世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に恨みを持つ山上徹也容疑者の安倍元首相銃撃事件から、3カ月余りがたった。同連合と自民党議員を中心とする政治家との結び付きが問題視されている。韓国発祥の特異な教義を持つ教団が、「無宗教」を自認する人が多い日本で、なぜ多くの信者を獲得し、影響力を持つのか。社会問題化した宗教は規制することができるのか。宗教社会学者の櫻井義秀氏に聞いた。
■旧統一教会は「カルト」なのか
(中略)
■“居場所”を提供する「疑似家族」
「八百万(やおよろず)の神々」と言うように、日本では古代から拝む対象が多い。6世紀の仏教伝来当初、神道との対立があったが、奈良時代には、日本の神々はさまざまな仏の化身として日本の地に現れた権現(ごんげん)だとする神仏習合思想が一般的になった。
「日本の仏教は伝来してから常に変容を重ねてきました。明治以降、僧侶は出家することなく妻帯できること、寺が世襲制であること自体、(他国の仏教と比較して)異色です。そこからさらに変質しているのが仏教系の在家主義に立つ新宗教です。
その一方で、明治以降、キリスト教が日本人の宗教観に大きな影響を与えた。
「宗教とは、明確な信仰の対象があること、教会組織に属していること、決まった儀式を行うことだと捉えるようになりました。檀家や氏子であることと、信仰は結びつかない。大多数の日本人は初詣、墓参りや法事など、宗教的行事に参加しても、信者であるとは思ってないのです」
統計数理研究所が5年ごとに実施している「日本人の国民性調査」では、1953年の調査開始時以降、「宗教を信じていない」が常に大半を占め、2018年で74%だった。無宗教を自認する人が多い中で、なぜ多くの新宗教が広がったのだろうか。
「1950~60年代は、新宗教が最も拡大した時期です。高度経済成長期に地方から都会に働きに出てきて、“居場所”を求める人たちが多かったことが背景にあります」
「小さな町工場や商店などで働く人たちに、居場所を提供して、うまく組織化したのが仏教系の新宗教でした。創価学会は、この時期に600~700万人の会員を獲得しました。月に一度は地域単位の集まりを持ち、連絡を頻繁に取り合ってお互いを気に掛ける。疑似家族や “ムラ”の機能を果たしたのです」
■「霊感商法」と正体を隠した布教
一方、統一教会は大学生を対象とした布教で広がった。
(中略)
■イエスの“失敗”後に遣わされた再臨主
統一教会の教義は、後にサタンとなる堕天使ルーシェルとエバが不倫を犯し、神に背いた悪の血統がアダムを経て人類全てに相続されたと説く。神はイエスに人間の娘をめとらせて、無原罪の子孫を残す計画だったが果たせず、「再臨主」(文鮮明)を遣わしたとする。韓国は「アダム国家」で日本は「エバ国家」であり、アダムを堕落させたエバが韓国に奉仕するのは当然だとする。合同結婚式による祝福で、再臨主がマッチングした信者同士が結ばれ、神を中心にした家庭が完成し、無原罪の子どもが生まれる。これまでに、約7000人の日本人女性が合同結婚式を経て韓国で暮らすという。
(中略)
「反日的な教義を持つ教団が、なぜ日本で信者を多く獲得できるのか。海外メディアからよく聞かれる質問です。その理由として、日本人が宗教に関する予備知識を持たないことが大きい。だから、“メシアの再臨” “合同結婚”をうたう教義を変だと思わない。先祖は地獄で苦しんでいるので地上で善行(献金)を積まなければ救われないという教えも受け入れてしまう。主流派のキリスト教や日本の伝統的先祖供養について知っていたら、そもそも入信しません」
■「オウム真理教」も終わっていない
日本国憲法は、戦前の「国家神道」体制に対する反省に基づき、「政教分離」「信教の自由」を定めた。公教育が禁じているのは特定の宗教のための教育だが、学校では、宗教についての一般的な知識さえ学ぶ機会がほとんどない。
「知識教育の一環として、世界にはさまざまな宗教があるということを含め、小学校から宗教についての基本的な知識を育むべきです。そうすれば、社会の中に宗教に関するある種の基準、社会通念が生まれる。そこから著しくずれているものに対して警戒心を持つようになります。宗教リテラシーがないと、根拠がないことを説かれて勧誘されても、おかしいと判断できない。無防備な状態に置かれているのです」(以下ソース)
