国民党系大手紙論説委員は苦り切った表情で総統選挙を振り返る。
しかし、今回の総統選挙では忘れられてしまった台湾経済はのっぴきならぬ状態にある。
この論説委員は、5月20日からスタートする第2期蔡政権をこう展望する。
「台湾経済は“アジアの小さな4匹の龍”と呼ばれた時代の輝きを失って久しい。台湾企業の大陸への進出、成功で台湾内の産業は空洞化。雇用情勢も著しく悪化している。総統選挙の熱狂から覚めたとき、有権者の関心は再び内政問題、特に経済政策に引き戻される」
青年層の経済的不満が沸点に
蔡英文政権発足後から今まで、中台両岸当局の交渉は途絶している。
そうしたなか、大陸は18年2月に31項目、19年11月には26項目の台湾優遇策を蔡の頭越しに台湾市民に直接呼びかけている。
大陸は「発展のチャンスを台湾の同胞と分かち合う」とのお題目の下、台湾企業には大陸企業と同様の待遇を与え、税制面で優遇。
また、台湾人就労者向けには、大陸での就学や、起業、就業、生活面などにおいて、中国人と同等の扱いを認めるというものであり、医療、教育、文化・映像産業、芸術といった高度な専門職の人材を幅広く受け入れることなどが含まれている。
前出の論説委員は、蔡を支持した青年が大挙して大陸に向かうことすら予想する。
「優遇策は大陸による統一戦線工作の一環で、台湾企業、青年層の目の前にぶら下げたニンジン、飴玉であることは明白だ。しかし、青年層がもっとも関心を持つ大卒初任給は2000年には3万ニュー台湾ドル(1ニュー台湾ドル=約10万円)程度あったが、この20年で20%以上減って2万4000ニュー台湾ドル(約8万円)あるかないかというのが現状。若者の失業率悪化も大きな社会問題となっている。総統選挙では『首投族』と呼ばれる、今回初めて選挙権を手にした青年層の蔡支持が票数を押し上げて史上最多を記録させたが、その青年層の経済的不満は沸点に近づいている。
年内に経済的恩恵が目に見える形で出てこなければ、移ろいやすい台湾の民意、特に青年層の支持は瞬く間に蔡から離れていくだろう。大陸の大都市では大型レストランの給仕、皿洗いは地方の中卒でも5000人民元(約7万5000円)程度稼いでしまう。蔡から離れていくであろう台湾の青年層は、より条件のいい大陸での就職を目指すことが十分考えられる。民主と主権の祭りの後に青年はこれだけでは腹を満たせない、生活を維持できないことを知れば逃げ足はとてつもなく早いものとなる」
蔡は香港から吹いてきた神風で起死回生の再選を果たしたが、学生時代から学業優秀、聡明でならした蔡であれば、祭りの後に出来するものがなんであるのか、すでに想定していることだろう。
しかし、これだけが笑顔も高揚感もない勝利宣言の原因ではない。
1月8日掲載の前稿では総統選挙に向けられた2つのフェイクニュースを論じたが、これも第2期蔡政権に大きな影を投げかけている。
民進党側は11月に明らかになったオーストラリアに亡命申請をした自称大陸のスパイ、王立強事件をフルに活用した。
これを奇貨として「反浸透法」を立法したのだ。選挙終盤でも民進党は国民党副秘書長・王正元が王にひそかに接触し、脅迫したとネガティブキャンペーンを展開。
国民党はこれを言下に否定した。
「大陸からの選挙干渉、さまざまな浸透工作対策の『反浸透法』を大みそかに強行採決、可決した民進党には格好のキャンペーンになった。
王は人民解放軍が香港に設立したダミー企業に所属し、そのトップは大陸の開国十大元帥で広東王と呼ばれた葉剣英の一族と告発しているが、そのトップは訪台中に身柄を拘束され、今でも出国禁止処分となっている。
大陸は王のこの証言をデマと否定した。おそらく事実ではないのだろう。
万が一、葉剣英の一族であれば大陸はありとあらゆる非合法な手段を駆使してでも救出に乗り出す。
その動きが確認できていないということは、王の告発が事実ではなかったと判断せざるを得ない」(前出の台湾大手紙論説委員)
王がスパイなのかどうか、オーストラリア政府はいまだに判断できず、保護には至っていない。
そして、王事件を奇貨として駆け込み強行可決した反浸透法が蔡に大きくのしかかる。
「同法では域外勢力を明示していないものの、蔡も口にしている通り対象が大陸であることは衆目の事実。
☆記事内容を一部引用しました。全文はソースでご覧下さい
https://biz-journal.jp/2020/01/post_137161.html
