医療従事者を対象にした新型コロナウイルスワクチンの先行接種が始まって3週間。
ワクチンには付き物であるはずの副反応の発生についてメディアが連日のように取り上げていることから、接種を不安視する人たちも少なくない。
そんな中、ワクチンに関する不正確な情報や誤った情報が拡散してしまうインフォデミック(情報氾濫)を防ごうと
国会議員や医師らによって立ち上げられたサイトが『これでわかる!新型コロナワクチン情報』だ。
運営する「新型コロナワクチン公共情報タスクフォース」のメンバーで、東京大学大学院特任研究員の坂元晴香医師は
「国民の皆さんの関心が高い一方、子宮頸がんワクチンについては正しい情報があまり伝わらず、非常に有効なものであるにも関わらず
“怖い”というイメージが付いてしまったことがあり、医療関係者を中心に非常に強い危機感を抱いている。
まずは実際にどれくらいの頻度で何が起きるのか数字を客観的に伝えて、正しい情報を知った上で判断してもらいたいという思いで開設した」と話す。
『これでわかる!新型コロナワクチン情報』によれば、アナフィラキシーが起こる頻度は100万人あたり全身麻酔が約200人、
抗生剤が約400人に対し、新型コロナワクチン(mRNAワクチン)は約5人となっている。
確かにインフルエンザワクチン(約1.3人)に比べれば頻度は高いが、
接種が一般的になったインフルエンザワクチンに関する報道に比べて、やはり報道量が多いといえるのではないか。
「ドラッグストアにあるような市販薬でもアナフィラキシーが起きることはあるし、病院でも日々起きていることだが、そういったものについては報道されていないと思う。
一方でコロナワクチンのアナフィラキシーだけを報道してしまうことで、“アナフィラキシーが起きやすくて怖いワクチンなんだ”というイメージが持たれてしまいかねない」
一方、田村憲久厚生労働相が昨日の会見で「アメリカが確か100万人で5例、イギリスは100万人で10例だったと記憶しているが、
日本はいま7万件接種で8件という話だからアメリカ、イギリスと比べると多いように見える」と述べたことも大きく取り上げられた。
「アメリカやイギリスは先行して接種が始まっているし、幅広い年代・職種の方への接種も行われているので、
母集団が医療従事者だけの日本とは状況が異なっている。やはりアメリカ、イギリスと同じくらい接種が進まないと、
統計的に見て日本が有意に多いかどうか、はっきりしたことは言えない」とした。
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「因果関係があるかどうかは分からない段階でも、厚労省はルールに基づいて起きたことを全て発表する。
それを右から左にメディアが報道してしまっていることが問題だ。例えば先日も60代の女性が接種後にくも膜下出血で亡くなったという発表があったが、
これもそのまま“60代女性がワクチン接種後に死亡”というような見出しを付け、因果関係があるかのように報じてしまった。
ワクチンとくも膜下出血には関係はほぼないというのが医療関係者の見方だし、“60代女性がABEMA Primeを見た後に亡くなりました”
と言っているのと変わらない情報だ。本文を読めば“因果関係は分かりません”と書いていたりもするが、それでも見出しだけを読んで“ワクチンで死ぬんだ”と思う人もいるだろう。
有害事象やアナフィラキシーは必ずあり得ることだし、それを報じてはいけないとは思わない。しかし、メディアはセンセーショナルな見出しで煽りすぎだ。
このような全体像を見ない取り上げ方は、果たして正しい報道だと言えるのだろうか。メディアによる風評被害は子宮頸がんの問題でも指摘され続けてきたにも関わらず、
両論表記しなければいけないから、という考え方で“反ワクチン”のような話まで持ち出してしまっては、何の解決にもならない」と厳しく指摘。
慶應義塾大学特任准教授でプロデューサーの若新雄純氏も「加えて、ワイドショーの扱い方とコメンテーターの発言だろう。
テレビ局を始めとした報道機関は、“自分たちは事実しか言えないから”と、僕らのような第三者の人間に“さあどうでしたか?”コメントをさせる。それが時に共感を呼んだり、煽りになったりするということだ。
僕自身もワイドショーのコメンテーターをしているし、ただ淡々と事実を伝えられるだけでは視聴者は面白くないし視聴率も上がらないということで存在しているとわかっている。
ただし、ワクチンの問題に関しては見出しもコメントも面白くする必要は一切ない」と話した。
https://times.abema.tv/news-article/8649502