■ 香川県はなぜ「ゲーム」を規制するのか?
2020年1月9日、香川県はスマートフォンやゲーム機の利用を制限する「ネット・ゲーム依存症対策条例」(仮)の素案を明らかにした。
4月の施行を目指しており、制定されれば全国初となる。
大阪市の松井一郎市長も、スマホの使用時間をルール化することも視野に、実効性ある対策を検討するよう市の教育委員会に指示している。
このような動きに対して、ネット上では賛否両論のようだ。
今注目を集めるネット・ゲーム依存問題について見ていきたい。
香川県の法案には、ゲームとスマートフォンの利用時間制限が盛り込まれている。
具体的には、コンピュータゲームに対して「18歳未満の使用時間の上限は平日は1日60分、休日は90分」と設定。
また「スマートフォン等の使用時間帯は中学生以下は午後9時まで、高校生は午後10時まで」としている。
ただし、努力義務はあるが罰則規定などはない。
大阪市内の旭区でも、2014(平成26)年にスマホやゲームを午後9時以降は使用しないなどのルールを決定している。
しかし、市教委として統一したルールなどはなく、ルール化しても罰則や制限強制などは難しいという。
制限反対派には、「制限は家庭がするもの」「行政が家庭に介入して制限すべきではない」という声が多いようだ。
確かに、子どもにスマホやゲームを持たせるのも、制限できるのも保護者しかいないし、「行政が家庭に介入」と考えれば警戒心を抱くのは当然だろう。
実質的な強制力は持たないにもかかわらず、なぜこのような条例が検討されたか。
背景として、小中学生の保護者の多くが子どもの「ゲームのやりすぎ」または「YouTubeの見すぎ」を悩んでいる実態がある。
「いくら注意してもやめない。どうしたらやめさせられるのか」と真剣な顔で相談してくる保護者はあまりにも多い。
ある保護者に制限案について聞いたところ「それで子どもが(利用時間を)守ってくれるならいい」と言っていた。
2014年にも、愛知県刈谷市が市内の小中学生を対象に、午後9時以降は携帯電話・スマートフォンの利用を禁止している。
子どもが夜中までLINE対応に負われることを言い訳として、スマホを使わないようにするのを目的にしたという。
このときは、「学校が決めてくれたほうが子どもに守れと言いやすい」と保護者の9割以上が賛成。
中学生へのアンケートでも、「勉強に集中できるようになった」(29.0%)、「睡眠時間が増えた」(19.3%)、「精神的に楽になった」(4.8%)などと全体に好評だった。
治体がゲームを規制するのは「学校などがルールを決めて規制してくれたら助かる」という保護者が一定数いることも理由だろう。
同時に、確かに制限できるのは保護者だが、問題があったときは学校に問題が持ち込まれやすいことも影響していると考えられる。
ゲームのやりすぎで子どもが不登校になっても、LINEのやり取りでトラブルが起きても、解決を求められるのは学校や教員だ。
だからこそ、自治体が条例という形で提案せざるをえなかったのではないか。
もちろん、制限をしない保護者に対するメッセージという側面もあるだろう。
■ 韓国や中国も「規制」に力を入れている
ほかのアジアの国も、未成年のネット利用をすでに規制している。
韓国では、16歳未満のユーザーは午前0時から6時までオンラインゲームを禁止する「青少年夜間ゲームシャットダウン制」を導入している。
中国でも、18歳未満の子どもは夜10時から朝8時までオンラインゲームを制限し、平日は1回につき90分、休日は3時間以内などに制限する指針を発表している。
どちらもオンラインゲームのみを対象としたものだ。
ところが、日本の場合はオンラインゲームに限らず、ネットやスマホの利用全般が制限対象となっていたり、少なくともそのようにとらえられるものとなっていた。
この部分に対して、「インターネット利用を制限する弊害が大きい」と反対している人が多かったため、香川県の条例案は当初の「スマートフォンやゲームなどの利用時間を制限」するものから、対象がゲームのみに変更された。
※記事を一部引用しました
https://toyokeizai.net/articles/-/325903