ソニーが26日に発表した2019年3月期の連結決算は、営業利益が前の期比22%増の8942億円と2年連続で最高益を更新した。ゲームや音楽などエンターテインメント領域はデジタルで稼ぐ形が定着し、エレクトロニクス事業は事業モデルの転換で採算が改善した。安定的にキャッシュを稼ぐ形は整いつつあるが、株式市場は「安定の先」を求め始めている。
「各事業の手応えを感じる1年だった」と十時裕樹最高財務責任者(CFO)は同日の記者会見で話した。
営業利益の35%を稼いだゲーム事業では、主力の「プレイステーション4」のソフト販売に占めるダウンロードの比率は37%と2年前より10ポイントも高まった。好採算のダウンロードの拡大に加え、前期は「スパイダーマン」など利幅が厚い自社タイトルのヒットもあり、ゲーム事業の売上高営業利益率は13%と前の期から4ポイント改善した。
テレビやデジタルカメラなどエレクトロニクス事業も安定してきた。規模を追うのをやめ、効率重視で生産や販売を見直した効果が出ている。
キャッシュを生み出す力は着実に高まった。金融事業を除く営業キャッシュフロー(現金収支)は前期で7534億円となり、直近3年の累計額は約2兆円に迫った。十時氏は26日に半導体での工場増設にも言及した。
だが、市場の評価は辛い。株価は18年9月に付けた高値(6973円)から2割強安い。一因は成長期待の乏しさだ。ストリーミング拡大で音楽事業に成長余地があるが、競合がひしめくなかで突出した伸びは期待できない。映画も競争は厳しく、ミラーレスカメラも市場自体が頭打ちだ。
映画やゲーム、半導体など様々な事業を抱える複雑さが評価を難しくしている。モルガン・スタンレーMUFG証券の小野雅弘氏は「株価は明らかにディスカウントされている」と指摘する。
今月上旬には米ヘッジファンドのサード・ポイントがソニー株を取得したと伝わった。ロイター通信によると、サード・ポイントはソニーに映画事業の売却を検討するように求めているという。複雑さによるディスカウントに着眼し、隠れた価値を掘り起こそうという意図が透けて見える。十時CFOはこの日の会見で、サード・ポイントの株取得については具体的コメントを避けた。
20年3月期の連結営業利益は前期比9%減の8100億円を見込む。前期に計上した音楽事業での保有株の再評価益が無くなることが響く。営業減益は3期ぶりとなり、投資家にはソニーの成長神話の陰りと映る。
2019/4/26 22:10
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44266620W9A420C1TJC000/