日経ビジネス2022.6.14
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00197/
■天と地がひっくり返らないと……
ご承知のとおり、生涯未婚率は増え続けている。
1960年代までは2%程度で推移していたが、その後は上昇に転じ、1990年には男性が5%を超え、2000年には女性も5%に突入した。以前は男女とも足並みがそろっていたのに、男性未婚率の爆増ぶりは著しく、20年の国勢調査で男性28.3%(前回24.8%)と3人に1人に。が、同じ男性でも正社員か? 非正規か? で、結婚しない・できない率が全く異なる。
雇用形態別に分析すると、非正規雇用の未婚率が圧倒的に高いのだ。……という事実は、私自身、これまで何度も取り上げてきた。とりわけ衝撃的だったのが、14年に大手メディアが一斉に報じた「30代の非正規の7割近くが未婚」という総務省の就業構造基本調査の結果だった。
そして、ついに、なんと50歳の時点での未婚率が6割に達した! というではないか。30代なら「まぁ、晩婚化進んでるし~」と思えたけど、50歳で6割とは、あまりにショックで声にならない……いや、悲鳴しか出ない。
総務省が45~49歳と50~54歳の未婚率を分析したところ、正社員の男性は19.6%、非正規(派遣、パート、アルバイト)社員では男性60.4%と6割を超えたのだ。男性非正規の未婚率は15年の国勢調査では50.7%だったので、約10ポイント上昇したことになる(注:15年は不詳値にて、男23.4%、女14.1%から修正)。
さらに、20年時点で40~44歳の未婚率も70.1%に達しているので、25年の50歳時点での非正規男性の生涯未婚率は、さらに増えて7割近くになる可能性が高いらしい(冒頭記事より)。
ちなみに、厚生労働省の「平成22年社会保障を支える世代に関する意識等調査」では、2010年の30歳代男性の正規雇用者と非正規雇用者の未婚率は、30.7%と75.6%で、2.5倍もの開きがある。要するに、あれだ。天と地がひっくり返るようなことでも起きない限り、非正規男性の未婚率が改善することはない。少なくとも、10年時の30代が50代になる30年までは……無理、だ。
実際、改めて周りを見渡してみると、仕事でご一緒する非正規の男性はほぼ、独身である。
例えば、雑誌のインタビューの場合、出版社の正社員から依頼がきて、インタビュー当日に「ライターの〇〇です」などと自己紹介を受けるが、彼ら・彼女らの多くは、フリーランスの個人事業主で、正規雇用の人はほとんどいない。
インタビューのテーマは大抵、ミドルの働き方や生き方に関する内容なので、話題は自然に親の介護問題や、自分たちの将来不安などに流れる。すると、彼らが未婚者であることが分かる。親と同居していたり、在宅で介護していたり。めったに話さない個人的な問題も、親の介護問題や老後問題が絡むと自然と出る。
■男性非正規、多くは「やむなく非正規」
数年前に「気がつけば周りは非正規だらけだ」と思ったけど、今はそれに「独身」が加わった。しかも、その対象は男性。女性の非正規も多いが、大抵結婚している。そういった意味でも、件の数字は、私の生活世界ではリアリティー満載なのだ。
むろん、昭和の高度成長期は「結婚して一人前」なんて言説がまかり通った時代だし、「結婚できないじゃなくて、結婚しない人が増えてるだけでしょ?」だの、「ライフスタイルの変化でしょ?」だの、「別に結婚がすべてじゃないのだから、個人の自由」という意見もあるだろう。しかし、今の独身はかつての“独身貴族”のような存在ではない。
だって、彼らは非正規。企業がコスト削減のために増やした非正規雇用だ。金銭的にも、時間的にも、精神的にも余裕がない非正規という雇用形態が招いた、「個人の選択」と言えよう。ご覧の通り、25歳~34歳の男性非正規の割合が増加傾向にあることや、男性非正規の多くが「やむなく非正規」であることを鑑みれば、「ひとそれぞれだし~」で終わらせる問題ではないことも明白である。