しかし、今回の総統選挙では忘れられてしまった台湾経済はのっぴきならぬ状態にある。
この論説委員は、5月20日からスタートする第2期蔡政権をこう展望する。
「台湾経済は“アジアの小さな4匹の龍”と呼ばれた時代の輝きを失って久しい。台湾企業の大陸への進出、成功で台湾内の産業は空洞化。雇用情勢も著しく悪化している。総統選挙の熱狂から覚めたとき、有権者の関心は再び内政問題、特に経済政策に引き戻される」
青年層の経済的不満が沸点に
蔡英文政権発足後から今まで、中台両岸当局の交渉は途絶している。
そうしたなか、大陸は18年2月に31項目、19年11月には26項目の台湾優遇策を蔡の頭越しに台湾市民に直接呼びかけている。
大陸は「発展のチャンスを台湾の同胞と分かち合う」とのお題目の下、台湾企業には大陸企業と同様の待遇を与え、税制面で優遇。
また、台湾人就労者向けには、大陸での就学や、起業、就業、生活面などにおいて、中国人と同等の扱いを認めるというものであり、医療、教育、文化・映像産業、芸術といった高度な専門職の人材を幅広く受け入れることなどが含まれている。
前出の論説委員は、蔡を支持した青年が大挙して大陸に向かうことすら予想する。
「優遇策は大陸による統一戦線工作の一環で、台湾企業、青年層の目の前にぶら下げたニンジン、飴玉であることは明白だ。しかし、青年層がもっとも関心を持つ大卒初任給は2000年には3万ニュー台湾ドル(1ニュー台湾ドル=約10万円)程度あったが、この20年で20%以上減って2万4000ニュー台湾ドル(約8万円)あるかないかというのが現状。若者の失業率悪化も大きな社会問題となっている。総統選挙では『首投族』と呼ばれる、今回初めて選挙権を手にした青年層の蔡支持が票数を押し上げて史上最多を記録させたが、その青年層の経済的不満は沸点に近づいている。
年内に経済的恩恵が目に見える形で出てこなければ、移ろいやすい台湾の民意、特に青年層の支持は瞬く間に蔡から離れていくだろう。大陸の大都市では大型レストランの給仕、皿洗いは地方の中卒でも5000人民元(約7万5000円)程度稼いでしまう。蔡から離れていくであろう台湾の青年層は、より条件のいい大陸での就職を目指すことが十分考えられる。民主と主権の祭りの後に青年はこれだけでは腹を満たせない、生活を維持できないことを知れば逃げ足はとてつもなく早いものとなる」
蔡は香港から吹いてきた神風で起死回生の再選を果たしたが、学生時代から学業優秀、聡明でならした蔡であれば、祭りの後に出来するものがなんであるのか、すでに想定していることだろう。
しかし、これだけが笑顔も高揚感もない勝利宣言の原因ではない。
1月8日掲載の前稿では総統選挙に向けられた2つのフェイクニュースを論じたが、これも第2期蔡政権に大きな影を投げかけている。
民進党側は11月に明らかになったオーストラリアに亡命申請をした自称大陸のスパイ、王立強事件をフルに活用した。
これを奇貨として「反浸透法」を立法したのだ。選挙終盤でも民進党は国民党副秘書長・王正元が王にひそかに接触し、脅迫したとネガティブキャンペーンを展開。
国民党はこれを言下に否定した。
「大陸からの選挙干渉、さまざまな浸透工作対策の『反浸透法』を大みそかに強行採決、可決した民進党には格好のキャンペーンになった。
王は人民解放軍が香港に設立したダミー企業に所属し、そのトップは大陸の開国十大元帥で広東王と呼ばれた葉剣英の一族と告発しているが、そのトップは訪台中に身柄を拘束され、今でも出国禁止処分となっている。
大陸は王のこの証言をデマと否定した。おそらく事実ではないのだろう。
万が一、葉剣英の一族であれば大陸はありとあらゆる非合法な手段を駆使してでも救出に乗り出す。
その動きが確認できていないということは、王の告発が事実ではなかったと判断せざるを得ない」(前出の台湾大手紙論説委員)
王がスパイなのかどうか、オーストラリア政府はいまだに判断できず、保護には至っていない。
そして、王事件を奇貨として駆け込み強行可決した反浸透法が蔡に大きくのしかかる。
「同法では域外勢力を明示していないものの、蔡も口にしている通り対象が大陸であることは衆目の事実。
☆記事内容を一部引用しました。全文はソースでご覧下さい
https://biz-journal.jp/2020/01/post_137161.html