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ブリヂストンが、循環型社会を見据えた次世代タイヤの開発を加速している。
空気を充填(じゅうてん)しなくて済む「エアレスタイヤ」で、パンクに備えたスペアタイヤを省ける。住友ゴム工業など競合するタイヤ大手各社も省資源につながるタイヤの技術開発に注力しており、開発競争が過熱しそうだ。
12月8日。東京都江東区の東京ビッグサイトで開かれた環境・エネルギー展「エコプロ2017」のブリヂストンのブースをのぞくと、車輪の軸と輪を放射状につなぐ赤色の樹脂製「スポーク」が印象的な自転車が目に飛び込んできた。
装着したタイヤは、タイヤ表面のゴムと樹脂製ホイールとの間にスポークが張りめぐらされた構造だ。その反発力で自転車の重みを支えながら、路面からの衝撃を吸収するという。
従来の空気入りタイヤは、空気圧が適切でなかったりパンクしたりすると車の走行に支障をきたす。このため運転者は定期点検が求められるが、エアレスタイヤならメンテナンスの手間を省ける。
同社革新タイヤ開発部の阿部明彦フェローは「安全、快適、環境という3つの要求が将来のタイヤに求められる」と予測。市場を先読みし平成20年から開発を進めてきたのがエアレスタイヤだ。
環境面では、加熱すると成形しやすくなる「熱可塑性樹脂」をスポークに採用することで、ゴムを含めて使用する素材を100%リサイクル可能にした。スペアタイヤやジャッキが不要となることで車体が軽量化。これにともない燃費が改善し、二酸化炭素(CO2)排出量の削減にも貢献できる。
開発では、コンピューターによるシミュレーションを繰り返し、材質やスポークの形状も探究。阿部氏は「背反する強度と柔軟性を両立できる材料の開発がハードルのひとつだった」と振り返る。
23年に開かれた東京モーターショーでは、高齢者ら向け電動車いすに採用し展示。25年のモーターショーでは、トヨタ車体の1人乗り電気自動車(EV)「コムス」に装着し披露した。コムス向けエアレスタイヤが耐えられる車両重量は23年発表の第1世代に比べ4倍増の410キロ、最高速度は10倍増の時速60キロまで向上。蓄積した技術を生かして29年4月には、エアレスタイヤを装着した自転車をブリヂストンサイクルと共同開発したと発表した。現在、31年の量産化に向けて準備を進めている。
ただ、四輪車に適用するためには、乗り心地と耐久性を高次元で両立したエアレスタイヤが求められる。このため同社は、さらなる技術の進化を狙う。
世界的な自動車保有台数の増加に伴うゴム資源の不足問題が指摘される中、競合各社も省資源タイヤの開発に力を入れている。既に東洋ゴム工業は独自開発のエアレスタイヤを軽自動車に装着し120キロの走行試験で耐久性を実証したほか、住友ゴムは商品ライフサイクル全体の環境性能を高めた新素材のタイヤを32年に開発する方針を今秋に打ち出した。建機・農機用エアレスタイヤを商用化する米ミシュランも、培ったエアレスタイヤ技術を乗用車に転用する可能性を探っているという。
ブリヂストンはエコプロで、パンクしても一定距離を走れる「ランフラットタイヤ」もアピール。同社新事業戦略企画部の村沢圭ユニットリーダーは「無駄なく利用できることを啓蒙(けいもう)したい」と意義を強調した。タイヤの技術革新は消費者の環境意識を高めるきっかけになりそうだ。(経済本部 臼井慎太郎)