http://www.bbc.com/japanese/43890043
2018/04/25
ドイツ・ユダヤ人中央評議会のヨーゼフ・シュースター会長は24日、ユダヤ教徒がかぶる「キッパ」と呼ばれる帽子を大都市の街中でかぶらないよう呼びかけた。ユダヤ人に対する暴行事件が相次いていることを受けた。
ベルリンの公共ラジオに出演したシュースター会長は、「基本的には、(反ユダヤ主義に)屈せずに自分自身を出すのが正しいやり方だ」とした上で、「しかしながら個々の人に対しては、ドイツの大都市でおおっぴらにキッパをかぶらないよう助言したい」と語った。
ベルリンでは今月16日に、キッパをかぶった若い男性2人が男にベルトでたたかれるという事件が起きた。男がベルトを振り回しながら反ユダヤ的な言葉を叫んでいた様子が動画に捉えられている。
25日には、ユダヤ人社会との連帯を表明する「キッパをかぶるベルリン市民」集会がベルリンで予定されている。
ドイツの複数のユダヤ人団体は、反ユダヤ的な発言や脅迫が最近相次いでいることへの懸念を表明した。
ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、イスラエルのテレビ局「チャンネル10」に対し、反ユダヤ主義は右翼集団によるものだけでなく、国内にいる一部のイスラム教徒の難民からも同様の脅威が存在すると指摘した。
シュースター会長の発言
大都市の街中でキッパをかぶらないよう呼びかけたシュースター会長は一方で、もしドイツが反ユダヤ主義に対抗する姿勢を示さなければ、「民主主義が危うくなる」と強調し、「これは反ユダヤ主義だけの問題ではない。人種差別や排外主義にも関係している。許されないということをはっきり示す必要がある」と話した。
発言への反応
キッパをかぶった若者たちが襲われる様子を捉えた動画をフェイスブックに投稿した、ベルリンに本拠を置く団体、「民主主義を支持し反ユダヤ主義に反対するユダヤ人フォーラム」は、シュースター氏のキッパ着用に関する発言とは、明らかに立場が異なる。
同団体の広報担当者は先週、「以前はいつも、ユダヤ人であることを知られないようキッパをかぶるべきじゃないと、友人や知人に助言していたが、意見を変えた。我々はこの闘いを闘って、社会の中で認知されるようにしなくちゃいけない」と語った。
ドイツのイスラム教徒(ムスリム)の団体、ムスリム中央評議会のアイマン・マズィエク会長は独紙ライニッシェ・ポストに対し、反ユダヤ主義が動機の最近の攻撃を強く非難し、「反ユダヤ主義、人種差別、憎悪はイスラムの教えでは大罪であり、我々は絶対容認しない」と述べた。
ドイツ国内のユダヤ人人口は、1989年のベルリンの壁崩壊以降、急速に増加。1989年以前は3万人以下だったが、旧ソビエト連邦からの移民を中心にユダヤ人の流入が続き、現在は20万人を超えている。
(英語記事 Germany's Jews urged not to wear kippahs after attacks)