「日本の医療水準にばらつき」海外の旅行ガイドブック、大学病院を推奨 軽症者受診に懸念
毎日新聞2019年2月21日 12時12分(最終更新 2月21日 12時20分)
https://mainichi.jp/articles/20190221/k00/00m/030/079000c
海外の旅行ガイドブックが日本の医療機関をどう紹介しているか観光庁が調査したところ、「医療水準にばらつきがある」などとして、先端医療を行う大学病院を勧める記述が見つかった。風邪などの軽症患者まで大学病院に詰めかけると、重篤な患者の救命に支障が出かねない。2020年の東京五輪・パラリンピックで訪日外国人が増加することも踏まえ、国は出版社に詳しく情報提供することを検討している。
観光庁は2017年度、欧米やアジアのガイドブックを調べた。調査報告書によると、英語圏の代表的なガイドブック「ロンリープラネット」は、日本の医療について「離島以外、すべての地域に医療機関がある」と説明。ただし「水準にばらつきがあり、クリニック(診療所)より大学病院や総合病院の方が良い」と紹介しており、報告書は「事実誤認」だと指摘した。診療所や小さな病院でも、慢性疾患などで質の高い医療を提供しているからだ。
マレーシアのガイドブックも、英語が通じる東京の医療機関として3病院を紹介したが、高度医療に特化した特定機能病院や救急救命センターのある病院などだった。
ロンリープラネットの広報担当者は取材に対し、「現在は大学病院の方が良いという考え方は取っていない。英語が通じる医療機関を紹介し、大学病院も含まれていることがある」と回答。「大病院志向」の背景には、日本の多くの医療機関で外国語対応が進んでいない事情もある。
東京都内の大学病院では、夜間、風邪や転倒による軽いけがなどで受診する外国人も実際に多い。厚生労働省は新年度、医療通訳配置などに補助金を設け、軽症の外国人患者を受け入れられる医療機関を増やす方針だ。【熊谷豪】
海外のガイドブックの記述例と観光庁報告書の評価
・「(医療機関の)水準にばらつきがあり、クリニックより大学病院などの方が良い」(事実誤認)
・「日本の医師は外国人の診療に消極的」(過剰な表現)
・「医療保険の証明書がないと、外国人の診療を拒否する」(同)
・「東京には外国人のための医療機関がある」(病院名を挙げていない)