※以下有料記事
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00197/
■天と地がひっくり返らないと……
ご承知のとおり、生涯未婚率は増え続けている。
1960年代までは2%程度で推移していたが、その後は上昇に転じ、1990年には男性が5%を超え、2000年には女性も5%に突入した。以前は男女とも足並みがそろっていたのに、男性未婚率の爆増ぶりは著しく、20年の国勢調査で男性28.3%(前回24.8%)と3人に1人に。が、同じ男性でも正社員か? 非正規か? で、結婚しない・できない率が全く異なる。
雇用形態別に分析すると、非正規雇用の未婚率が圧倒的に高いのだ。……という事実は、私自身、これまで何度も取り上げてきた。とりわけ衝撃的だったのが、14年に大手メディアが一斉に報じた「30代の非正規の7割近くが未婚」という総務省の就業構造基本調査の結果だった。
そして、ついに、なんと50歳の時点での未婚率が6割に達した! というではないか。30代なら「まぁ、晩婚化進んでるし~」と思えたけど、50歳で6割とは、あまりにショックで声にならない……いや、悲鳴しか出ない。
総務省が45~49歳と50~54歳の未婚率を分析したところ、正社員の男性は19.6%、非正規(派遣、パート、アルバイト)社員では男性60.4%と6割を超えたのだ。男性非正規の未婚率は15年の国勢調査では50.7%だったので、約10ポイント上昇したことになる(注:15年は不詳値にて、男23.4%、女14.1%から修正)。
さらに、20年時点で40~44歳の未婚率も70.1%に達しているので、25年の50歳時点での非正規男性の生涯未婚率は、さらに増えて7割近くになる可能性が高いらしい(冒頭記事より)。
ちなみに、厚生労働省の「平成22年社会保障を支える世代に関する意識等調査」では、2010年の30歳代男性の正規雇用者と非正規雇用者の未婚率は、30.7%と75.6%で、2.5倍もの開きがある。要するに、あれだ。天と地がひっくり返るようなことでも起きない限り、非正規男性の未婚率が改善することはない。少なくとも、10年時の30代が50代になる30年までは……無理、だ。
実際、改めて周りを見渡してみると、仕事でご一緒する非正規の男性はほぼ、独身である。
例えば、雑誌のインタビューの場合、出版社の正社員から依頼がきて、インタビュー当日に「ライターの〇〇です」などと自己紹介を受けるが、彼ら・彼女らの多くは、フリーランスの個人事業主で、正規雇用の人はほとんどいない。
インタビューのテーマは大抵、ミドルの働き方や生き方に関する内容なので、話題は自然に親の介護問題や、自分たちの将来不安などに流れる。すると、彼らが未婚者であることが分かる。親と同居していたり、在宅で介護していたり。めったに話さない個人的な問題も、親の介護問題や老後問題が絡むと自然と出る。
■男性非正規、多くは「やむなく非正規」
数年前に「気がつけば周りは非正規だらけだ」と思ったけど、今はそれに「独身」が加わった。しかも、その対象は男性。女性の非正規も多いが、大抵結婚している。そういった意味でも、件の数字は、私の生活世界ではリアリティー満載なのだ。
むろん、昭和の高度成長期は「結婚して一人前」なんて言説がまかり通った時代だし、「結婚できないじゃなくて、結婚しない人が増えてるだけでしょ?」だの、「ライフスタイルの変化でしょ?」だの、「別に結婚がすべてじゃないのだから、個人の自由」という意見もあるだろう。しかし、今の独身はかつての“独身貴族”のような存在ではない。
だって、彼らは非正規。企業がコスト削減のために増やした非正規雇用だ。金銭的にも、時間的にも、精神的にも余裕がない非正規という雇用形態が招いた、「個人の選択」と言えよう。ご覧の通り、25歳~34歳の男性非正規の割合が増加傾向にあることや、男性非正規の多くが「やむなく非正規」であることを鑑みれば、「ひとそれぞれだし~」で終わらせる問題ではないことも明白である。
※以下有料記事