中国・習近平がトランプを打ち負かす…コロナ後の世界で起きる「激変」 勢力は大きく変わる
現代ビジネス 2020.05.04 真壁昭夫 法政大学大学院教授
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/72350
世界中で新型コロナウイルスの感染が拡大する中、これまで世界経済を支えてきた覇権国・米国と、これからは建国を目指す中国の間の対立が一段と熾烈化している。
米トランプ大統領は、中国がマスクなどを買い占めて不当に利益を得ているなどと主張し対中批判をさらに強めている。
一方、中国は“マスク外交”などで、アフリカ諸国や欧州などに医療物資を提供して新中国勢力の拡大に注力している。
世界経済の成長にとって重要な分野であるIT分野において、中国企業は着実に競争力をつけており明確に米国企業のコンペティターになっている。
コロナウイルス問題で足元が怪しくなりかけた習近平国家主席は、国民の支持を取り付けるべく雇用の保護と先端分野の競争力向上のために補助金政策を重視するとみられる。
秋の大統領再選を目指すトランプ大統領が対中批判を強め、米中摩擦が熾烈化する可能性は高まることが予想される。
それは世界情勢にとって、大きな不安定要因になることが懸念される。
●今、まさに分水嶺迎えるグローバル化
コロナショックは、これまでの米国を基軸に進んできたグローバル化の問題点を顕在化させた。
ある意味、新型コロナウイルスの感染拡大により、世界の政治と経済は分水嶺を迎えている。
最も重要なことは、医療崩壊などを受け命の大切さが改めてはっきりしたことだ。
見方を変えれば、グローバル化の中で各国は医療・保健体制を強化することが難しかった。
その中、米国ではトランプ政権が自国主義の考えを強めている。
米国では医療が崩壊し、マスクや防護服など基礎的な医療資材が枯渇してしまった。
一時、トランプ氏はマスクの禁輸を検討し、国際社会から非難された。
世界経済がコロナショックによって非常事態に突入する中、国際社会が多様な利害をどう調整できるかはかなり読みづらくなっている。
対照的に、国際社会における中国の存在感が増しているように見える。
支配基盤を維持するために、習近平国家主席は中国の雇用を何としても守らなければならない。
問題は、2018年以降、中国経済の成長の限界が明らかになったことだ。
米中の通商摩擦が中国経済を下押しした上にコロナショックも重なり、同主席の求心力は低下している。
中国は、補助金政策や金融緩和、インフラ投資などを総動員し、目先の国内経済を落ち着かせなければならない。
それに加え、長期の視点で考えた場合、中国経済の安定には外需の取り込みが必要だ。
そのために中国は“マスク外交”と呼ばれるように医療物資を中心に各国への支援を行うことで国際社会における影響力を強めようとしている。
●自国優先主義へと誘導する米・中の対立
今後、米国はIT先端分野を中心に中国の台頭を抑えようと更なる圧力をかけるだろう。
コロナショックを境に、IT先端技術を用いたテレワークやオンライン会議などのメガトレンドが出現した。
中国はそうした動きを加速させる原動力の一つだ。
山東省出身の袁征(ユエン・ジェン)氏がオンライン会議アプリの“ZOOM”を生み出したのはそのよい例だろう。
また、中国はIoTの技術を駆使して人の移動を監視し、感染の拡大を食い止めた。
その上、オンライン診療も急速に普及している。
アリババ傘下の阿里健康(アリヘルス)がPCR検査のオンライン予約を開始するなどBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)を筆頭とする中国IT先端企業の力は着実に高まっているとみるべきだろう。
それは“アフターコロナ”の世界経済に大きな影響を与える要因の一つと考えたほうが良い。
中国は新興国などに自国のテクノロジーを提供し、支援を強化するだろう。
一方、トランプ政権は制裁関税など圧力をかけて中国の台頭を抑えたい。
長めの目線で考えた時、今の米国よりも中国の主張になびく国が増えておかしくはない。
IT先端分野での覇権を巡り米GAFAと中国BATHの競争は激化し、米中摩擦が熱を帯びる展開は軽視できない。
アフターコロナの世界経済の変化に対応するためにわが国は、まずは感染対策を徹底して国民の安心を支えなければならない。
その上で、政府は構造改革を進め先端分野の競争に対応しなければならない。わが国の現状を見ると、そうした取り組みが進められるかが不安だ。
