毎日新聞 2019年3月11日 19時38分(最終更新 3月11日 20時28分)
https://mainichi.jp/articles/20190311/k00/00m/040/177000c
シベリアの永久凍土で見つかった約2万8000年前のマンモスの化石の細胞から核を取り出し、
マウスの卵子に移植したところ、細胞分裂の初期の動きが観察されたと、近畿大などの研究チームが11日、発表した。
研究チームは「生命現象が見られたことは有意義な一歩」と説明している。成果は同日、英科学誌サイエンティフィック・リポーツ電子版に掲載された。
2010年にロシア極東・サハ共和国で冷凍状態で発掘された子供のマンモス「ユカ」の化石。
細胞核が機能を残しているか調べるため、保存状態の良い筋肉細胞の核を移植した。
核にはDNAが納められ、細胞分裂の直前、染色体ができたり、細い管の束に引っ張られて分かれたりする。
ユカの細胞核を移植したマウスの卵細胞24個を観察した結果、21個で染色体を作るたんぱく質が
核の周りに集まり始め、うち5個で管の束を作るたんぱく質が集まる動きも観察できたという。
しかし、どの細胞も細胞分裂に至らなかった。DNAの損傷が激しく、分裂が止まった可能性があるという。
研究は近畿大が取り組む「マンモス復活プロジェクト」の一環。
マンモスの細胞核を象の卵子に移植し、マンモスの遺伝子を持つ受精卵を作製。
象の子宮に移植してマンモスを誕生させる目標を掲げる。
チームの黒坂哲・近大講師(発生生物学)は「より保存状態の良いマンモスの発見を期待したい」と話している。
◇ マウスの卵子を顕微鏡で観察した画像。移植したマンモスの細胞核(右上)の周りに染色体を作るたんぱく質(赤)や分裂を促す管の束を作るたんぱく質(緑)が集まり始めた=近畿大提供
◇ 筋肉細胞から核を取り出したマンモス「ユカ」の化石=近畿大提供