2017/9/28 16:53
東芝は28日、米投資ファンドの米ベインキャピタルを軸とする「日米韓連合」と、半導体メモリー子会社「東芝メモリ」の売却契約を結んだと発表した。売却額は2兆円で、東芝とHOYAの日本勢が東芝メモリの議決権の過半を握る。東芝は10月24日に開く臨時株主総会で売却について株主の承認を得る予定。原子力発電事業の巨額損失で揺らいだ東芝は、経営再建への一歩を踏み出す。
日米韓連合は買収目的会社を通じて東芝メモリを買収する。東芝は3505億円を再投資して目的会社の普通株を取得する。同じくHOYAも270億円を投じて普通株を取得。両社合わせて議決権の過半を握る。残りの議決権はベインが取得する。
韓国メモリー大手のSKハイニックスも融資などにより3950億円を拠出する。SKは今後10年間にわたり、15%を超えて議決権を取得することができない。
東芝メモリと取引関係のあるアップル、デル、シーゲート・テクノロジー、キングストンテクノロジーの米IT(情報技術)4社は4155億円を出資して議決権のない優先株を取得する。三井住友銀行など東芝の主取引銀行は買収資金として約6千億円を融資する。
売却後はベインキャピタルと東芝メモリの現経営陣を中心に事業を運営する。
SKは今後10年にわたり東芝メモリの機密情報にアクセスできない。
東芝メモリの売却が完了すれば、株主資本を7400億円改善できる効果が見込める。株主資本は前期末に5千億円強の債務超過だったのが、今期末には2千億円程度のプラスに回復する見通し。上場廃止の対象となる2期連続の債務超過を解消できることになる。
東芝メモリの売却を巡っては、米ウエスタンデジタル(WD)が売却差し止めを求めて国際仲裁裁判所に仲裁を申し立てている。WDとの係争が終結した後、官民ファンドの産業革新機構と日本政策投資銀行も東芝メモリに資本参加する計画。両社の資本参加後も、日本勢が東芝メモリの議決権の過半を握り続ける。
両社が出資する前に、東芝は自社の議決権の一部を両社に供与する。
仲裁裁が最終結論を出すまで1年以上かかる見通しのため、WDはその間は売却手続きを一時停止するよう求める仮処分を10月中に申し立てる。差し止め請求が認められた場合でも、「株式譲渡そのものが差し止められない限り、株式譲渡契約に基づいて株式譲渡を実行する」と東芝は説明している。
ただ、東芝とWDが和解しないまま、最終的に株式譲渡差し止めの結論が出た場合、東芝は損害賠償金をWDに支払うなどの措置を求められる可能性がありそうだ。
係争問題が落ち着けば、東芝メモリは3年後にも新規株式公開(IPO)する計画だ。
今後、東芝メモリは各国の独占禁止法審査に入る。東芝メモリの同業であるSKハイニックスが将来的に議決権を握る見通しのため、当局の審査に影響が出るとの見方もある。
通常6〜9カ月かかるとされる中国独禁当局の審査が長期化する可能性もある。売却完了が4月以降にずれ込む場合、東芝は債務超過解消に向けた新たな対応を迫られる。
http://mw.nikkei.com/sp/#!/article/DGXLASDZ22I5E_Y7A920C1000000