公正取引委員会は8月24日、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)と十八銀行の経営統合を承認した。統合問題は2年半越しに決着をみた。
債権譲渡という「苦渋の決断」(ふくおかFG・柴戸隆成社長)をし、1月時点で75%あった長崎県内の中小企業向けシェアが65%まで下がるとはいえ、占有率は依然として高いままで合併が認められた。
そのため、金融界では両社の統合を「長崎モデル」と呼んでいる。
今後、地域金融機関の再編はどうなるのか。
金融庁主導で金融再編が進む可能性は高まった。これまで、「笛吹けども踊らず」状態の地銀・第二地銀が多かったが、これからは金融庁の再編圧力に屈せざるを得なくなるとみられている。
4月11日、金融庁の有識者会議が出した「地域金融の課題と競争のあり方」と題するリポートで、衝撃的な将来の予測が描かれている。
そこでは、2016年3月末のデータを使い、各道府県で本業の採算が取れて、存続可能の地銀数を試算した。ちなみに、東京都は規模が大きく試算できず、対象から外した。
「2行が存続できる」のは宮城、神奈川、愛知、大阪、福岡など10府県。「1行なら存続可能」は北海道、京都、愛媛、熊本など13道府県。
「1行でも存続困難」は青森、富山、和歌山、島根、宮崎など23県となった。長崎は、もちろん23県のなかに入っていた。
将来は、人口減少や過疎化が一段と進む。不良債権処理に苦しんだ金融危機当時とは置かれた経済環境がまったく違う。
地域金融機関は超低金利(マイナス金利)と人口減少に伴う市場の縮小に直面している。
公取委は地銀再編を3種類に分けている。14年に経営統合した八千代銀行と東京都民銀行のような「大都市下位行型」。
15年の鹿児島銀行と肥後銀行のように県をまたいだ「広域連携型」。そして今回の十八銀行と親和銀行のような県内有力行同士の「強者連合型」だ。
新潟県の第四銀行と北越銀行の経営統合も「強者連合型」となる。統合後のシェアは55%に達するが、債権譲渡などを行わずに統合が認められた。
今後の県内有力行同士の「強者連合型」では、債権譲渡という「長崎モデル」が切り札として使われることになるとみられている。
●次の再編のシナリオ
「長崎モデル」が認められたことで、地銀の勢力図が大きく変わる可能性は高い。九州から海をまたぎ、中国・四国地方などの有力地銀をも巻き込む“国盗り合戦”に発展することもあり得る。
九州・山口には、ふくおかFG(福岡銀行、熊本銀行、親和銀行、十八銀行)、西日本フィナンシャルホールディングス(西日本シティ銀行、長崎銀行)、
九州フィナンシャルグループ(肥後銀行、鹿児島銀行)、山口フィナンシャルグループ(山口銀行、もみじ銀行、北九州銀行)の広域金融グループがある。
単独で生き残ってきた佐賀銀行、宮崎銀行、大分銀行が再編のターゲットとなるとみられる。
福島県も焦点のひとつだ。金融庁は、3月期決算で7年ぶりに赤字に転落した第二地銀の福島銀行に業務改善命令を出した。
法令違反をしたわけではないのに、業務改善命令を出すのは極めて異例だ。金融庁による“再編圧力”と受け止められている。
福島県下の勢力図は、地銀の東邦銀行が断トツ。県内シェアは預金で45%、貸し出しは40%台と圧倒的だ。だが、東邦銀行に弱小第二地銀を合併する気持ちはない、とされてきた。
福島の第二地銀、福島銀行と大東銀行の統合が再浮上してくる。マンション分譲など不動産が中心の
プロスペクト系の米プロスペクト・アセット・マネジメント・インク(名義はプロスペクト・ジャパン・ファンド)が福島銀行の19.8%、大東銀行の16.4%の株式を保有している(18年3月末)。再編のキーマンとみられている。
金融庁は、シェアハウスなど不動産投資向け融資で組織的な不正が認定されたスルガ銀行に対して、週内にも業務改善命令に加え一部業務停止命令の行政処分を下すとみられている。
横浜銀行と東日本銀行を傘下に持つコンコルディア・フィナンシャルグループ(FG)との統合が現実のものになりつつある。
「コンコルディアFGがスルガ銀行を吸収する」という話は、スルガ銀行の融資スキャンダルが発覚して以来、横浜銀行の内部から聞こえてきた。
