http://karapaia.com/archives/52287552.html
カナダ、トロント大学とサニーブルック病院の研究グループが発表したそれは、なんだか少し大きめのテープのりみたいな感じだ。
実際、2018年にそのプロトタイプが発表されたとき、開発者は「粘着テープのディスペンサーのようなもの」とコメントしているくらいだ。
だが、このほど『Biofabrication』(2月4日付)で公開された最新バージョンは、火傷治療に革命を起こすかもしれない可能性を秘めている。
皮膚移植の限界に挑戦
ひどい火傷の治療にはいくつか選択肢があるが、一般的なのは、傷ついた組織を除去し、そこに体の他の部位から採取した健康な皮膚を貼るという手術――すなわち皮膚移植だ。
しかし場合によっては、皮膚移植ができないこともある。たとえば、火傷が深いところまで達してしまっているような状況(全層熱傷)だ。
こうした火傷では表皮からその下の下層組織までがダメになってしまっており、すぐに治療が必要になるが、往々にして火傷は広範囲に及んでいる。
そうなると、移植に使える皮膚が十分に残されておらず、皮膚移植は使えない。
コラーゲン・スキャフォールド法やインビトロ培養代用皮膚法といった別の治療法もあるが、高価だったり、効果が一時的だったり、あるいは準備に時間がかかったりするなど、どちらにも弱点がある。
そこで新しい皮膚を患部に直接3Dプリントしてしまおうという発想が生まれた。
バイオインクを皮膚に直接貼り付ける
開発された3Dプリンターは、真皮を構成する「コラーゲン」や火傷の治癒に必要な「フィブリン」といったタンパク質が配合されたバイオインクを、テープのりのような感じで火傷で傷ついた部分に直接貼り付ける。
だがバイオインク最高の秘密は、そこに「間葉系間質細胞」も含まれている点だ。これは周囲の環境に応じてさまざまな細胞に分化してくれるあの幹細胞の一種だ。
患部に貼り付ければ、皮膚の再生をうながし、傷跡が目立たないようにしてくれる。しかも皮膚のプリントに要する時間はものの数分だ。
動物実験で良好な治療効果を確認
2018年に3Dプリンターのプロトタイプが発表されたときは、細胞を火傷に直接補給できることまでは確認されたが、その治療効果までは実証されていなかった。
しかし今回、ブタの全層熱傷にプリンターを試した結果は、かなり有望だったとのこと。「スキンシートはごく少ない動作で、患部に均一かつ安全確実に付着した」とプレスリリースで述べられている。
しかも間葉系間質細胞のおかげで、傷の治りはきわめて良好であったという。まったく治療が施されないケースはもちろん、コラーゲン・スキャフォールド法で治療されたケースと比較しても、炎症・瘢痕化・拘縮といった火傷特有の症状が少なかったそうだ。
今後5年で医療の現場に登場する可能性も
研究グループによると、今後5年のうちに臨床の現場に導入されてもおかしくはないという。
「手術室で使われるようになれば、救命現場に革命をもたらすでしょう。こうした装置があれば、火傷や怪我の治療方法がガラリと変わるかもしれませんね」と研究グループのマーク・ヤスケ博士は語っている。
カナダ、トロント大学とサニーブルック病院の研究グループが発表したそれは、なんだか少し大きめのテープのりみたいな感じだ。
実際、2018年にそのプロトタイプが発表されたとき、開発者は「粘着テープのディスペンサーのようなもの」とコメントしているくらいだ。
だが、このほど『Biofabrication』(2月4日付)で公開された最新バージョンは、火傷治療に革命を起こすかもしれない可能性を秘めている。
皮膚移植の限界に挑戦
ひどい火傷の治療にはいくつか選択肢があるが、一般的なのは、傷ついた組織を除去し、そこに体の他の部位から採取した健康な皮膚を貼るという手術――すなわち皮膚移植だ。
しかし場合によっては、皮膚移植ができないこともある。たとえば、火傷が深いところまで達してしまっているような状況(全層熱傷)だ。
こうした火傷では表皮からその下の下層組織までがダメになってしまっており、すぐに治療が必要になるが、往々にして火傷は広範囲に及んでいる。
そうなると、移植に使える皮膚が十分に残されておらず、皮膚移植は使えない。
コラーゲン・スキャフォールド法やインビトロ培養代用皮膚法といった別の治療法もあるが、高価だったり、効果が一時的だったり、あるいは準備に時間がかかったりするなど、どちらにも弱点がある。
そこで新しい皮膚を患部に直接3Dプリントしてしまおうという発想が生まれた。
バイオインクを皮膚に直接貼り付ける
開発された3Dプリンターは、真皮を構成する「コラーゲン」や火傷の治癒に必要な「フィブリン」といったタンパク質が配合されたバイオインクを、テープのりのような感じで火傷で傷ついた部分に直接貼り付ける。
だがバイオインク最高の秘密は、そこに「間葉系間質細胞」も含まれている点だ。これは周囲の環境に応じてさまざまな細胞に分化してくれるあの幹細胞の一種だ。
患部に貼り付ければ、皮膚の再生をうながし、傷跡が目立たないようにしてくれる。しかも皮膚のプリントに要する時間はものの数分だ。
動物実験で良好な治療効果を確認
2018年に3Dプリンターのプロトタイプが発表されたときは、細胞を火傷に直接補給できることまでは確認されたが、その治療効果までは実証されていなかった。
しかし今回、ブタの全層熱傷にプリンターを試した結果は、かなり有望だったとのこと。「スキンシートはごく少ない動作で、患部に均一かつ安全確実に付着した」とプレスリリースで述べられている。
しかも間葉系間質細胞のおかげで、傷の治りはきわめて良好であったという。まったく治療が施されないケースはもちろん、コラーゲン・スキャフォールド法で治療されたケースと比較しても、炎症・瘢痕化・拘縮といった火傷特有の症状が少なかったそうだ。
今後5年で医療の現場に登場する可能性も
研究グループによると、今後5年のうちに臨床の現場に導入されてもおかしくはないという。
「手術室で使われるようになれば、救命現場に革命をもたらすでしょう。こうした装置があれば、火傷や怪我の治療方法がガラリと変わるかもしれませんね」と研究グループのマーク・ヤスケ博士は語っている。