危機管理の初動対処にとり最も大切な要件は、正確な情報の伝達と共有である。
それがなければ、危機の実態を把握するのが遅れ、また対処行動をとっても的確な判断ができず、成果につながらない。結果的に初動対処に後れをとり、危機を拡大させてしまうことになる。
その点では、独裁的体制は一見堅固なようでも、危機には脆い面も抱えている。
そのためにかえって、情報を隠蔽し事実を歪曲して、何とか独裁体制の面子を保ち、権力の正統性を守ることに躍起になる。
今回のコロナウイルス問題への対応でも、中国共産党は独裁体制の欺瞞性と脆弱性を露呈した。
■ 武漢市党委員会の情報隠蔽と証拠隠滅招いた習近平独裁強化
昨年の12月1日には、武漢の海鮮市場において41例の感染症患者の発生が確認されていたが、そのうちの約3分の1は海鮮市場には接触していなかったことが、今年1月24日の医学専門誌『ランセット』の論文で明らかにされている。
すなわち、昨年12月1日にはヒトからヒトへの感染があることは確認されていた。これはパンデミックになりかねない新型ウイルスの出現を意味していた。
SARSの教訓を踏まえて、このような新型の感染症が起きれば、WHO(世界保健機関)を通じ、直ちに国民と世界に対して、その脅威を警告することが国際合意になっていた。
それにもかかわらず、またも自らが新型感染症の発生源となりながら、中国当局は、初動における感染拡大阻止のための最も重要な責務を果たさなかった。それがパンデミックを招く元凶となった。
12月8日には最初の患者発生が世界に報じられた。新型の感染症の発生については知られるようになったが、ヒトからヒトへの感染の事実はないとされた。
この最初の時点から、情報隠蔽はすでに始まっていた。
12月16日には、上海の感染予防センターがサンプルを採りに武漢に赴いており、その結果は1月5日には報告されている。
北京の党中央はこの時点で、コロナウイルスの発生については、少なくとも報告を受けていたはずである。
しかしその報告では、ヒトからヒトへの感染の事実はないとの虚偽の報告がされていたとされている。
その後も武漢市当局は1月17日まで、ヒトからヒトへの感染の事実を隠蔽した虚偽報告を続けていた。
その背景には、3月5日に予定されていた全人代のための、武漢市で1月12日から1月17日の間開催される、湖北省の「両会」と呼ばれる人民代表大会と政治協商会議を、
無事に武漢市党委員会主催で開催することを優先するという、武漢市の党委員会書記以下の判断があったとみられる。
もしこの「両会」を無事に開催できなければ、北京の党中央からどのような懲罰を受けるか分からないという恐怖心が、党書記長以下の判断の背景にあったのであろう。
習近平党総書記は就任以来、腐敗一掃、汚職追放を掲げ強権政治を行ってきた。
とりわけ、近隣の重慶市では党委員会書記であった薄熙来の一派が、汚職を理由に2012年に粛清されている。
武漢市党委員会書記以下も、過度の保身に走り、ヒトからヒトへの感染という重大な事実の隠蔽工作に走ったものと思われる。まさに、習近平独裁体制の行き過ぎが招いた、情報隠蔽と言える。
武漢市の医師たちは、昨年11月頃から異変に気づいていた。武漢市中心医院の李文亮医師は、仲間の医師たちとのグループチャットWeChat(微信)では、
大半の患者が海鮮市場の関係者だが、その他の人にも感染が広がっていると指摘し、警告を発し合っていた。
李医師は、「市場に行くな、行っていない人も罹っている」と述べていたが、WeChatの内容が漏れて、「華南海鮮市場で7人のSARS感染者が確認された」とSNSで報じている。
さらに、武漢市衛生健康委員会が、海鮮市場で謎の肺炎患者が続出しているとして情報収集を呼びかける通達を発出した。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200318-00059742-jbpressz-cn&p=2
3/18(水) 6:01配信