■男性の接種もがんリスクの低減に役立つ
子宮頸がんは、子宮頸部と呼ばれる子宮の入り口部分にできるがんです。日本では毎年、約1万1000人の女性が子宮頸がんと診断され、年間約1200人(30歳未満)がこの病気によって子宮を失い、約2800人が亡くなっています。最新(2017年、2018年)の分析では、一生のうちに75人に1人の女性が子宮頸がんと診断され、325人に1人は子宮頸がんで死亡すると推定されています(*1)。
子宮頸がんの95%以上は、HPVの感染が原因で起こります。HPVは性的な接触により感染します。性交渉の経験がある女性のうち50%〜80%はHPVに感染していると推計されています。しかし、HPVに感染した女性が、全員子宮頸がんになるわけではありません。HPVに感染しても、90%以上の人において、ウイルスは2年以内に自然に排除されます。残りの数%の人のうち、数年から数十年にわたってHPVに持続感染していた女性が、子宮頸がんになる可能性を持っています。
HPVには100種類以上のタイプ(型)がありますが、子宮頸がんの発生にかかわるのはごく一部です。それらは「高リスク型HPV」と呼ばれています。日本人の子宮頸がんの約6割は、高リスク型HPVのうちの「HPV16」と「HPV18」の感染によって生じています。
高リスク型HPVに感染した女性の一部で、感染細胞の変形が進み、前がん病変(高度異形成、上皮内がん)になり、異常な細胞が子宮の外側に向けて広がっていくと、子宮頸がんと診断される状態になります。前がん病変の段階、または、子宮頸がんでも早期の場合は、子宮を残して異常な細胞のみを切り取る手術(円錐切除術)が適用されます。さらに進行すれば、子宮や卵巣、周囲のリンパ節まで手術で取り除く必要が出てきます。
■予防の要はHPVワクチン
子宮頸がんの95%以上は、HPVに感染しなければ防ぐことができます。残念ながら、コンドームでは感染を完全に防ぐことはできません。一番確実な予防策は「生涯にわたって性交渉をしないこと」になりますが、これを徹底したら人類は滅びてしまいます。そこで導入された予防策が、HPVワクチンの接種です。2006年に欧米で発売され、それ以降、世界的に広く接種されているHPVワクチンは、高リスク型のHPV16型、18型と、良性の尖圭コンジローマの原因となる6型、11型の4つの型に対する免疫がつく「4価HPVワクチン」です。このほか、9価のHPVワクチンが、米国では2014年に、欧州では2015年に承認され、その後世界の多くの国で接種されるようになっています(日本では2020年7月に承認を得ていますが、10月20日時点で未発売)。
尖圭コンジローマは、HPVの感染によって性器の周辺に良性のイボが生じる疾患で、やはり性交渉によって感染します。自然治癒する場合もありますが、薬物療法、凍結療法、外科的治療が必要になる場合もあります。
HPVワクチンを接種すると、ワクチンが対象としている型のHPVの新たな感染と、これによる性器のイボと子宮頸部の前がん病変の発生が予防されることは、これまでに示されていました。しかし、上述したように、子宮頸がんは、高リスク型のHPVに感染した後、発症するまでに数年から数十年かかるため、HPVワクチンの接種者と非接種者の子宮頸がん発症リスクに有意な差が見られるようになるまでには、相当な観察期間を必要とします。そのため、HPVワクチンによる子宮頸がんの予防効果を示した研究結果はこれまで報告されていませんでした。
■HPVワクチンは子宮頸がんのリスクを63%減らした
今回、HPVワクチンの接種が子宮頸がんの発症率の低下と関係することを初めて示したのは、スウェーデンKarolinska研究所のJiayao Lei氏らの研究グループです(*2)。著者らは、スウェーデンの人口統計と保健に関する全国規模の登録を用いて、2006年から2017年に10歳から30歳だった女性167万2983人を追跡し、子宮頸がんの発症率と4価HPVワクチンの接種との関係を検討しました。子宮頸がんの発症率は、HPVワクチンを接種していた群、接種していなかった群のいずれにおいても、23歳以降に急上昇していました。
結果に影響を及ぼすと考えられる様々な要因を考慮した上で分析したところ、ワクチンを接種していなかった群に比べ、ワクチンを接種していた群では、30歳までの子宮頸がん発症リスクが63%低くなっていまいた。ワクチンを接種した年齢別にみると、17歳未満で初回の接種を受けた女性では子宮頸がん発症リスクは88%低く、17〜30歳で接種を受けた女性では53%低下していました。
以下ソース先で
2020/10/22
https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/column/15/050800004/101900146/
