近畿地方の広い範囲で、旧家の系図や寺社の由緒書(ゆいしょがき)、村の絵図など、江戸時代後期に中世のものとして偽作された多数の文書(もんじょ)が、自治体の出版物などに本物として紹介されていることが分かってきた。この偽書群を17年前から研究している馬部(ばべ)隆弘・大阪大谷大学准教授(日本中近世史)は、近著「椿井(つばい)文書 ――日本最大級の偽文書」(中央公論新社)で、歴史学研究の現状に警鐘を鳴らしている。
馬部さんは大阪府枚方市の非常勤職員だった2003年、枚方市内の城郭について調べるなかで、江戸時代にその場所の支配権をめぐる村同士の争いが起きており、一方が根拠とした中世の古文書が偽物であることに気づいた。偽文書を村に提供した南山城(京都府南部)の椿井政隆(1770〜1837)という人物を調べていくと、彼が山城や河内(大阪府東南部)、近江(滋賀県)の村同士の争いがある場所に出没し、村人らの求めに応じて中世の古文書やその写本を大量に偽作していたことが分かってきた。
政隆は争いごとのある地域に目…
2020年3月31日 9時00分
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