住宅改良事業前のツラッティ千本周辺を再現した模型。手前の灰色部分が千本北大路交差点で、当時の交差点以北は狭い道だった(京都市北区・ツラッティ千本)
住宅改良前の千本地域の写真。劣悪な環境の民家が密集していた。奥は北大路通
来年3月で現在の場所での資料展示を終えるツラッティ千本(京都市北区・千本北大路交差点)
同和問題をはじめとする人権資料の展示施設「ツラッティ千本」(京都市北区)が2021年春、現在の場所から元楽只小(同区)に移転する。現在地の周辺は長くいわれなき差別を受けてきた地域でもあり、1994年の開館以来、在日コリアン差別やハンセン病などの幅広い人権問題を展示や講演会などで取り上げてきた。現在地で最後の特別展を開き、四半世紀の歩みを振り返っている。
ツラッティ千本は、京都市が94年12月1日、千本北大路北西の市営住宅3階に開館した。市内の被差別地域の中でも、地元の差別の歴史を正面から取り上げた初の展示施設だった。
施設名は「連れ合って」「連(つら)って」という言葉を元に、人の結びつきを大切にする意味で付けられた。現在は、NPO法人「くらしねっと21」(北区)が運営・管理している。
「ツラッティ千本25年のあゆみ」と題した最後の特別展では、千本地域の歴史や多様な人権問題に焦点を当てた過去の企画展を、当時の資料やチラシなどを交えて振り返っている。
2003年の企画展「部落と在日」は、今も深刻な在日コリアンへの差別問題と同和問題との関わりを取り上げた。08年は「千本の目医者」をテーマに、衛生状態が悪い千本地域で流行した眼病「トラコーマ」の治療に尽力した明治期の医師・益井茂平らを紹介した。13年は、すぐ北側にある佛教大から性同一性障害の学生を招き、講演会を開いた。
また、常設展では、差別に苦しんだ施設周辺地域の歴史を取り上げてきた。住宅改良事業で市営住宅が建つ1960年代以前、劣悪な環境の民家が並んでいた写真や、街並みの再現模型、「闘鶏があった」「どぶろくが買えた」など昔の暮らしを文字とともに伝える地図、差別で厳しい日常を強いられた住民の証言記録など、300点以上を展示する。近くの楽只小児童が古老への聞き取りを基に手作りしたかつての長屋の模型もある。
近くの旭丘中(北区)元教頭でツラッティ千本事務局の菅野泰敏さん(64)は、開所当初から地域の調査研究を続けるなどして運営に関わってきた。「自ら被差別地域と名乗りを上げて人々を受け入れ、差別や歴史に向き合った点が意義深かった」と振り返る。来館者が「(被差別地域と)隠すことなく発信するのがすごい」と感想を述べたこともたびたびあったという。
現施設は、築57年で老朽化した市営住宅の取り壊しのため、来年3月で閉館する。移転先は、南へ約200メートル離れた元楽只小の2階。来年度前半にも再開館の見通しという。
展示スペースは現在の6割程度に縮小するため、資料を全て並べるのは難しくなりそうだが、菅野さんは「元楽只小は、先進的に衛生面の改善や人権学習に取り組んできた歴史がある。差別を無くそうと努力した先人の遺志を受け継いでいく」と意気込んでいる。
特別展は12月26日まで(日、月、祝日休)の午前10時〜午後4時半。無料。
京都新聞 12/12(土) 14:01配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20201212-00543562-kyt-l26
住宅改良前の千本地域の写真。劣悪な環境の民家が密集していた。奥は北大路通
来年3月で現在の場所での資料展示を終えるツラッティ千本(京都市北区・千本北大路交差点)
同和問題をはじめとする人権資料の展示施設「ツラッティ千本」(京都市北区)が2021年春、現在の場所から元楽只小(同区)に移転する。現在地の周辺は長くいわれなき差別を受けてきた地域でもあり、1994年の開館以来、在日コリアン差別やハンセン病などの幅広い人権問題を展示や講演会などで取り上げてきた。現在地で最後の特別展を開き、四半世紀の歩みを振り返っている。
ツラッティ千本は、京都市が94年12月1日、千本北大路北西の市営住宅3階に開館した。市内の被差別地域の中でも、地元の差別の歴史を正面から取り上げた初の展示施設だった。
施設名は「連れ合って」「連(つら)って」という言葉を元に、人の結びつきを大切にする意味で付けられた。現在は、NPO法人「くらしねっと21」(北区)が運営・管理している。
「ツラッティ千本25年のあゆみ」と題した最後の特別展では、千本地域の歴史や多様な人権問題に焦点を当てた過去の企画展を、当時の資料やチラシなどを交えて振り返っている。
2003年の企画展「部落と在日」は、今も深刻な在日コリアンへの差別問題と同和問題との関わりを取り上げた。08年は「千本の目医者」をテーマに、衛生状態が悪い千本地域で流行した眼病「トラコーマ」の治療に尽力した明治期の医師・益井茂平らを紹介した。13年は、すぐ北側にある佛教大から性同一性障害の学生を招き、講演会を開いた。
また、常設展では、差別に苦しんだ施設周辺地域の歴史を取り上げてきた。住宅改良事業で市営住宅が建つ1960年代以前、劣悪な環境の民家が並んでいた写真や、街並みの再現模型、「闘鶏があった」「どぶろくが買えた」など昔の暮らしを文字とともに伝える地図、差別で厳しい日常を強いられた住民の証言記録など、300点以上を展示する。近くの楽只小児童が古老への聞き取りを基に手作りしたかつての長屋の模型もある。
近くの旭丘中(北区)元教頭でツラッティ千本事務局の菅野泰敏さん(64)は、開所当初から地域の調査研究を続けるなどして運営に関わってきた。「自ら被差別地域と名乗りを上げて人々を受け入れ、差別や歴史に向き合った点が意義深かった」と振り返る。来館者が「(被差別地域と)隠すことなく発信するのがすごい」と感想を述べたこともたびたびあったという。
現施設は、築57年で老朽化した市営住宅の取り壊しのため、来年3月で閉館する。移転先は、南へ約200メートル離れた元楽只小の2階。来年度前半にも再開館の見通しという。
展示スペースは現在の6割程度に縮小するため、資料を全て並べるのは難しくなりそうだが、菅野さんは「元楽只小は、先進的に衛生面の改善や人権学習に取り組んできた歴史がある。差別を無くそうと努力した先人の遺志を受け継いでいく」と意気込んでいる。
特別展は12月26日まで(日、月、祝日休)の午前10時〜午後4時半。無料。
京都新聞 12/12(土) 14:01配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20201212-00543562-kyt-l26