毎日新聞 2019年1月20日 12時26分(最終更新 1月20日 16時11分)
新潟県糸魚川市の石の博物館「フォッサマグナミュージアム」で2月3日まで開催中の「翡翠(ひすい)展」に、日本産では最上質の糸魚川のヒスイを使ったペンダントと指輪が展示されている。所有者は同市東寺町1の井合作蔵さん(91)で、一般公開は14年ぶりだ。井合さん宅は2016年12月の糸魚川大火で全焼したが、この2点は奇跡的に残った。【浅見茂晴】
井合さんがこのヒスイを手に入れたのは1960年前後。同市を流れる青海川上流で採取されたヒスイといわれ、大きめのキャラメル大にカットされた15点が持ち込まれ、購入した。色むらなく、色鮮やかで、ひびもなく最上質だった。
ペンダント(縦2.1センチ、横1.6センチ、厚さ0.8センチ)と指輪(縦1・8センチ、横1・2センチ、厚さ0・8センチ)に加工してもらい、妻の和加さん(88)が愛用してきた。
このヒスイは、国立科学博物館で04年11月〜05年2月に開かれた特別展「翡翠展 東洋の至宝」(国立科学博物館、毎日新聞社主催)で注目を集めた。初めて一般に公開され、図録の表紙を飾るなど展示物の顔として脚光を浴びた。それ以降長らく一般公開を認めてこなかった。
転機は16年の大火。井合さん宅は全焼、掛け軸などのコレクションもほとんどが燃えた。自宅金庫も長時間高熱にさらされたことで、中身が炭化したり変色したりしていた。長い年月をかけて集めたコレクションの数々を失ったことで、井合さんは途方に暮れた。しかし、2点のヒスイは例外だった。金庫内の奥深くに箱詰めしていたのが功を奏し、全くの無傷で発見された。家族の祝い事などで和加さんが身に着けてきた、思い出の詰まったヒスイ。ヒスイの無事が、井合さんの救いになったという。
今回の一般公開は昨年秋、ヒスイが無事だったことを知った同ミュージアムの宮島宏・上席学芸員が出展を要請、快諾を得て実現した。井合さんは「トロッとした感じの『ろうがん』と呼ばれる最高級のヒスイを見てほしい」と話している。
https://mainichi.jp/articles/20190120/k00/00m/040/072000c