「平成」飛んだ翼退役=威信懸けた「時間厳守」−政府専用機、初任務から26年
「空飛ぶ官邸」とも呼ばれる政府専用機が3月、平成の終わりと共に
退役を迎える。1993(平成5)年から任務を開始し、首相や皇族を
乗せて世界中を飛んだ。時に歴史的な瞬間を迎える舞台へと要人を運ぶ
重責を担ったのは、パイロットから客室乗務員、整備員まで、すべて
航空自衛隊員だ。常に心掛けたのは安全な航行に加え、日本が世界に
誇る「正確さ」だった。
明瀬時定3等空佐(44)は、着陸などの時間を管理するナビゲーターを
務めた。民間の旅客機にはいない役割で、「分単位で動く総理の予定は
変えられない」と重要性を語る。早く到着しそうな場合は、高度を
変えてわざと向かい風を受けることもあるという。
パイロットは民間旅客機では決して行わない連続離着陸
(タッチアンドゴー)の訓練もする。発着時の振動を軽減させる技量を
磨くためで、高い技術は海外からも評価されている。パイロットを
務めていた滝島真之3佐(40)は「『なぜ、日本の政府専用機は
あれほどきれいに着陸できるのか』と聞かれた」と胸を張る。
客室乗務員に当たるロードマスターを9年間務めた女性空曹長は
「民間と違い、スタッフは常に同じメンバーなので、あうんの呼吸が
通じる」と話す。「乗客」の状況を観察し、あえて何もサービスを
しないことがあるという。「VIPにとって休める時間は移動だけの
こともある」と語る。
政府専用機は2機あり、1機は不測の事態に備え予備機として
同行する。2002、04年の小泉純一郎首相(当時)の訪朝時にも
使用。拉致被害者家族5人は予備機で帰国した。
要人以外が乗ることもある。16年にバングラデシュの首都ダッカで
発生したテロ事件では、犠牲になった7人の邦人の遺体を帰国させた。
同乗した山下健3佐(44)は「個人的な感情を出さないよう、冷静に
なるように努めた」と振り返った。
退役する初代の後任として、ボーイング社の777−300ER型機を
ベースとする2代目の政府専用機が4月から運用を開始。引き続き
空自が管理・運航を担当する。
時事通信社(2019年03月16日12時59分)
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