新型コロナウイルスの感染拡大が、駅や電車で目にする広告にも影響を及ぼし始めている。
外出機会の激減で従来の宣伝効果が得られないことに加え、宣伝の自粛や施設の休業で広告出稿が取り下げられるケースも。関係者からは「広告業界全体にとって大打撃だ」と悲鳴が上がる。
以前は若者でにぎわっていたJR渋谷駅。閑散としたハチ公像前から駅舎を見上げると、最初に目に入る広告スペース「ハチコーボード」が真っ白になっていた。数十メートルにわたる駅コンコースの壁面広告や、ファッションビル「SHIBUYA109」周辺の看板も少なくなり、周辺の風景は感染拡大前と比べ様変わりしている。
縦4メートル、横20メートルのハチコーボードは、テレビ中継にもよく登場する人気広告スポットだ。ジェイアール東日本企画によると、広告掲出料は1週間で税別800万円。それでも以前は枠が取り合いになるほどだったが、4月20日から5月17日まで4週間連続で広告出稿がなく、「これほど枠が空いたのは過去記憶にない」(担当者)という。
新宿駅から調布方面へ走る京王線車内も、中づり広告はまばら。掲示されているのは京王グループの宣伝や、新型コロナウイルス感染防止の啓発ポスターがほとんどだ。日本鉄道広告協会によると、こうした車内広告の減少は比較的乗客の少ない私鉄から、徐々に広がりつつあるという。
外出自粛による宣伝効果の低下が主な理由だが、集客で「密」状態を招く恐れから広告出稿を自粛するケースや、宣伝する施設自体の休業など、広告主の事情はさまざま。同協会の担当者は「掲出料を下げる動きも始まっている。緊急事態宣言が今後解除されても、広告がすぐに戻るかどうかは見通せない」とため息をついた。
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