毎日新聞2020年12月27日 17時58分(最終更新 12月27日 18時44分)
新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない中、イスラム教徒が多い国ではワクチン接種について政府やイスラム法学者が「問題ない」との見解を相次いで出している。一方で、インドでは一部法学者が「中国製ワクチンは認めない」との見解を示した。
「材料に関係なく、イスラム教徒が接種しても構わない。ワクチンは生命や生活を守る助けになり、こうした目的は明らかにイスラムの教えの一部だ」。シンガポール紙ストレーツ・タイムズ(電子版)によると、シンガポールではムフティ(イスラム法学の権威)のナジルディン師が13日、ワクチン接種を奨励する見解を示した。人口の約1割を占めるマレー系のイスラム教徒の間で不安が広がっていたため、ナジルディン師が混乱を防ぐために対応した。
中東のエジプトでも、イスラム教の解釈を示す政府機関ファトワ(宗教令)庁の幹部が21日、地元メディアに対し、仮に豚由来の成分が含まれていたとしても「(製造過程で)性質が転換されるため、不浄だとの前提での判断は成り立たなくなる」として、接種を認める見解を示した。
アラブ首長国連邦の国営通信も22日、イスラム教の権威機関であるファトワ評議会が「他に方法がないならば、人体を守る必要性が優先され、ワクチンは豚に関するイスラムの規制対象にはならない」とのファトワを出したと伝えた。
だが、インド誌インディア・トゥデイ(電子版)によると、南部ムンバイで23日に地元のイスラム法学者の会議が開かれ「中国製ワクチンは豚由来のゼラチンを含んでいるとの情報があるため、イスラム教徒の使用は許されない」と結論づけた。
【秋山信一】
https://mainichi.jp/articles/20201227/k00/00m/030/148000c