米国防長官、シリア巡りトルコ訪問 アルカイダ掃討でも溝
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM23H3M_T20C17A8FF1000/ 【イスタンブール=佐野彰洋】米国のマティス国防長官は23日、トルコの首都アンカラを訪問し同国のエルドアン大統領、ジャニクリ国防相とシリア情勢などを協議した。
国際テロ組織アルカイダ系武装勢力の支配下に入ったシリア北西部の要衝イドリブを巡り、外交解決を模索するトルコに対し、米国は奪還作戦の実施に前向きとみられ、
対「イスラム国」(IS)に続き、アルカイダ掃討でも両国の溝が広がる可能性がある。
イドリブは北部の最大都市アレッポの南西約60キロメートルに位置する。アサド政権に反旗を翻す反体制派がトルコやアラブ湾岸諸国の支援を受けて支配を
続けてきたが、7月下旬、激しい戦闘の末、アルカイダ系勢力が大部分を占拠した。
アルカイダは2001年に米同時テロを起こしており、テロ組織の壊滅を掲げる米国と、要衝の奪還を望むアサド政権軍や後ろ盾のロシアとの利害は実は一致している。
実際に作戦が始まれば補給路の閉鎖などで昨年のアレッポ包囲戦と同様の人道危機に発展する恐れがある。
このため、イドリブを含むシリア北部と国境を接するトルコは難民や難民を装った過激派の自国への流入を強く警戒する。既に一部の国境検問所を閉鎖。ロシア、
イラン、トルコの3カ国が主導でシリア和平を協議する「アスタナ・プロセス」を通じた解決を模索している。
トルコにとってもう一つの懸念材料は、米軍がIS掃討で協力するシリアのクルド人勢力、民主連合党(PYD)が奪還作戦に乗じてイドリブ方面に支配地域を広げるシナリオだ。
トルコはPYDを国内の分離・独立勢力と同一のテロ組織として敵視しており、安全保障上の最大の脅威とみなす。
エルドアン大統領は22日の演説で「テロ回廊を築き、地中海に到達しようとしている」と勢力拡大への危機感を表明。軍事的な対抗措置も辞さない考えを強調した。
米国防総省はマティス氏訪問の目的を「北大西洋条約機構(NATO)の同盟国であるトルコが治安上の懸念に対処するための支援策を探る」などと説明しているが、
会談では両国の溝が浮き彫りとなりそうだ。
トルコはロシアから最新鋭地対空ミサイルシステム「S400」の導入計画を推進。両国は急速に距離を縮めている。米国が封じ込めを図るイランからは今月、1979年の
イラン革命以来、初めて軍トップの参謀総長がトルコを訪問し、軍事協力の強化で合意した。こうした動きに対し、マティス氏が懸念を表明する可能性もある。