https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/051700280/
■「マグマオーシャン説」を裏付ける可能性、嫦娥4号ミッション
2019年が明けて早々、中国は史上初めて月の裏側に探査機を着陸させるという快挙を成し遂げた。
その月面探査機「嫦娥(じょうが)4号」が、早くも新たな成果をあげた。月のマントル物質らしき岩石を初めて発見したのだ。
嫦娥4号に搭載された月面探査車「玉兎(ぎょくと)2号」は、着陸地点であるフォン・カルマン・クレーター内の鉱物を、その種類を調べる分光計を使って分析した。
すると、月の地殻に含まれる典型的な物質とは異なる、2種類の鉱物を豊富に含む層を発見した。
5月15日付けで学術誌「ネイチャー」に論文を発表した著者らは、これらの鉱物は月の上部マントルに由来する物質である可能性が高いと主張している。
それが本当だと確認されれば、月の内部のしくみを明らかにする研究にとって、大きな前進となるだろう。
月の形成と進化をめぐる長年の謎を解き明かすのに役立つ可能性が高い。
「本物のマントルだとすれば、実にクールな発見です」と大英自然史博物館で惑星科学の教授を務めるサラ・ラッセル氏は言う。
月について我々が知っていることの多くは、半世紀前にアポロ計画が持ち帰った、月の表側の岩石サンプルから得られたものだ。
非常に貴重だが、月面上のほんの限られた地域で採集されているため、月の起源や現在の地質活動の全容を教えてくれはしない。
さらに謎に包まれているのが、月のマントルだ。
地殻の下にある固体のマントルは、かつてはもっと高温で流動性があった。科学者たちは何十年も前から月のマントルのサンプルを欲しがっていた。
ラッセル氏は、今回のサンプルが本物の月のマントル物質であるなら、「パズルの重要なピース」がようやく見つかったことになると言う。
一方で、今回のチームによる主張を現時点では半信半疑で受け止めている研究者もいる。
米ノートルダム大学の月地質学の専門家であるクライブ・ニール氏は、「ワクワクするような一歩です」と賞賛するものの、
今回の結果については、別の解釈を検討してからでないと断定はできないと言う。
■歴史を掘り起こした隕石衝突
嫦娥4号のミッションが前代未聞なのは間違いない。
月の裏側への輸送や通信などは困難であり、これまでに月面着陸を成功させている米国も旧ソ連も、表側にしか着陸していないからだ。
中国は、月の裏側で探査機を走らせている最初で唯一の国だ。嫦娥4号の着陸地点であるフォン・カルマン・クレーターは、南極エイトケン盆地の真ん中にある。
この盆地は、太陽系でも最大級の衝突クレーターであり、直径が約2500kmもある。
中国国家航天局(CNSA)がここを着陸地点に選んだ理由の1つは、月のマントル物質探しにうってつけの場所だからだ。
「隕石の衝突で月の地殻が吹き飛ばされ、その下のマントル物質がむき出しになったはずだということを、数値モデルは示しています」と説明するのは、
米サウスウエスト研究所の惑星科学者ビル・ボトキ氏だ。
「月のマントル物質を見つけたいなら、南極エイトケン盆地に行くのがいちばんなのです」とラッセル氏も補足する。
科学者たちは、誕生したばかりの月はマグマの海(マグマオーシャン)に覆われていたのではないかと考えている。
月がしだいに冷え固まってくると、比較的密度の高い鉱物は深いところに残り、密度の低い鉱物は表面に浮かび上がった。
その結果、マントルになる層と地殻になる層は、別々のものになった。いわゆる「マグマオーシャン説」だ。
分光計を搭載した玉兎2号は、フォン・カルマン・クレーター内を走り回るうちに、低カルシウム輝石とカンラン石という、2つの成分を含んでいそうな岩石を発見した。
これらの成分は、月の上部マントルに含まれていると予想される物質とよく一致している。
論文の研究チームによる推測はこうだ。まず、大きな衝突で南極エイトケン盆地が形成されたときに、月の表面全体にマントル物質が撒き散らされた。
その後、それより小規模な衝突によって、南極エイトケン盆地の中にフィンセン・クレーターが形成された。
このとき、以前の大きな衝突で掘り起こされていたマントル物質が、すでに近くにできていたフォン・カルマン・クレーター内に放り込まれた、というシナリオだ。