10/19(水) 15:03配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/f012eb6deefd9fc08b689a94cf29ace795b78ca8
■旧統一教会は「カルト」なのか
(中略)
■“居場所”を提供する「疑似家族」
「八百万(やおよろず)の神々」と言うように、日本では古代から拝む対象が多い。6世紀の仏教伝来当初、神道との対立があったが、奈良時代には、日本の神々はさまざまな仏の化身として日本の地に現れた権現(ごんげん)だとする神仏習合思想が一般的になった。
「日本の仏教は伝来してから常に変容を重ねてきました。明治以降、僧侶は出家することなく妻帯できること、寺が世襲制であること自体、(他国の仏教と比較して)異色です。そこからさらに変質しているのが仏教系の在家主義に立つ新宗教です。
その一方で、明治以降、キリスト教が日本人の宗教観に大きな影響を与えた。
「宗教とは、明確な信仰の対象があること、教会組織に属していること、決まった儀式を行うことだと捉えるようになりました。檀家や氏子であることと、信仰は結びつかない。大多数の日本人は初詣、墓参りや法事など、宗教的行事に参加しても、信者であるとは思ってないのです」
統計数理研究所が5年ごとに実施している「日本人の国民性調査」では、1953年の調査開始時以降、「宗教を信じていない」が常に大半を占め、2018年で74%だった。無宗教を自認する人が多い中で、なぜ多くの新宗教が広がったのだろうか。
「1950~60年代は、新宗教が最も拡大した時期です。高度経済成長期に地方から都会に働きに出てきて、“居場所”を求める人たちが多かったことが背景にあります」
「小さな町工場や商店などで働く人たちに、居場所を提供して、うまく組織化したのが仏教系の新宗教でした。創価学会は、この時期に600~700万人の会員を獲得しました。月に一度は地域単位の集まりを持ち、連絡を頻繁に取り合ってお互いを気に掛ける。疑似家族や “ムラ”の機能を果たしたのです」
■「霊感商法」と正体を隠した布教
一方、統一教会は大学生を対象とした布教で広がった。
(中略)
■イエスの“失敗”後に遣わされた再臨主
統一教会の教義は、後にサタンとなる堕天使ルーシェルとエバが不倫を犯し、神に背いた悪の血統がアダムを経て人類全てに相続されたと説く。神はイエスに人間の娘をめとらせて、無原罪の子孫を残す計画だったが果たせず、「再臨主」(文鮮明)を遣わしたとする。韓国は「アダム国家」で日本は「エバ国家」であり、アダムを堕落させたエバが韓国に奉仕するのは当然だとする。合同結婚式による祝福で、再臨主がマッチングした信者同士が結ばれ、神を中心にした家庭が完成し、無原罪の子どもが生まれる。これまでに、約7000人の日本人女性が合同結婚式を経て韓国で暮らすという。
(中略)
「反日的な教義を持つ教団が、なぜ日本で信者を多く獲得できるのか。海外メディアからよく聞かれる質問です。その理由として、日本人が宗教に関する予備知識を持たないことが大きい。だから、“メシアの再臨” “合同結婚”をうたう教義を変だと思わない。先祖は地獄で苦しんでいるので地上で善行(献金)を積まなければ救われないという教えも受け入れてしまう。主流派のキリスト教や日本の伝統的先祖供養について知っていたら、そもそも入信しません」
■「オウム真理教」も終わっていない
日本国憲法は、戦前の「国家神道」体制に対する反省に基づき、「政教分離」「信教の自由」を定めた。公教育が禁じているのは特定の宗教のための教育だが、学校では、宗教についての一般的な知識さえ学ぶ機会がほとんどない。
「知識教育の一環として、世界にはさまざまな宗教があるということを含め、小学校から宗教についての基本的な知識を育むべきです。そうすれば、社会の中に宗教に関するある種の基準、社会通念が生まれる。そこから著しくずれているものに対して警戒心を持つようになります。宗教リテラシーがないと、根拠がないことを説かれて勧誘されても、おかしいと判断できない。無防備な状態に置かれているのです」(以下ソース)
10/19(水) 15:03配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/f012eb6deefd9fc08b689a94cf29ace795b78ca8