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英議会、離脱関連法案が審議入り 各議員が賛否表明へ
2019年10月22日 19:57
【ロンドン=佐野彰洋】英議会下院は22日、欧州連合(EU)との新離脱協定案の施行に必要な関連法案の審議を始めた。委員会に付託するかどうかを同日中に採決する予定で、各議員が新離脱案への賛否を示す最初の機会となる。ジョンソン英首相は10月末に離脱する方針を崩しておらず、与党・保守党は24日までの下院通過を目指すが、野党は徹底抗戦の構えを見せている。
英政府は21日夜、110ページに及ぶ関連法案を下院に提出した。審議には通常数週間かかる内容とみられるが、保守党のリースモグ下院院内総務は「24日までに関連法案の下院での手続きを終わらせたい」と述べた。野党・労働党が「審議時間が足りない」と反対するなど、議事日程を巡るさや当ても始まっている。
英政府とEUは17日に新たな離脱協定案に合意したが、英議会の超党派議員団は「離脱案を先に承認すれば、ジョンソン氏が国内法整備を置き去りにして『合意なき離脱』となりかねない」と警戒。19日の審議で、関連法が成立するまで離脱案の採決を先送りするとの修正動議を可決した。英政府は21日にも離脱案採決を諮ったが、バーコウ下院議長が「混乱を招きかねない」と却下した。
ジョンソン政権は関連法案の採決を先行する戦略に切り替え、下院での多数派工作に全力を挙げる。保守党は議席数が287と、実質的な過半数である320に及ばない。離脱派の労働党議員に造反を働き掛けるほか、ジョンソン氏と対立して除名された元保守党議員らの賛成を見込む。
一方、労働党は移行期間の延長など離脱案に関する修正案を出し、EUとの合意を骨抜きにしようとしているもようだ。EUとの関税同盟残留や再国民投票の提案も想定し、EU残留派の元保守党議員や、北アイルランドが地盤で新離脱案に反対する閣外与党・民主統一党(DUP)との共闘をもくろむ。
英フィナンシャル・タイムズは政権側が320票をぎりぎり確保できるとの票読みを報じたが、野党とは5票差と予断を許さない状況だ。
ジョンソン氏は19日、法律に基づき離脱期限延期を申請する書簡をEUに送付したが、10月末の離脱を諦めていない。21日の声明でも「英国民も欧州の指導者も私もこれ以上の延期を望んでいない」と訴えた。
EU側は英議会の審議動向を見極めたい考えだ。EUのトゥスク大統領は22日の欧州議会で、英国の延期要請を認めるかについて「数日中に決める」と述べ、英議会の決定を見守る考えを示した。「『合意なき離脱』は決して我々の選択にはならない」とも語った。