■年に1度4時間、プーチンが答え続ける
<支持率7割を超える圧勝で通算4期目の大統領職に就くことが決まったプーチン。旧ソ連のスターリン政権以来の長期となる絶大な権力を手にしながらも、皇帝の心中は穏やかでない? 長年にわたる徹底取材があぶりだした、笑わぬ皇帝の真の姿は意外なものが多い...――本誌SPECIAL ISSUEムック「丸ごと1冊 プーチン」より>
ロシア人でも外国人でもプーチンに直接、聞きたいことを質問できる。そんな機会が年に一度、訪れる。電話やメール、映像の生中継、スタジオの観客などから寄せられた100万通以上の質問の一部に、プーチンが4時間にわたって答えるテレビ番組「プーチンと直接対話」だ。国営放送などを通じ、国民だけでなく世界中から注目されるこの番組では、政治や外交のほか大統領のプライベートや、人生観に関わる内容の質問へのプーチンの回答を聞くこともできる。過去の放送の中から、名場面の一部を紹介しよう。
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■ウクライナの裏切り者
ウクライナの親ロ的なビクトル・ヤヌコビッチ政権が、親EU的な市民運動に倒されたのは14年。同年の「直接対話」では、この事件に関する質問が多く寄せられた。市民の鎮圧に当たった特殊部隊の隊員は、市民への厳しい取り締まりを認めなかったヤヌコビッチについて「これまでも、あんなに腰抜けの裏切り者だったのか」とプーチンに質問。プーチンは質問者を「正直で、プロフェッショナルで、尊敬に値する」と称賛しながら、次のように続けた。
「(ヤヌコビッチの立場からすれば)自らの手で、自らの市民への暴力を認める命令に
サインできなかったのだろう」
(ただし、実際には警察部隊による親EU派市民への暴力は数多く確認されている)
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■アラスカを取り戻せ
海底資源が眠る北極の領有権を主張するプーチンの姿勢はアメリカの悩みの種になってきたが、1867年にロシアからアメリカに売却されたアラスカについては、奪還の動きを心配する必要はなさそうだ。同地が再びロシアの一部になる可能性について質問されたプーチンは次のように答えた。
「なぜアラスカが必要なんだい?」
「わが国の約70%は北極圏を取り囲んでいる。悩む必要などないだろう?」
■後継者は誰だ
翌年に大統領選を控えた2017年の番組では、後継者の話題も出た。既に後継者を選んでいるのか聞かれると、明言を避けて次のように答えた。
「まず、私はまだ現役だ」
「次に、それを決めるのは国民だ」
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■夫とペット
「ホットライン」で取り上げられるのは、きなくさい話ばかりではない。あるロシア人女性は、夫婦喧嘩について相談した。どんなにお願いしても軍人である夫ボリスが犬を買ってくれないので、軍の最高司令官から何か言ってもらえないか、というのだ。プーチンは、個人的な問題について命令を下すことはできないとしつつ、夫に語りかけた。
「ボリスよ頼む、優しさを見せて犬を飼うのを許してやってくれないか」
「これは優しく、家族の絆を強くする行動だ」
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■薬物とクローン
行政機関をエキスパート集団にするために自分のクローンを作りたいかと聞かれたときと、マリフアナ合法化を検討しているかと聞かれたときは、共に質問を遮るように簡潔に答えた。
「ノー」
「娯楽用のドラッグには断固反対だ」
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■ロマンス
13年に妻リュドミラと離婚してからは、この番組でも大統領の次のロマンスに関する質問が何度も取り上げられた。だが新たなファーストレディーを目指す女性は、自らがプーチンの愛を独占できるとは考えないほうがいい。ある時は、質問者との間でこんなやりとりがあった。
――あなたはロマンチックな人間?
「多少は」
――何よりも愛しているものは?
「ロシアだ」
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■性生活
06年からは若者層へのアピールを狙い、ネット経由での質問を解禁。すると、わいせつな質問が大量に送られてくるようになった。この年に最も多かった質問の1つは、プーチンの初体験がいつだったのかを問うものだ。
「彼ら(若者たち)にとってはこうした質問が普通なのだろう。最初にセックスしたのはいつかと聞かれたが、覚えていない。最後にしたときのことは覚えているがね(笑)」
「何時何分だったかも正確に」
>>2以降に続く
4/4(水) 18:34 ニューズウィーク日本版
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180404-00010004-newsweek-int&p=1