★危険手当320円、コロナに奮闘する看護師の実情
風評被害で心理的に追い詰められるケースも
2020/04/27 5:30
https://toyokeizai.net/articles/-/346665
※一部抜粋、全文はリンク先へ
5日で1枚。感染症患者に対応する人は1日1枚――。これは福岡県のある公的病院で、看護師が使える医療用マスクの枚数だ。
5日間使うマスクには自分の名前を書き、病院側が管理する。毎日、マスクの内側に入れたガーゼを取り換えて使っている。
「普段なら1日何回もマスクを変えますが、今は許されません」。この病院で働く50代の看護師は話す。
利用を制限されているのは、いわゆる薬局で売っているような不織布マスクだけではない。
ウイルスの飛沫感染を防ぐ「N95」と呼ばれる医療用のマスクも不足し、使い回している。
■15床のため100床をすべて閉鎖
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■消えない感染の不安
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ストレスを感じているのは、現場で働く看護師だけではない。管理者の心理的負担も大きい。
8階フロアを管理する看護師長は、国や県からの要請が刻々と変わるため、数時間おきに病院幹部からの召集があり、
対策に追われている。最も頭を悩ませたのは、「誰を感染症対応の病棟に残すのか」だ。
看護師長は、子どもや高齢の家族と同居する人を避けるなど、「スタッフの選別」をせざるえなかったという。
マスクを使い回していることからもわかるとおり、防御体制は十分ではない。
しかし、この病院で看護師に支給される危険手当は福岡県職員の基準に準じて1日320円にすぎない。
コロナ感染患者に対応する看護師には支給されるが、他の病棟の看護師にはそれすらない。
感染患者がいない病棟とはいえ、感染が疑われる患者がいれば看護師が防護服を着て検体を採取している。
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■「このままでは離職者が出る」
日本看護協会は4月上旬に記者会見を開き、疲弊する医療現場の窮状を訴えた。
重症化した新型コロナ患者をICU(集中治療室)などで治療する場合、一般病床と比べて看護師数が最大で4倍必要になるという。
会見では、ある呼吸器専門病棟の現状が紹介された。
「2月上旬から10人の感染症患者が入院している。約30人の看護師と看護助手のうち、感染症患者を担当するのは選抜された約10人。
配偶者や子どもを持たない一人暮らしの独身者だ。1カ月半以上過ぎたが終わりが見えない。
身体的、精神的にも疲弊し限界である。このままでは離職者が出る」(福井トシ子会長)
日本看護協会では、現在離職中の5万6000人の潜在看護師に復職を求めていく方針だ。
しかし、「もともと過酷な業務なうえ労働条件が悪いから離職者が多い。
自分だけでなく家族にも危険が及ぶ今の状況で復職は難しいだろう」(複数の看護師)。
同協会は4月15日、政府に対して感染患者やその疑いのある患者に対応した看護師への危険手当の支給と増額、
看護師が帰宅できない場合の宿泊費の補助を求める要望書を提出した。同協会の熊谷雅美理事は危機感を募らせる。
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■自分が感染するか、自宅待機になるか
医療従事者の労働組合である日本医療労働組合連合会が4月上旬に全国の加盟団体に行ったアンケートでは、
「職員の転勤が引っ越し業者から断られた」「保育園から職員の利用を自粛してくれという要請があった」
「職員の夫が勤務する会社が、夫の出勤を停止した」など風評被害や差別的扱いに関する声が多数上がった。
院内感染が発生した病院では病院名がさらされ、時に批判の的になる。多数の医療従事者の院内感染が発覚した、
都内の病院に勤務する看護師はこう明かす。
「院内感染の影響で、自宅待機の職員が出ています。看護師が不足し有資格者に声がかかっています。
ボランティアとして働く有資格者には、危険手当も出ていません。
人員が少なく、患者のクレーム対応などに時間が割かれる場合もある。
こんな状況がいつまで続くか不安ですが、自分が感染するか、自宅待機になるまでは仕事をせざるをえません」
現場の最前線で働く医療従事者は、神経をすり減らしている。このままでは医療従事者をバーンアウトさせかねない。