子宮頸がんは、子宮頸部と呼ばれる子宮の入り口部分にできるがんです。日本では毎年、約1万1000人の女性が子宮頸がんと診断され、年間約1200人(30歳未満)がこの病気によって子宮を失い、約2800人が亡くなっています。最新(2017年、2018年)の分析では、一生のうちに75人に1人の女性が子宮頸がんと診断され、325人に1人は子宮頸がんで死亡すると推定されています(*1)。
子宮頸がんの95%以上は、HPVの感染が原因で起こります。HPVは性的な接触により感染します。性交渉の経験がある女性のうち50%〜80%はHPVに感染していると推計されています。しかし、HPVに感染した女性が、全員子宮頸がんになるわけではありません。HPVに感染しても、90%以上の人において、ウイルスは2年以内に自然に排除されます。残りの数%の人のうち、数年から数十年にわたってHPVに持続感染していた女性が、子宮頸がんになる可能性を持っています。
HPVには100種類以上のタイプ(型)がありますが、子宮頸がんの発生にかかわるのはごく一部です。それらは「高リスク型HPV」と呼ばれています。日本人の子宮頸がんの約6割は、高リスク型HPVのうちの「HPV16」と「HPV18」の感染によって生じています。
高リスク型HPVに感染した女性の一部で、感染細胞の変形が進み、前がん病変(高度異形成、上皮内がん)になり、異常な細胞が子宮の外側に向けて広がっていくと、子宮頸がんと診断される状態になります。前がん病変の段階、または、子宮頸がんでも早期の場合は、子宮を残して異常な細胞のみを切り取る手術(円錐切除術)が適用されます。さらに進行すれば、子宮や卵巣、周囲のリンパ節まで手術で取り除く必要が出てきます。
■予防の要はHPVワクチン
子宮頸がんの95%以上は、HPVに感染しなければ防ぐことができます。残念ながら、コンドームでは感染を完全に防ぐことはできません。一番確実な予防策は「生涯にわたって性交渉をしないこと」になりますが、これを徹底したら人類は滅びてしまいます。そこで導入された予防策が、HPVワクチンの接種です。2006年に欧米で発売され、それ以降、世界的に広く接種されているHPVワクチンは、高リスク型のHPV16型、18型と、良性の尖圭コンジローマの原因となる6型、11型の4つの型に対する免疫がつく「4価HPVワクチン」です。このほか、9価のHPVワクチンが、米国では2014年に、欧州では2015年に承認され、その後世界の多くの国で接種されるようになっています(日本では2020年7月に承認を得ていますが、10月20日時点で未発売)。
尖圭コンジローマは、HPVの感染によって性器の周辺に良性のイボが生じる疾患で、やはり性交渉によって感染します。自然治癒する場合もありますが、薬物療法、凍結療法、外科的治療が必要になる場合もあります。
HPVワクチンを接種すると、ワクチンが対象としている型のHPVの新たな感染と、これによる性器のイボと子宮頸部の前がん病変の発生が予防されることは、これまでに示されていました。しかし、上述したように、子宮頸がんは、高リスク型のHPVに感染した後、発症するまでに数年から数十年かかるため、HPVワクチンの接種者と非接種者の子宮頸がん発症リスクに有意な差が見られるようになるまでには、相当な観察期間を必要とします。そのため、HPVワクチンによる子宮頸がんの予防効果を示した研究結果はこれまで報告されていませんでした。
■HPVワクチンは子宮頸がんのリスクを63%減らした
今回、HPVワクチンの接種が子宮頸がんの発症率の低下と関係することを初めて示したのは、スウェーデンKarolinska研究所のJiayao Lei氏らの研究グループです(*2)。著者らは、スウェーデンの人口統計と保健に関する全国規模の登録を用いて、2006年から2017年に10歳から30歳だった女性167万2983人を追跡し、子宮頸がんの発症率と4価HPVワクチンの接種との関係を検討しました。子宮頸がんの発症率は、HPVワクチンを接種していた群、接種していなかった群のいずれにおいても、23歳以降に急上昇していました。
結果に影響を及ぼすと考えられる様々な要因を考慮した上で分析したところ、ワクチンを接種していなかった群に比べ、ワクチンを接種していた群では、30歳までの子宮頸がん発症リスクが63%低くなっていまいた。ワクチンを接種した年齢別にみると、17歳未満で初回の接種を受けた女性では子宮頸がん発症リスクは88%低く、17〜30歳で接種を受けた女性では53%低下していました。
以下ソース先で
2020/10/22
https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/column/15/050800004/101900146/