http://www.bbc.com/japanese/44326651
2018/06/01
イタリアのセルジオ・マッタレッラ大統領は5月31日、法学者のジュゼッペ・コンテ氏と会談し、同氏を次期首相に指名した。EUで4番目の経済規模を誇る同国で数カ月続いた政治空白が幕を閉じる。
次期首相候補のコンテ氏はマッタレッラ大統領と5月31日に今週2度目となる会談を行い、新たな閣僚名簿を提出。マッタレッラ氏はこの名簿を受理した。新政権は6月1日に発足する見通し。
閣僚は主に反体制派政党「五つ星運動」と右派政党「同盟」の両党から選出される。
一部で模索されていた官僚主導の政権を樹立する計画は、失敗に終わった。
マッタレッラ氏はコンテ氏が最初に提出した閣僚候補のうち経済相の候補を支持しなかった。しかし両氏は31日、別の候補を経済相に選ぶことで合意した。
合意された内容
マッタレッラ大統領との会談後、コンテ氏は重要閣僚である経済相の新候補がトルベルガタ大学の経済学教授、ジョバンニ・トリア氏だとの報道を認めた。
五つ星運動のルイジ・ディ・マイオ党首と同盟のマッテオ・サルビーニ書記長は「五つ星運動と同盟による連立政権に向けて全ての条件が満たされた」とする共同声明を発表した。
新内閣の主要閣僚は以下の通り――。
内務相(副首相兼任):マッテオ・サルビーニ(同盟)
産業相(副首相兼任):ルイジ・ディ・マイオ(五つ星運動)
外相:エンツォ・モアベロ・ミラネージ(無所属、元欧州担当相)
防衛相:エリザベッタ・トレンタ(五つ星運動)
欧州担当相:パオロ・サボーナ(無所属)※当初は経済相候補に挙がり、議論を呼んだ
コンテ氏はロイター通信に対し、「既に政権公約に掲げている政治的目標の実現に、我々は集中して取り組む」と述べた。
新政権は1日午後にも発足する見通し。
コンテ氏の首相就任宣誓の式典後、新内閣はイタリア国会の元老院と代議院の両院で信任投票に臨む。国会は五つ星運動と同盟が過半数を占めている。
政治不安は、イタリアにとって珍しいことではない。第2次世界大戦以降、同国では64の政権が発足してきた。
コンテ氏は、これまで民主党や新中道右派などによる連立政権を率いてきたパオロ・ジェンティローニ首相の後を継いで首相の職に就く。
これまでの経緯
3月4日:イタリアで総選挙が行われ、五つ星運動が32%の得票率で勝利した。同盟は同選挙で18%の得票を得た。2つのポピュリスト(大衆迎合主義)政党は連立政権樹立を計画。それまで政治に縁のなかったコンテ氏を次期首相候補に選出した。
5月28日: コンテ氏が新内閣の閣僚リストをマッタレッラ大統領に提出。しかしマッタレッラ氏は、ユーロ懐疑派のサボーナ氏を経済相とする案を却下した。コンテ氏はこれを受けて組閣を断念した。両党は怒りを表明し、五つ星同盟のディ・マイオ党首は議会にマッタレッラ大統領の弾劾を要求した。大統領は国際通貨基金(IMF)の元エコノミスト、カルロ・コッタレッリ氏に、新選挙が実施されるまでの暫定で官僚主導の内閣を組閣するよう要請した。
5月30日: 五つ星運動と同盟が新たな連立協議を始めたため、コッタレッリ氏は暫定政府の組閣作業を中止した。
5月31日: コンテ氏が再び大統領と会談し、新たな閣僚リストを提出。マッタレッラ大統領はこれを受理した。
<解説>終わらないEUとの対立――ジェイムズ・レノルズ BBC(ローマ)
4日間に及ぶ政治的危機、そして憲法上の危機は終わった。新たなポピュリスト政権が今、誕生しようとしている。
最終的に、ポピュリスト2政党は提案を翻し、ユーロ懐疑派を経済相とする当初の組閣案に対する大統領の反対を受け入れた。
両党が新たに選んだ経済相、ジョバンニ・トリア氏は、EU域内の単一通貨「ユーロ」へのイタリアの参加継続を支持している。
ただし、両党とEUとの対立は完全には終結していない。五つ星運動と同盟の両党は、新たな福祉支出と減税を約束しているが、実施すればEUの歳出関連規則に抵触する可能性がある。
同盟のサルビーニ書記長は、内務相に就任する。サルビーニ氏は移民に関する強硬な新政策を公約しており、欧州に議論を巻き起こすかもしれない。
(英語記事 Italy government: Giuseppe Conte to head populist coalition)
ジュゼッペ・コンテ氏(左)はセルジオ・マッタレッラ大統領に新たな閣僚名簿を提出した