毎日新聞 2019年4月23日 21時00分(最終更新 4月23日 21時00分)
https://mainichi.jp/articles/20190423/k00/00m/040/209000c
佐賀大医学部の中山功一教授(臓器再生医工学)らの研究チームが、細胞を使って立体的な組織を作り出す
「バイオ3Dプリンター」を使って作製した人工血管を人工透析の患者に移植する臨床研究計画を蒲郡(がまごおり)市民病院(愛知県)の審査委員会に申請した。
中山教授によると、皮膚の細胞だけを使ってバイオ3Dプリンターで作製した生体組織の移植は世界的に珍しいという。
今回の研究では、渋谷工業(金沢市)が開発し、医療ベンチャー「サイフューズ」(東京都)が販売するバイオ3Dプリンターを使用。
まず患者の皮膚の細胞を培養し、約1万個の細胞の塊を作製。
血管の三次元データに基づいて、この塊を生け花に使う剣山のような土台に串刺しにする。
数日間で細胞が互いにくっつき、長さ約5センチ、直径約5〜6ミリの人工血管ができる。
人工血管は、人工透析の患者が血液浄化のために使う血管の分路(シャント)と置き換える。
既存のシャントは樹脂製で内部が詰まって血流が悪くなるなどの不具合が起こることがあるが、人工血管に替えれば血流が改善されるとみられる。
研究チームは半年ほどかけて安全性や効果を確かめ、佐賀大医学部で患者3〜5人に移植する予定。
中山教授は「人間の細胞だけで作られた人工血管は感染症を起こしにくく、透析で繰り返し注射針を刺されても自己再生できる」と話している。
◇ バイオ3Dプリンターで作った人工血管=中山功一・佐賀大教授提供
◇ 細胞を積み重ねる際に使う針山のような装置=佐賀市の佐賀大で2019年4月23日午後5時29分、竹林静撮影