https://biz-journal.jp/2018/10/post_25040.html
2018.10.10
債権譲渡という「苦渋の決断」(ふくおかFG・柴戸隆成社長)をし、1月時点で75%あった長崎県内の中小企業向けシェアが65%まで下がるとはいえ、占有率は依然として高いままで合併が認められた。
そのため、金融界では両社の統合を「長崎モデル」と呼んでいる。
今後、地域金融機関の再編はどうなるのか。
金融庁主導で金融再編が進む可能性は高まった。これまで、「笛吹けども踊らず」状態の地銀・第二地銀が多かったが、これからは金融庁の再編圧力に屈せざるを得なくなるとみられている。
4月11日、金融庁の有識者会議が出した「地域金融の課題と競争のあり方」と題するリポートで、衝撃的な将来の予測が描かれている。
そこでは、2016年3月末のデータを使い、各道府県で本業の採算が取れて、存続可能の地銀数を試算した。ちなみに、東京都は規模が大きく試算できず、対象から外した。
「2行が存続できる」のは宮城、神奈川、愛知、大阪、福岡など10府県。「1行なら存続可能」は北海道、京都、愛媛、熊本など13道府県。
「1行でも存続困難」は青森、富山、和歌山、島根、宮崎など23県となった。長崎は、もちろん23県のなかに入っていた。
将来は、人口減少や過疎化が一段と進む。不良債権処理に苦しんだ金融危機当時とは置かれた経済環境がまったく違う。
地域金融機関は超低金利(マイナス金利)と人口減少に伴う市場の縮小に直面している。
公取委は地銀再編を3種類に分けている。14年に経営統合した八千代銀行と東京都民銀行のような「大都市下位行型」。
15年の鹿児島銀行と肥後銀行のように県をまたいだ「広域連携型」。そして今回の十八銀行と親和銀行のような県内有力行同士の「強者連合型」だ。
新潟県の第四銀行と北越銀行の経営統合も「強者連合型」となる。統合後のシェアは55%に達するが、債権譲渡などを行わずに統合が認められた。
今後の県内有力行同士の「強者連合型」では、債権譲渡という「長崎モデル」が切り札として使われることになるとみられている。
●次の再編のシナリオ
「長崎モデル」が認められたことで、地銀の勢力図が大きく変わる可能性は高い。九州から海をまたぎ、中国・四国地方などの有力地銀をも巻き込む“国盗り合戦”に発展することもあり得る。
九州・山口には、ふくおかFG(福岡銀行、熊本銀行、親和銀行、十八銀行)、西日本フィナンシャルホールディングス(西日本シティ銀行、長崎銀行)、
九州フィナンシャルグループ(肥後銀行、鹿児島銀行)、山口フィナンシャルグループ(山口銀行、もみじ銀行、北九州銀行)の広域金融グループがある。
単独で生き残ってきた佐賀銀行、宮崎銀行、大分銀行が再編のターゲットとなるとみられる。
福島県も焦点のひとつだ。金融庁は、3月期決算で7年ぶりに赤字に転落した第二地銀の福島銀行に業務改善命令を出した。
法令違反をしたわけではないのに、業務改善命令を出すのは極めて異例だ。金融庁による“再編圧力”と受け止められている。
福島県下の勢力図は、地銀の東邦銀行が断トツ。県内シェアは預金で45%、貸し出しは40%台と圧倒的だ。だが、東邦銀行に弱小第二地銀を合併する気持ちはない、とされてきた。
福島の第二地銀、福島銀行と大東銀行の統合が再浮上してくる。マンション分譲など不動産が中心の
プロスペクト系の米プロスペクト・アセット・マネジメント・インク(名義はプロスペクト・ジャパン・ファンド)が福島銀行の19.8%、大東銀行の16.4%の株式を保有している(18年3月末)。再編のキーマンとみられている。
金融庁は、シェアハウスなど不動産投資向け融資で組織的な不正が認定されたスルガ銀行に対して、週内にも業務改善命令に加え一部業務停止命令の行政処分を下すとみられている。
横浜銀行と東日本銀行を傘下に持つコンコルディア・フィナンシャルグループ(FG)との統合が現実のものになりつつある。
「コンコルディアFGがスルガ銀行を吸収する」という話は、スルガ銀行の融資スキャンダルが発覚して以来、横浜銀行の内部から聞こえてきた。
https://biz-journal.jp/2018/10/post_25040.html
2018.10.10