二酸化炭素排出量を規制する取り組みの一つである排出量取引(キャップ・アンド・トレード)制度では、カーボン・オフセット・クレジットが中核となっている。しかし、カーボン・オフセットでは二酸化炭素排出の削減量を過大評価していることが多く、気候変動対策としては欠陥のある方法だという最新の証拠がカリフォルニア州の制度で示された。
■候変動対策として炭素排出量を抑制するカリフォルニア州のプログラムが、炭鉱の寿命を延ばしたり、温室効果ガスをはるかに大量に発生する作物への切り替えを農家に促したりといった意図に反した影響をもたらす可能性がある。
カリフォルニア大学バークレー校、スタンフォード大学およびその他の機関の研究者がまとめた新しい調査報告書では、カリフォルニア州で始まったばかりのカーボン・オフセット・プログラムにおけるこうした逆効果をもたらすインセンティブのリスクに対する警告が示された。この種のオフセット・プログラムが、達成された排出削減量を水増しし、さらには気候汚染全体を促進してしまう可能性があることを示す、まさに最新の証拠となっている。
カリフォルニア州は排出量取引(キャップ・アンド・トレード)制度により、産業が排出できる温室効果ガスの量を厳しく制限している。カーボン・オフセットはその中核となるものだ。同州の主要な汚染者は、排出権を売買することにより、その炭素取引市場内で一定レベルの排出量を発生させることができる。また、これまでの慣行を、温室効果ガスの排出を回避したり、伐採停止や植林などで同等の量の二酸化炭素を吸収したりする方法に変更した全米の土地所有者、農業従事者、その他の企業から、限られた量のカーボン・オフセット・クレジットを購入できる。
しかし、実際には後者は、主張したほどには温室効果ガス排出量を削減していなかった。それどころか、排出量を増加させていた。金銭の受け渡しが発生しただけで、実際の排出量は増加し続けている。
カリフォルニア州大気資源局(ARB)は、以前の制度で発見された問題点を具体的に回避するようオフセット制度を設計した。プロジェクトを個別に評価するのではなく、適格と認められるプロジェクトの種類と、排出削減量の推定方法を定義する幅広い手続きを作り上げた。この制度により、林業、畜産業、稲作業、および石炭採掘業などにおけるオフセット・プロジェクトにおける具体的な基準が確立した。
しかし、8月26日にネットで公開された報告書で研究者たちは、この基準設定の方法は依然として排出削減量を大幅に過大評価し、排出量を増加させてしまう可能性すらあると結論付けている。
石炭産業の利益を押し上げる
石炭産業の場合を考えてみよう。
石炭採掘では、温室効果ガスであるメタンも放出される。メタンの温室効果は排出後20年間で二酸化炭素の80倍以上になるり、炭鉱が閉鎖された後も、メタンガスは何年も漏れ続ける。
炭鉱に応じて、炭鉱運営者にはメタンを処理するためのいくつかの選択肢がある。大気中に放出するほか、排出メタンを収集してパイプラインに注入してエネルギー生成に利用したり、換気システムで酸化したり、燃焼、つまり現場で火をつけたりする。
後者の3つの選択肢はすべて、メタンを温室効果の小さい二酸化炭素に変換するので、気候の観点からは大気へ直接放出することの改善策となる。したがって、カリフォルニア州のオフセット・プログラムでは、汚染企業はこの3つのいずれかの措置を講じる石炭会社からクレジットを購入できる。
報告書は、カリフォルニア州のメタンを削減する手順が、炭鉱での排出回避量を水増しする可能性に関していくつかの懸念に焦点を当てている。
https://www.technologyreview.jp/s/160077/whoops-californias-carbon-offsets-program-could-extend-the-life-of-coal-mines/
■候変動対策として炭素排出量を抑制するカリフォルニア州のプログラムが、炭鉱の寿命を延ばしたり、温室効果ガスをはるかに大量に発生する作物への切り替えを農家に促したりといった意図に反した影響をもたらす可能性がある。
カリフォルニア大学バークレー校、スタンフォード大学およびその他の機関の研究者がまとめた新しい調査報告書では、カリフォルニア州で始まったばかりのカーボン・オフセット・プログラムにおけるこうした逆効果をもたらすインセンティブのリスクに対する警告が示された。この種のオフセット・プログラムが、達成された排出削減量を水増しし、さらには気候汚染全体を促進してしまう可能性があることを示す、まさに最新の証拠となっている。
カリフォルニア州は排出量取引(キャップ・アンド・トレード)制度により、産業が排出できる温室効果ガスの量を厳しく制限している。カーボン・オフセットはその中核となるものだ。同州の主要な汚染者は、排出権を売買することにより、その炭素取引市場内で一定レベルの排出量を発生させることができる。また、これまでの慣行を、温室効果ガスの排出を回避したり、伐採停止や植林などで同等の量の二酸化炭素を吸収したりする方法に変更した全米の土地所有者、農業従事者、その他の企業から、限られた量のカーボン・オフセット・クレジットを購入できる。
しかし、実際には後者は、主張したほどには温室効果ガス排出量を削減していなかった。それどころか、排出量を増加させていた。金銭の受け渡しが発生しただけで、実際の排出量は増加し続けている。
カリフォルニア州大気資源局(ARB)は、以前の制度で発見された問題点を具体的に回避するようオフセット制度を設計した。プロジェクトを個別に評価するのではなく、適格と認められるプロジェクトの種類と、排出削減量の推定方法を定義する幅広い手続きを作り上げた。この制度により、林業、畜産業、稲作業、および石炭採掘業などにおけるオフセット・プロジェクトにおける具体的な基準が確立した。
しかし、8月26日にネットで公開された報告書で研究者たちは、この基準設定の方法は依然として排出削減量を大幅に過大評価し、排出量を増加させてしまう可能性すらあると結論付けている。
石炭産業の利益を押し上げる
石炭産業の場合を考えてみよう。
石炭採掘では、温室効果ガスであるメタンも放出される。メタンの温室効果は排出後20年間で二酸化炭素の80倍以上になるり、炭鉱が閉鎖された後も、メタンガスは何年も漏れ続ける。
炭鉱に応じて、炭鉱運営者にはメタンを処理するためのいくつかの選択肢がある。大気中に放出するほか、排出メタンを収集してパイプラインに注入してエネルギー生成に利用したり、換気システムで酸化したり、燃焼、つまり現場で火をつけたりする。
後者の3つの選択肢はすべて、メタンを温室効果の小さい二酸化炭素に変換するので、気候の観点からは大気へ直接放出することの改善策となる。したがって、カリフォルニア州のオフセット・プログラムでは、汚染企業はこの3つのいずれかの措置を講じる石炭会社からクレジットを購入できる。
報告書は、カリフォルニア州のメタンを削減する手順が、炭鉱での排出回避量を水増しする可能性に関していくつかの懸念に焦点を当てている。
https://www.technologyreview.jp/s/160077/whoops-californias-carbon-offsets-program-could-extend-the-life-of-coal-mines/