新五輪大臣の「名前」と「素性」をご存じだろうか? 鈴木俊一氏、件の自民党たばこ特別委員会の委員長をしていた人物だ。
ちなみに、日本禁煙学会FCTC監視委員会プロジェクトによる「タバコ業界からの政治献金調査(第四報:2010〜2015年)」では、さすがは委員長、6年間で125万円を受け取って、堂々1位に鎮座している。
その鈴木五輪相が8月9日、2020年の祭典に向けた受動喫煙対策に関して「原則禁煙ではなく分煙徹底で」的な発言したので取材陣も、仰天するやら、ある意味、納得するやら。
となれば、厚生労働省の「健康増進法改正案」よ、再び! 気骨の哲人・塩崎恭久前大臣の意思を継いで新・厚労相の抵抗ぶりに期待が寄せられるが……。
ポスト塩崎の加藤勝信厚労相も、前掲の献金調査において結構上位組の42.8万円を受け取っているというから何をかいわんや。五輪相&厚労相が揃ってズブズブの業界寄りでは、もはや「たばこのない五輪」なんて絵空事に過ぎないのか?
■「電子タバコ」は禁煙率上昇の立役者か?
ようやく本題だが、そんな「Wヤニ献金大臣」にとっては、今回ご紹介する「電子タバコ」絡みの米国発の新知見も、馬耳東風だろうか。世界の関心は「禁煙率アップ」に注がれている時代に、いまだ「分煙徹底」とか言っているのだから。
本年(2017年)7月26日の『BMJ』(オンライン版)に掲載された、米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)家庭医学・公衆衛生学のShu-Hong Zhu氏らによる研究結果を要約すると、以下の通りとなる。
米国における近年(2010年頃〜2015年)の禁煙率アップという現象には、どうやら、その間に急速拡大した「電子タバコの普及」が寄与した可能性が否めない――。
Zhu氏ら研究陣が「禁煙(率)と電子タバコ(の使用)」の関連を調べるため、用いたのは、米国民対象の人口動態調査の一環として3〜4年周期で実施されている喫煙調査(CPS-TUS)のデータだ。
2014〜2015年実施の同調査の場合、約16万人の回答者のうち「喫煙経験ゼロ」の層が約10万人を占め、「喫煙者」は約2万5000人であった。
一方、「最近(過去1年以内に)禁煙したか?」の問いには2136人が「yes」と回答し、そのうちのほぼ半分(49%)が「電子タバコの使用経験」を申告していた。
さらに分析を進めると、こうした「電子タバコ使用層」と「非使用層」を比べた場合、前者のほうが「禁煙挑戦の経験」割合が高く(65%:40%)、実際に「3カ月以上の禁煙成功率」も使用派のほうが優位(8%:5%)であることが認められた。
ちなみにZhu氏の注釈によれば、1%の禁煙率アップは「約35万人の喫煙者が禁煙した」数値に相当するというから、侮れない「電子タバコ効果」といえるだろう。
全体レベルでの禁煙率の推移をみても、電子タバコ草創期の4.5%(2010〜2011年調査時)から浸透期の5.6%(2014〜2015年)へと上昇しているから、「寄与の可能性」が読み取れる。
■電子タバコのほうが「まだ、マシ」という選択
「今回の知見は、『電子タバコの使用者が増加し、同時に禁煙に成功する人の割合も増え』ており、『成人の喫煙率が低下している』という時代相を明らかにしたに過ぎない。そうもいえるわけだが、確かに説得力はある」
そう評価するのは誰あろう、同大サンフランシスコ校(UCSF)の禁煙センター長であるSteven Schroeder氏である。
一説には、加熱式タバコと疾病との関連などを証明するには「20年を要する」とされている。米国内でも「電子タバコは喫煙の入り口」とする否定的見解と、むしろ「禁煙ツールとして期待」を寄せる意見が一致をみない。
しかし、前出のZhu氏とSchroeder氏の暫定的見解は、「電子タバコは完全に安全とはいえないが、通常のタバコと較べれば害が少ない効能性がある」と、異口同音で一致している。
さらにSchroeder氏は「4000万人を数える国内の喫煙者がもし、電子タバコに切り替えたとすれば、米国民の健康は向上するだろう。従来から推奨されている方法で禁煙成就しないのであれば、電子タバコの使用を考慮してもいいのでは」と、補足する。
もう一人、今回の知見を歓待視する専門家の声を紹介しておこう。
(略)
日本国内でも、ますます加熱式へのシフトが加速するだろうタバコ市場――。2020年には市場の3割を占めるとも予測されているが、「仕事人内閣」の担当相の興味は目下「分煙」のようだ。
(文=編集部)
ヘルスプレス:http://healthpress.jp/2017/08/post-3175.html