静岡県、公道で自動運転実験スタート 信号制御しスムーズ運行
2019/8/22 13:00
静岡県は12月から、公道を使った自動運転実験をスタートする。目玉は同県沼津市で自動運転バスを使い、信号機を制御しながらスムーズな運行を検証する取り組みだ。停留所に定刻通りに到着し、より運行頻度を高められるかどうかをテストする。沼津市のほか下田市、松崎町でも実験し、自動運転の先進県を目指す。
公道での自動運転で課題となっているのは、信号機や交差点での停止、一般車両や通行人の安全性の確保だ。22日、県が発表した実証実験「しずおか自動運転ShowCASEプロジェクト」の計画は、これらの課題を重点的に取り組む姿勢を鮮明にしている。
沼津市の実験は2020年1月から開始する。同市が18年10〜11月に試験運行した、沼津駅から沼津港を結ぶ直線バスの仕組みを活用。自動運転を導入して、バスを優先させる信号制御機能を検証する。
自動運転バスから全地球測位システム(GPS)による位置情報を送信し、交通管制システムが到着時刻を予想して信号機を制御する。これによりバスが信号機に近づくと、位置情報から信号が送られ、「青」に変わる。県によると、国内では初の取り組みという。
プロジェクトには交通事業者の東海バス、伊豆箱根バスのほか、小糸製作所、群馬大学などが参画。約2.2キロの区間にある5つの信号機を制御し、渋滞など一般車両への影響や、定刻通りの輸送が可能かどうかをテストする。
下田市では12月から、下田メディカルセンター、伊豆急下田駅、道の駅・開国下田みなとの3カ所を小型車が自動走行する。観光客や地元住民のニーズの高い場所をつなぎ、運転手不足のタクシーや自家用車の利用からの転換を促す。
同市では東京急行電鉄とJR東日本が今年春から、次世代移動サービス「MaaS(マース)」の実験に取り組んでいる。鉄道やバス、乗り合いタクシーなど多様な交通手段の検索や予約、決済を一括で提供するサービスに、自動運転車両も組み込んで利便性を検証する。
松崎町では町役場、スーパー、病院などが集まる地域と過疎集落の八木山地区を結ぶ。乗客1人が乗れる超小型車両を使い、センターラインがない狭い道路も通行する。対向車とのすれ違いをスムーズにできるかなどを検証する。もともと路線バスはあるものの、運転手の高齢化が課題となっており、山間部の住民の生活交通の確保につなげる。
今回の実験は全て、運転手が乗りながら一定の条件下でシステムに運転を任せることができる「レベル3」で行う。観光地や過疎部など幅広く検証するが、いずれも将来的にはビジネスとして成立することを目指す。輸送機器産業が集積する静岡で、自動運転の先進県に向けた取り組みが走り出す。
(安芸悟)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48849200S9A820C1L61000/?n_cid=TPRN0003