一滴の血液でがんの有無を診断できるとして注目されるバイオチップ「プロテオ」が法廷闘争に持ち込まれた。医療ベンチャー「マイテック」(神戸市)が、共同研究者だった昭和大学医学部の伊藤寛晃准教授に対し、チップの発明で特許権を共有していないことの確認を求めて東京地裁に提訴したのだ。多くの命を救う可能性を秘めたチップをめぐり、ベンチャー企業が大学准教授と対立する小説さながらの様相を呈している。
プロテオは夫婦と子供で構成するマイテックが2016年に実用化に成功したバイオチップ。「過酸化銀メソ結晶」を金属板に表面堆積加工したチップに、がん患者の血液から分離させた血清を乗せると、がん細胞から出る「ヌクレオソーム」を吸着し、超早期のがんでもその有無を約3分で診断できるとされる。
プロテオを用いたがん診断は現在全国38カ所の医療機関で導入され、保険適用外だが、約6万円で受診可能。マイテックが結果を分析し、がんの部位も特定可能にするなど、精度向上を目指している。
訴状などによると、マイテックが有害物質の検出用として商品化していたチップをがん診断に応用するため研究を進めていたところ、伊藤氏から臨床試験の協力を持ちかけられ、12年12月、伊藤氏と「臨床試験で生じた成果の知的財産権はマイテックのみ」などと定めた覚書を締結。伊藤氏から提供されたがん患者の血液を使って臨床試験を重ね13年4月、ヌクレオソームの検出に成功した。
検出方法を特許出願する際、今後の血液提供や学会での論文発表を期待し、伊藤氏を共同出願人としたところ、伊藤氏は昭和大のホームページなどでチップの発明を自身の功績と主張。16年1月に放送されたNHKの情報番組「サキどり」の収録では自ら発案したとアピールした。
番組の収録で伊藤氏と共演したマイテックの研究者、長谷川克之氏は「伊藤氏はがん患者の血液を臨床試験に提供しただけで、チップの製造技術はすでに私と息子が2人で発明していた。この発言は『軒先を貸して母屋をとられる』ようなもの。撮影中だったため、その場で否定することもできなかった」と主張する。
伊藤氏は14年度以降、文部科学省から科学研究費を受給するための研究計画調書でも、チップを用いた検出方法を「研究代表者(伊藤氏)が世界で初めて成功した技術であり独創的」と記述しているという。
長谷川氏は「伊藤氏が覚書で禁止されている第三者の企業との共同研究を秘密裏に進め、チップの応用技術を独占しようとした記録もある。訴訟は金銭的な賠償を求めるわけではなく、『チップはマイテックが発明した』ということをはっきりさせるために踏み切った」と話す。
一方、伊藤氏の代理人弁護士は「マイテックの主張は事実と食い違うところが数多くある。今後の訴訟でこちら側の主張の正しさを明らかにしていきたい」とコメントしている。
第1回口頭弁論は28日に開かれる。チップはがんの早期発見につながる技術として期待されているだけに、法廷闘争の行方が注目される。
http://www.sankei.com/smp/affairs/news/170926/afr1709260027-s1.html
プロテオは夫婦と子供で構成するマイテックが2016年に実用化に成功したバイオチップ。「過酸化銀メソ結晶」を金属板に表面堆積加工したチップに、がん患者の血液から分離させた血清を乗せると、がん細胞から出る「ヌクレオソーム」を吸着し、超早期のがんでもその有無を約3分で診断できるとされる。
プロテオを用いたがん診断は現在全国38カ所の医療機関で導入され、保険適用外だが、約6万円で受診可能。マイテックが結果を分析し、がんの部位も特定可能にするなど、精度向上を目指している。
訴状などによると、マイテックが有害物質の検出用として商品化していたチップをがん診断に応用するため研究を進めていたところ、伊藤氏から臨床試験の協力を持ちかけられ、12年12月、伊藤氏と「臨床試験で生じた成果の知的財産権はマイテックのみ」などと定めた覚書を締結。伊藤氏から提供されたがん患者の血液を使って臨床試験を重ね13年4月、ヌクレオソームの検出に成功した。
検出方法を特許出願する際、今後の血液提供や学会での論文発表を期待し、伊藤氏を共同出願人としたところ、伊藤氏は昭和大のホームページなどでチップの発明を自身の功績と主張。16年1月に放送されたNHKの情報番組「サキどり」の収録では自ら発案したとアピールした。
番組の収録で伊藤氏と共演したマイテックの研究者、長谷川克之氏は「伊藤氏はがん患者の血液を臨床試験に提供しただけで、チップの製造技術はすでに私と息子が2人で発明していた。この発言は『軒先を貸して母屋をとられる』ようなもの。撮影中だったため、その場で否定することもできなかった」と主張する。
伊藤氏は14年度以降、文部科学省から科学研究費を受給するための研究計画調書でも、チップを用いた検出方法を「研究代表者(伊藤氏)が世界で初めて成功した技術であり独創的」と記述しているという。
長谷川氏は「伊藤氏が覚書で禁止されている第三者の企業との共同研究を秘密裏に進め、チップの応用技術を独占しようとした記録もある。訴訟は金銭的な賠償を求めるわけではなく、『チップはマイテックが発明した』ということをはっきりさせるために踏み切った」と話す。
一方、伊藤氏の代理人弁護士は「マイテックの主張は事実と食い違うところが数多くある。今後の訴訟でこちら側の主張の正しさを明らかにしていきたい」とコメントしている。
第1回口頭弁論は28日に開かれる。チップはがんの早期発見につながる技術として期待されているだけに、法廷闘争の行方が注目される。
http://www.sankei.com/smp/affairs/news/170926/afr1709260027-s1.html