」という大宅さんの遺志により、雑誌図書館として一般に開放された。雑誌原本の閲覧や複写もできる。
2017.6.17 13:00 産経新聞
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