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陸上イージス、なぜ秋田 地元紙社長は鉛筆を手に取った
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編集委員・藤田直央
2019年9月25日18時0分
新型兵器イージス・アショアの配備計画に揺れる秋田県。候補地を打診した政府に対し、地元の反発は強い。何が起きているのか。記者が歩くと、地元紙の強い「意思」が伝わってきた。
たじろぐ防衛省 祭りの山車にも「ここにはいらね」
地元紙の名前は、秋田魁(さきがけ)新報。防衛省のずさんな調査のスクープや東欧の配備先ルポなどが読まれ、議論を喚起している。一連の報道は今年度の新聞協会賞を受けた。今、勢いのある新聞だ。
後押しをしたのが異例の社長論文「兵器で未来は守れるか」だった。昨年7月16日付の朝刊1面に載り、現場の記者を驚かせた。
当時の社長で記者出身の小笠原直樹相談役(68)を秋田市の本社に訪ねた。「社長が言ったら現場はなにくそと反発するのがむしろ社風かな。自分もそうしてきた」と笑顔で取材に応じた。
論文を書いたのは、秋田市への配備を「安倍1強の政治主導で押しきられる」という危機感からだった。「防衛計画の大綱にないアショアの話が急に浮上し、導入が一昨年末に閣議決定された。県民は、なぜ必要なの、秋田市なのという疑問を抱いていました」
防衛省の地元説明より報道が先行し、同紙では社説が態度を決めかねる中、2018年7月中旬に報じた地元国会議員アンケートで自民党の面々の「どちらかといえば賛成」という回答が並んだ。小笠原さんはその朝刊を見るや鉛筆で原稿を書き上げ、パソコンで打ち直して編集部門の責任者に届けた。
経営は編集に介入すべきでない…
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