https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190618-00010000-tssg-l34
今月7日、広島県内では未明からの大雨で、5段階の警戒レベルのうち、危険性が2番目に高い「警戒レベル4」
=避難勧告が全国で初めて発令された。
しかし避難対象者46万1214人のうち、実際に避難したのは775人で0.17%にとどまった。
県内130人以上が犠牲になった西日本豪雨から11か月、なぜ県民は逃げなかったのか?
全国で初めて発令された「警戒レベル4」の波紋
今月7日の「警戒レベル4」、逃げなかった人の声を聞いた。
「(エリアメールは)来てました。でも逃げてない。雨があまり強くなかったのでいいかなと思ってしまって」
「(何か行動は?)何もしていない。ばあちゃんは高齢なのでどこにいったらいいのだろうと言っていた。避難もしていないと思う。」
避難対象者のうち、実際に避難したのは0.17%。これを受け、湯崎英彦広島県知事は「平素から周囲の方々としっかり話をして、
できれば声を掛けあって避難するようにして欲しい」と振り返った。
梅雨入りを前に運用が開始された、大雨時の防災情報を発表する際に5段階の警戒レベルをあわせて伝える新制度。
「警戒レベル3」で高齢者などいわゆる災害弱者の避難を呼びかけ「警戒レベル4」では全員避難を促す。
しかし、広島市が西日本豪雨後に行ったアンケートではレベル4にあたる「避難勧告」の情報を認識していたと答えた一方、
実際に避難した人はおよそ2割にとどまった。
この問題に専門家は警鐘を鳴らす。
広島経済大学の松井一洋教授は「避難勧告が出たからみなさん逃げましょう。なんてこれからの望ましい地域防災などと決して言えない。
避難勧告が出る前にたくさんの人たちが逃げるんだということこそが私たちの目的とする地域防災のあり方」と指摘する。
逃げようと思ったときには遅かった、西日本豪雨の記憶
早期避難の重要性は災害が起こるたびに指摘され続けてきた。先月8日。去年の豪雨災害で大きな被害を受けた
坂町小屋浦地区である説明会が開かれた。
「自主防災組織による避難を呼びかける態勢づくりというモデル事業を今年度行うこととした」(広島県消防保安課倉迫昭宏課長)
広島県が進めているのは自主防災組織を使った効果的な早期避難の呼びかけの態勢作りで、まず県内11の市や町を
モデル地区としその後全域に波及させようとしている。小屋浦地区に住む出下一教さんも特別な思いを持ってこの説明会を受けていた。
昨年7月、坂町小屋浦地区では、豪雨によって15人が犠牲となり、今も1人が行方不明となっている。流れ込んできた土砂が町に流入し、
集落全体を飲み込んでしまった。出下さんも当時の恐怖を振り返る。
「水がすごい勢いで流れて石が一緒にゴロゴロ音がしてたので道を横切って行かれない」
家が濁流に挟まれ身動きが取れずさらに電気も消えてしまい、ただ家の中で待つことしかできなかった。
「特別警報がでた。その時にはもう遅かった避難するには。避難勧告がでた時点で避難するのが早めの避難がよかったのではないかと今になったら思う」
いつ自分や家族が被害にあってもおかしくなかった。その苦い経験から出下さんは今回のモデル地区の取りまとめに自ら進んで立候補した。
【図上訓練】
「平時のときでもここは逃げる道がない」
間もなく迎える梅雨。
小屋浦でも急ピッチで声かけ避難の態勢づくりが行われていた。出下さんたちが行っているのは図上訓練。
どんな自然環境で街が作られているかを確認し避難所までの経路と所要時間を把握することができる。
「被害の大きかったところは関心が高い。他地区の方にも何回も言うが、早めの避難を心掛けて。
明るいうちにとにかく早く逃げるというのが大切だと伝えたい」