人の再生医療に用いる胚性幹細胞(ES細胞)の研究機関への提供事業を京都大が今月中に始めることが十二日、関係者への取材で分かった。不妊治療で余った受精卵からES細胞を作ることに成功、提供できる体制が整った。実際に臨床研究で使える医療用ES細胞の提供は国内で初めて。
さまざまな細胞に変化する能力のある幹細胞を臨床応用する場合、ウイルスなどが混入しないよう品質管理体制の整った施設であらかじめ細胞を作って備蓄し、必要な時に研究機関に配布する方法が望ましいとされる。
京大はこのようなストック事業を血液の細胞から作った人工多能性幹細胞(iPS細胞)で実施している。ES細胞もiPS細胞と並び再生医療での活用が期待されているが、作製に受精卵を使うことから倫理的問題が指摘され、利用は基礎研究に限られていた。
京大は二〇一四年に国の新指針ができて医療用のES細胞が作製できるようになったのを機に、計画を推進。京都市の足立病院から不妊治療終了後に廃棄される予定だった受精卵の提供を受けて、ES細胞を作製した。
臨床研究などの用途で研究機関から提供希望があった場合、分配する。
同様の計画は国立成育医療研究センター(東京都)でも進んでおり、年度内に提供を開始する予定。
2018年5月12日 夕刊
東京新聞夕刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201805/CK2018051202000235.html