舌戦続く東京都知事選の陰で、北区を舞台に、もう1つの熱い戦いが繰り広げられようとしている。現職都議の辞職に伴う都議補選北区選挙区(26日告示、7月5日投開票)。1議席を巡り、小池百合子都知事が特別顧問を務める都民ファーストの会、都議会で小池氏と対立する自民、さらには立憲民主、維新が次々と候補を擁立。親小池派のはずの公明は自民候補の推薦を決めた。都境の静かな街・北区が一躍、注目を集めている。 (岡本太、砂上麻子)
「なんだか急に盛り上がっちゃって。どうなっちゃうんでしょうか」。ある陣営の選挙事務所で、スタッフの女性が苦笑した。
北区選挙区の最大の見どころは、都知事選で実現しなかった都民ファ対自民の対決だ。
都知事選で自民は、知名度の高い小池氏を前に、敗戦を避けるため独自候補の擁立を断念。小池氏への事実上の支援に回る一方、北区の都議補選では早々に区議の山田加奈子さん(49)を擁立。2017年都議選で現職が落選した因縁の地だけに、「絶対に落とせない」(都議)と議席奪還を期す。
これに対し都民ファは、小池氏が二階俊博自民幹事長との良好な関係を築いていることから、対決を避けて候補擁立を見送るとの観測が流れていた。
ただ小池氏あっての都民ファは、知事が自民と接近すれば存在感が薄まりかねない。関係者によると、積極的ではなかった小池氏を押し切る形で元知事秘書の天風いぶきさん(35)の擁立を決め、今月1日に発表した。小池氏は「自分の選挙に集中する」と応援に入らない考えを示しており、都民ファ幹部は「激戦は覚悟の上だ」と語る。
対応が注目された公明。都議会では親小池派として都民ファと歩調を合わせるが、補選は反小池派の自民候補を推薦する。
公明にとって北区は太田昭宏元代表の衆院東京12区に含まれ、国政の自公選挙協力の象徴的な地域。次期衆院選は太田氏の後継が出馬するため、これまで以上に自公協力は必須で、国政の枠組みを優先した格好だ。
敵と味方がくっつく「ねじれ状態」。有権者には分かりにくい構図になり、裏切られた形の都民ファ幹部は「都民にどう説明するんだ」と恨み節をこぼす。
また都議会に所属議員が1人しかいない立民は元区議の斉藤里恵さん(36)を立て、共産と選挙協力する。党幹部は「全力で戦う」と意気込む。維新は現在都議会の勢力がゼロの中、会社員の佐藤古都さん(32)で議席復活を狙う。このほか、NHKから国民を守る党推薦の動画配信業の新藤加菜さん(27)も出馬を表明しており、経歴が多彩な女性5人の争いとなりそうだ。
東京新聞 2020年6月25日 11時48分
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