現代ビジネス 2020.05.04 真壁昭夫 法政大学大学院教授
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/72350
世界中で新型コロナウイルスの感染が拡大する中、これまで世界経済を支えてきた覇権国・米国と、これからは建国を目指す中国の間の対立が一段と熾烈化している。
米トランプ大統領は、中国がマスクなどを買い占めて不当に利益を得ているなどと主張し対中批判をさらに強めている。
一方、中国は“マスク外交”などで、アフリカ諸国や欧州などに医療物資を提供して新中国勢力の拡大に注力している。
世界経済の成長にとって重要な分野であるIT分野において、中国企業は着実に競争力をつけており明確に米国企業のコンペティターになっている。
コロナウイルス問題で足元が怪しくなりかけた習近平国家主席は、国民の支持を取り付けるべく雇用の保護と先端分野の競争力向上のために補助金政策を重視するとみられる。
秋の大統領再選を目指すトランプ大統領が対中批判を強め、米中摩擦が熾烈化する可能性は高まることが予想される。
それは世界情勢にとって、大きな不安定要因になることが懸念される。
●今、まさに分水嶺迎えるグローバル化
コロナショックは、これまでの米国を基軸に進んできたグローバル化の問題点を顕在化させた。
ある意味、新型コロナウイルスの感染拡大により、世界の政治と経済は分水嶺を迎えている。
最も重要なことは、医療崩壊などを受け命の大切さが改めてはっきりしたことだ。
見方を変えれば、グローバル化の中で各国は医療・保健体制を強化することが難しかった。
その中、米国ではトランプ政権が自国主義の考えを強めている。
米国では医療が崩壊し、マスクや防護服など基礎的な医療資材が枯渇してしまった。
一時、トランプ氏はマスクの禁輸を検討し、国際社会から非難された。
世界経済がコロナショックによって非常事態に突入する中、国際社会が多様な利害をどう調整できるかはかなり読みづらくなっている。
対照的に、国際社会における中国の存在感が増しているように見える。
支配基盤を維持するために、習近平国家主席は中国の雇用を何としても守らなければならない。
問題は、2018年以降、中国経済の成長の限界が明らかになったことだ。
米中の通商摩擦が中国経済を下押しした上にコロナショックも重なり、同主席の求心力は低下している。
中国は、補助金政策や金融緩和、インフラ投資などを総動員し、目先の国内経済を落ち着かせなければならない。
それに加え、長期の視点で考えた場合、中国経済の安定には外需の取り込みが必要だ。
そのために中国は“マスク外交”と呼ばれるように医療物資を中心に各国への支援を行うことで国際社会における影響力を強めようとしている。
●自国優先主義へと誘導する米・中の対立
今後、米国はIT先端分野を中心に中国の台頭を抑えようと更なる圧力をかけるだろう。
コロナショックを境に、IT先端技術を用いたテレワークやオンライン会議などのメガトレンドが出現した。
中国はそうした動きを加速させる原動力の一つだ。
山東省出身の袁征(ユエン・ジェン)氏がオンライン会議アプリの“ZOOM”を生み出したのはそのよい例だろう。
また、中国はIoTの技術を駆使して人の移動を監視し、感染の拡大を食い止めた。
その上、オンライン診療も急速に普及している。
アリババ傘下の阿里健康(アリヘルス)がPCR検査のオンライン予約を開始するなどBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)を筆頭とする中国IT先端企業の力は着実に高まっているとみるべきだろう。
それは“アフターコロナ”の世界経済に大きな影響を与える要因の一つと考えたほうが良い。
中国は新興国などに自国のテクノロジーを提供し、支援を強化するだろう。
一方、トランプ政権は制裁関税など圧力をかけて中国の台頭を抑えたい。
長めの目線で考えた時、今の米国よりも中国の主張になびく国が増えておかしくはない。
IT先端分野での覇権を巡り米GAFAと中国BATHの競争は激化し、米中摩擦が熱を帯びる展開は軽視できない。
アフターコロナの世界経済の変化に対応するためにわが国は、まずは感染対策を徹底して国民の安心を支えなければならない。
その上で、政府は構造改革を進め先端分野の競争に対応しなければならない。わが国の現状を見ると、そうした取り組みが進められるかが不安だ。