イラン、イラク、米国の相関図
ガスが燃焼し炎が上がるキルクークの原油採掘施設=イラク北部で2017年10月18日、ロイター
シリア、イラク、イラン、アフガニスタン
【カイロ篠田航一】過激派組織「イスラム国」(IS)との戦闘をほぼ終えたイラク政府が原油の増産に乗り出し、隣国イランとの協力関係を深めている。かつてイラン・イラク戦争(1980〜88年)で戦火を交えた両国だが、近年は軍事面に加え、資源開発でも連携しており、イランの影響力拡大を警戒する米国からは懸念の声も上がっている。
イラクのメディアによると、イランとイラクは昨年12月、イラク北部の油田地帯キルクークで生産される日量6万バレルの原油と、イランで精製される石油を今後交換していくことで合意した。油田が豊富なイラクだが、ISとの戦闘などの影響で近年は精製施設の整備が停滞。イラクのルアイビ石油相は「両国はキルクークとイラン側を結ぶパイプラインの建設も計画中だ」と述べた。キルクークの開発は急ピッチで進んでおり、英石油大手BPも今月、キルクーク油田の生産能力向上に協力することでイラク政府と合意した。
キルクークを巡る「争奪戦」は近年、激しさを増していた。2014年にISがイラク北部で台頭した際、敗走したイラク中央政府軍に代わりクルド自治政府がISを撃退し、キルクークを死守。勢いづく自治政府は昨年9月に独立の是非を問う住民投票を実施したが、これに反発したイラク中央政府は軍を派遣し、再びキルクークを奪い返した。
一方、イスラム教スンニ派支配が続いたイラクでは、フセイン政権が03年に崩壊した後はシーア派が政権を主導。シーア派国家イランが急接近を図っており、イランから送り込まれた民兵やイランの影響下にある地元のシーア派民兵がイラク軍と共にISと戦った。
イランと対立する米国はこうした動きを懸念する。昨年10月にイラクを訪問したティラーソン米国務長官は「ISとの戦闘がほぼ終わった今、イランの民兵はイラクを去るべきだ」とくぎを刺したが、イラクのアバディ首相は「対IS戦で民兵は多大な犠牲を払った」と述べ、今後もイラク国内に駐留が必要と反論。イラクとイランの軍事面での結び付きの強さをかえって浮き彫りにした。
毎日新聞 2018年1月25日 東京朝刊
http://mainichi.jp/articles/20180125/ddm/007/030/115000c?inb=ra