◆社長交代はなかったが…パナ予想外の相談役廃止・顧問制度見直しに社員衝撃、旧体制と距離置く経営へ
パナソニックが、4月から相談役制度を廃止した。
同社の創業者である松下幸之助氏も過去に就任し、長年存在してきたポストだった。
また、社長経験者が就いていた特別顧問は無報酬にし、80歳の上限を新たに設けた。
同社はこれまで「社長、会長経験者が退いた後も、強く影響を与えている」(同社関係者)と言われることも多かった。
新たな制度により、元社長や元役員とは一線を引いた経営を推進する構えだ。(中山玲子)
■社内に衝撃
「非常に驚いた。相談役などの廃止を決めるまでには、それなりに大変だったのではないか」
今年2月28日。
この日は、平成24(2012)年に就任した津賀一宏社長(61)が社長就任から6年が経過する直前で、一部では社長交代もうわさされていた。
前社長の大坪文雄氏(72)、その前の社長の中村邦夫氏(78)といずれも社長在任期間は6年だったからだ。
だが、津賀社長自身は昨年以降、報道各社のインタビューで社長続投を示唆する発言を繰り返しており、社長交代はないとの観測も強かった。
実際、蓋を開けてみると社長交代の発表はなかった。
そのかわり、相談役廃止や特別顧問の年齢上限の設定などが新たに決められ、予想外のニュースで社内に衝撃が走った。
2月の時点で、中村氏は相談役、大坪氏と元社長の谷井昭雄氏(89)は特別顧問に就いていた。
なかでも、注目されたのは中村氏だ。
■中村体制からの転換
中村氏は平成12(2000)年に社長に就任。
「創業者の経営理念を除いて聖域は設けない」と述べ、構造改革を推し進めた。
「破壊と創造」をスローガンに掲げ、系列販売店制度にメスを入るほか、同社の代名詞だった事業部制を解体
業績は一時的に立ち直ったものの、薄型テレビに使うプラズマディスプレーパネルの工場への大規模投資が巨額赤字を招き、経営危機を招いた。
津賀体制になってからは、プラズマディスプレーパネルの失敗への教訓から、テレビのような一般消費者向けよりも収益が安定して確保できるBtoB(企業向け)事業に重点シフトを進めてきた。
電気自動車(EV)化や自動運転化など大きな変革とともに新たな需要が期待できる車載事業がBtoBの大きな柱のひとつになっている。
■「院政」の懸念も
中村氏の後任だった大坪氏の社長時代も、基本的に中村氏のプラズマディスプレーパネルを推進する戦略を踏襲。
だが、津賀体制になって以降、パナソニックは事業構造の転換を図ってきており、それは中村体制からの脱却でもあった。
同社は今回の新制度の背景について「外からみた場合の経営の透明性を高めるため」と説明している。
相談役や顧問制度は最近でも、日本たばこ産業(JT)、カゴメなど多くの上場企業が廃止している。
三菱UFJフィナンシャル・グループもメガバンクで最後まで残っていた相談役の制度を廃止する。
これらの制度は元社長らが長年の経験で培ってきた知識やノウハウを現役の経営陣にアドバイスをする点でメリットがある一方、いつまでも影響力を及ぼすことで、現役経営陣が思い切った経営をしにくくなるなどのデメリットも目立ってきている。
3月に100周年を迎えたパナソニック。
過去の経営陣と一定の距離を置き、一層の前進を図る決意だ。
写真:津賀一宏社長(右下)と、歴代社長の松下正治氏(左上から時計回り)、山下俊彦氏、谷井昭雄氏、中村邦夫氏、大坪文雄氏、森下洋一氏
産経WEST 2018.4.21 12:00
http://www.sankei.com/west/news/180421/wst1804210003-n1.html
パナソニックが、4月から相談役制度を廃止した。
同社の創業者である松下幸之助氏も過去に就任し、長年存在してきたポストだった。
また、社長経験者が就いていた特別顧問は無報酬にし、80歳の上限を新たに設けた。
同社はこれまで「社長、会長経験者が退いた後も、強く影響を与えている」(同社関係者)と言われることも多かった。
新たな制度により、元社長や元役員とは一線を引いた経営を推進する構えだ。(中山玲子)
■社内に衝撃
「非常に驚いた。相談役などの廃止を決めるまでには、それなりに大変だったのではないか」
今年2月28日。
この日は、平成24(2012)年に就任した津賀一宏社長(61)が社長就任から6年が経過する直前で、一部では社長交代もうわさされていた。
前社長の大坪文雄氏(72)、その前の社長の中村邦夫氏(78)といずれも社長在任期間は6年だったからだ。
だが、津賀社長自身は昨年以降、報道各社のインタビューで社長続投を示唆する発言を繰り返しており、社長交代はないとの観測も強かった。
実際、蓋を開けてみると社長交代の発表はなかった。
そのかわり、相談役廃止や特別顧問の年齢上限の設定などが新たに決められ、予想外のニュースで社内に衝撃が走った。
2月の時点で、中村氏は相談役、大坪氏と元社長の谷井昭雄氏(89)は特別顧問に就いていた。
なかでも、注目されたのは中村氏だ。
■中村体制からの転換
中村氏は平成12(2000)年に社長に就任。
「創業者の経営理念を除いて聖域は設けない」と述べ、構造改革を推し進めた。
「破壊と創造」をスローガンに掲げ、系列販売店制度にメスを入るほか、同社の代名詞だった事業部制を解体
業績は一時的に立ち直ったものの、薄型テレビに使うプラズマディスプレーパネルの工場への大規模投資が巨額赤字を招き、経営危機を招いた。
津賀体制になってからは、プラズマディスプレーパネルの失敗への教訓から、テレビのような一般消費者向けよりも収益が安定して確保できるBtoB(企業向け)事業に重点シフトを進めてきた。
電気自動車(EV)化や自動運転化など大きな変革とともに新たな需要が期待できる車載事業がBtoBの大きな柱のひとつになっている。
■「院政」の懸念も
中村氏の後任だった大坪氏の社長時代も、基本的に中村氏のプラズマディスプレーパネルを推進する戦略を踏襲。
だが、津賀体制になって以降、パナソニックは事業構造の転換を図ってきており、それは中村体制からの脱却でもあった。
同社は今回の新制度の背景について「外からみた場合の経営の透明性を高めるため」と説明している。
相談役や顧問制度は最近でも、日本たばこ産業(JT)、カゴメなど多くの上場企業が廃止している。
三菱UFJフィナンシャル・グループもメガバンクで最後まで残っていた相談役の制度を廃止する。
これらの制度は元社長らが長年の経験で培ってきた知識やノウハウを現役の経営陣にアドバイスをする点でメリットがある一方、いつまでも影響力を及ぼすことで、現役経営陣が思い切った経営をしにくくなるなどのデメリットも目立ってきている。
3月に100周年を迎えたパナソニック。
過去の経営陣と一定の距離を置き、一層の前進を図る決意だ。
写真:津賀一宏社長(右下)と、歴代社長の松下正治氏(左上から時計回り)、山下俊彦氏、谷井昭雄氏、中村邦夫氏、大坪文雄氏、森下洋一氏
産経WEST 2018.4.21 12:00
http://www.sankei.com/west/news/180421/wst1804210003-n1.html