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■「マグマオーシャン説」を裏付ける可能性、嫦娥4号ミッション
2019年が明けて早々、中国は史上初めて月の裏側に探査機を着陸させるという快挙を成し遂げた。
その月面探査機「嫦娥(じょうが)4号」が、早くも新たな成果をあげた。月のマントル物質らしき岩石を初めて発見したのだ。
嫦娥4号に搭載された月面探査車「玉兎(ぎょくと)2号」は、着陸地点であるフォン・カルマン・クレーター内の鉱物を、その種類を調べる分光計を使って分析した。
すると、月の地殻に含まれる典型的な物質とは異なる、2種類の鉱物を豊富に含む層を発見した。
5月15日付けで学術誌「ネイチャー」に論文を発表した著者らは、これらの鉱物は月の上部マントルに由来する物質である可能性が高いと主張している。
それが本当だと確認されれば、月の内部のしくみを明らかにする研究にとって、大きな前進となるだろう。
月の形成と進化をめぐる長年の謎を解き明かすのに役立つ可能性が高い。
「本物のマントルだとすれば、実にクールな発見です」と大英自然史博物館で惑星科学の教授を務めるサラ・ラッセル氏は言う。
月について我々が知っていることの多くは、半世紀前にアポロ計画が持ち帰った、月の表側の岩石サンプルから得られたものだ。
非常に貴重だが、月面上のほんの限られた地域で採集されているため、月の起源や現在の地質活動の全容を教えてくれはしない。
さらに謎に包まれているのが、月のマントルだ。
地殻の下にある固体のマントルは、かつてはもっと高温で流動性があった。科学者たちは何十年も前から月のマントルのサンプルを欲しがっていた。
ラッセル氏は、今回のサンプルが本物の月のマントル物質であるなら、「パズルの重要なピース」がようやく見つかったことになると言う。
一方で、今回のチームによる主張を現時点では半信半疑で受け止めている研究者もいる。
米ノートルダム大学の月地質学の専門家であるクライブ・ニール氏は、「ワクワクするような一歩です」と賞賛するものの、
今回の結果については、別の解釈を検討してからでないと断定はできないと言う。
■歴史を掘り起こした隕石衝突
嫦娥4号のミッションが前代未聞なのは間違いない。
月の裏側への輸送や通信などは困難であり、これまでに月面着陸を成功させている米国も旧ソ連も、表側にしか着陸していないからだ。
中国は、月の裏側で探査機を走らせている最初で唯一の国だ。嫦娥4号の着陸地点であるフォン・カルマン・クレーターは、南極エイトケン盆地の真ん中にある。
この盆地は、太陽系でも最大級の衝突クレーターであり、直径が約2500kmもある。
中国国家航天局(CNSA)がここを着陸地点に選んだ理由の1つは、月のマントル物質探しにうってつけの場所だからだ。
「隕石の衝突で月の地殻が吹き飛ばされ、その下のマントル物質がむき出しになったはずだということを、数値モデルは示しています」と説明するのは、
米サウスウエスト研究所の惑星科学者ビル・ボトキ氏だ。
「月のマントル物質を見つけたいなら、南極エイトケン盆地に行くのがいちばんなのです」とラッセル氏も補足する。
科学者たちは、誕生したばかりの月はマグマの海(マグマオーシャン)に覆われていたのではないかと考えている。
月がしだいに冷え固まってくると、比較的密度の高い鉱物は深いところに残り、密度の低い鉱物は表面に浮かび上がった。
その結果、マントルになる層と地殻になる層は、別々のものになった。いわゆる「マグマオーシャン説」だ。
分光計を搭載した玉兎2号は、フォン・カルマン・クレーター内を走り回るうちに、低カルシウム輝石とカンラン石という、2つの成分を含んでいそうな岩石を発見した。
これらの成分は、月の上部マントルに含まれていると予想される物質とよく一致している。
論文の研究チームによる推測はこうだ。まず、大きな衝突で南極エイトケン盆地が形成されたときに、月の表面全体にマントル物質が撒き散らされた。
その後、それより小規模な衝突によって、南極エイトケン盆地の中にフィンセン・クレーターが形成された。
このとき、以前の大きな衝突で掘り起こされていたマントル物質が、すでに近くにできていたフォン・カルマン・クレーター内に放り込まれた、というシナリオだ。
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