ネブラ・ディスクはドイツで発見され、現在はザクセン=アンハルト州立のハレ先史博物館が所収している
「世界最古の星図」だとされる遺物が、ロンドンの大英博物館で展示されることになった。
「ネブラ・ディスク」と呼ばれる円盤は、青銅と金からなり、約3600年前に作られたと見られている。1999年にドイツで発見され、20世紀でも特に重要な考古学的発見のひとつとされる。
ただし、その歴史的価値は論争の対象で、少数の研究者は本物ではないと疑っている。
円盤は直径約30センチ。青緑色の青銅部分に、太陽、月、星、至点などを表す金色のシンボルがはめ込まれている。
国連教育科学文化機関(ユネスコ)は2013年に、この円盤を「世界の記憶遺産」として登録。円盤は人類がかつて天体や天文について、どのように認識していたかをうかがわせるものだとしている。
ザクセン=アンハルト州立のハレ先史博物館が所蔵しているが、大英博物館に貸し出されることになった。国外への貸与はここ15年で初めて。
大英博物館によると、ストーンヘンジに関する展覧会の一部として、来年2月から展示される。
「ストーンヘンジの世界」展を担当する学芸員、ニール・ウィルキン氏は、「驚くような展示になる」と話す。
ネブラ・ディスクはドイツ・ザクセン=アンハルト州ネブラ近郊のミッテルベルクで見つかった
「ネブラ・ディスクと太陽のペンダントは、欧州青銅器時代から伝わり現存する遺物の中でも特に見事なものだ」とウィルキン氏は話す。「どちらも3000年以上、地下に眠っていたのが、つい最近、発掘された」。
「どちらもストーンヘンジからは何百キロも離れた場所で見つかったものの、当時イギリス、アイルランド、欧州大陸の広い範囲にわたり、ストーンヘンジの周りにあって互いにつながっていた、広大な世界に光を当てる遺物となる」
英ソールズベリーにある巨石遺産、ストーンヘンジは、紀元前2500年ごろに作られたとされる。当時の目的は不明だが、複数の巨石が太陽の進行と結びついて配置されている。
ネブラ・ディスクでも、太陽とその至点が表現されている。北欧青銅器時代の信仰において、太陽は重要な役割を担っていたと言われている。
青銅器時代に詳しい考古学者ミランダ・オルドハウス=グリーン教授は2004年にBBCに対して、ネブラ・ディスクに配置されたシンボルは「どれも、当時の欧州全域に広がっていた信仰体系の一部だ」と説明した。「当時の人たちは天を見上げ、崇拝し、太陽や月を崇拝し、日の出や月の出に合わせて行動していた」のだという。
「そしてネブラはそういうもののシンボルをすべて集約しているので、私たちは初めて当時の人たちが実際に何を見て、それをどう受け止めて、何を信仰していたのか知ることができる」
オルドハウス=グリーン教授は当時、ネブラ・ディスクは聖典の一種だと話していた。
■盗掘者が発見
ディスクはドイツ・ネブラ近くの発掘場で見つかった。周りには、青銅器時代の剣や斧(おの)などもあった。
無許可の盗掘者2人が金属探知機で発見し、後に警察がおとり捜査で回収した。
青銅器時代のものだと広く認識されているが、偽物だという意見もある。
昨年9月には、ドイツの研究者2人がディスクの由来について、実は約2600年前の鉄器時代のものだろうという論文を発表。ここから真贋論争が再燃した。
CNNによると、ディスクを所蔵するドイツのハレ博物館はこの主張は「理解不能だ」として、研究者たちは他の文献の発見を無視していると反論した。
大英博物館の「ストーンヘンジの世界」展は来年2月17日から7月17日まで開かれる。
2021年10月19日 10:09
https://www.bbc.com/japanese/58950188