困窮家庭支援にデジタルポイント 協力する青果店や飲食店で「人目気にせず」利用可 原資の寄付金不足課題
<東京共助>
物価高の中、生活に困窮する子育て家庭を対象に、デジタルポイントで食料品購入などを支援する事業が注目を集めている。人目を気にせずに買い物ができるのが利点だ。課題は資金面。原資となっている寄付金が足りず、すべての申し込みに対応できていない。事業を手がける認定NPO法人「夢職人」(東京都江東区)の岩切準理事長(40)は「取り組みを広げるには寄付金が1番の課題だ」と訴える。(小形佳奈)
◆夕食を抜く母「子どもに食べさせるため」
「電気代が上がり、物が何でも高い。野菜や果物が手に入るのはありがたい」。利用者の会社員女性(52)は2年前に離婚し、高校2年の息子、中学2年の娘と暮らす。育ち盛りの子どもたちにしっかり食べさせたいと自分は夕食を抜く。「もう、削るところがない」
事業の名称は「Table for Kids(テーブル・フォー・キッズ)」。利用者がスマートフォンの専用アプリをダウンロードすると、協力加盟店で使えるポイントが付与される。利用者は店内のQRコードを読み取り、決済する仕組みだ。
夢職人が、申し込みのあった家庭の経済状況などを審査し、支援対象を決める。現在、利用者は都内16区市に住む108世帯、協力加盟店は、江東、墨田、中央、江戸川の4区内の飲食店や弁当店、青果店など計38店に上る。
◆コロナ禍で「見えない貧困」顕在化
支援のきっかけは、2020年春に国内で流行し始めた新型コロナウイルス禍だった。夢職人が取り組む子どもの体験活動や青少年ボランティアの育成活動などが一斉に休止。地域の子ども支援団体と情報交換する中で、ひとり親家庭の困窮が深刻化している現状が浮かび上がった。
「本当に支援が必要な家庭に、必要な物を届ける仕組みはないか」。岩切さんらは、子育て家庭に聞き取りをした。無料食料配布には「並ぶ時に人目が気になる」との声が寄せられ、スマホ決済を活用する方法を模索。デジタル地域通貨事業者の協力を得て、20年12月に事業を始めた。
加盟店の1つで企画段階から携わったレストラン「mamma cafe 151A」(江東区)の店部浩司さん(50)は「小さな女の子が目をキラキラさせて食べる様子を見て、外食の喜びを体験してもらえて良かった」と手応えを語る。加盟店で唯一の青果店「松沢商店」(墨田区)の松沢隆之さん(48)は「利用者は確実に増えている。『見えない貧困』に気づかされた」と明かした。
ポイントの原資は個人や企業からの寄付金だ。集まった金額に応じて随時、利用者を募集。直近の9月には新たに36世帯の支援を始めたが、申し込みは、千葉、埼玉など隣県も含めて5~6倍もあった。今年の年間寄付目標額の1200万円の半分程度にとどまっている。
夢職人では寄付を呼びかけているほか、都県境を越えた連携を模索している。岩切さんは「誰でも病気やけがで働けなくなるリスクを抱えている。新しいセーフティーネットの形として広げたい」と力を込める。
寄付の方法などの詳細は、夢職人=電03(5935)730x、ホームページの「寄付で子どもの食を支援」へ。
◇
「東京共助」では、首都・東京で生きるのが精いっぱいの人たちの姿やそれを支える共助の現場、行き届かぬ公助の問題点を随時伝えます。
東京新聞 2022年11月17日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/214334
<東京共助>
物価高の中、生活に困窮する子育て家庭を対象に、デジタルポイントで食料品購入などを支援する事業が注目を集めている。人目を気にせずに買い物ができるのが利点だ。課題は資金面。原資となっている寄付金が足りず、すべての申し込みに対応できていない。事業を手がける認定NPO法人「夢職人」(東京都江東区)の岩切準理事長(40)は「取り組みを広げるには寄付金が1番の課題だ」と訴える。(小形佳奈)
◆夕食を抜く母「子どもに食べさせるため」
「電気代が上がり、物が何でも高い。野菜や果物が手に入るのはありがたい」。利用者の会社員女性(52)は2年前に離婚し、高校2年の息子、中学2年の娘と暮らす。育ち盛りの子どもたちにしっかり食べさせたいと自分は夕食を抜く。「もう、削るところがない」
事業の名称は「Table for Kids(テーブル・フォー・キッズ)」。利用者がスマートフォンの専用アプリをダウンロードすると、協力加盟店で使えるポイントが付与される。利用者は店内のQRコードを読み取り、決済する仕組みだ。
夢職人が、申し込みのあった家庭の経済状況などを審査し、支援対象を決める。現在、利用者は都内16区市に住む108世帯、協力加盟店は、江東、墨田、中央、江戸川の4区内の飲食店や弁当店、青果店など計38店に上る。
◆コロナ禍で「見えない貧困」顕在化
支援のきっかけは、2020年春に国内で流行し始めた新型コロナウイルス禍だった。夢職人が取り組む子どもの体験活動や青少年ボランティアの育成活動などが一斉に休止。地域の子ども支援団体と情報交換する中で、ひとり親家庭の困窮が深刻化している現状が浮かび上がった。
「本当に支援が必要な家庭に、必要な物を届ける仕組みはないか」。岩切さんらは、子育て家庭に聞き取りをした。無料食料配布には「並ぶ時に人目が気になる」との声が寄せられ、スマホ決済を活用する方法を模索。デジタル地域通貨事業者の協力を得て、20年12月に事業を始めた。
加盟店の1つで企画段階から携わったレストラン「mamma cafe 151A」(江東区)の店部浩司さん(50)は「小さな女の子が目をキラキラさせて食べる様子を見て、外食の喜びを体験してもらえて良かった」と手応えを語る。加盟店で唯一の青果店「松沢商店」(墨田区)の松沢隆之さん(48)は「利用者は確実に増えている。『見えない貧困』に気づかされた」と明かした。
ポイントの原資は個人や企業からの寄付金だ。集まった金額に応じて随時、利用者を募集。直近の9月には新たに36世帯の支援を始めたが、申し込みは、千葉、埼玉など隣県も含めて5~6倍もあった。今年の年間寄付目標額の1200万円の半分程度にとどまっている。
夢職人では寄付を呼びかけているほか、都県境を越えた連携を模索している。岩切さんは「誰でも病気やけがで働けなくなるリスクを抱えている。新しいセーフティーネットの形として広げたい」と力を込める。
寄付の方法などの詳細は、夢職人=電03(5935)730x、ホームページの「寄付で子どもの食を支援」へ。
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「東京共助」では、首都・東京で生きるのが精いっぱいの人たちの姿やそれを支える共助の現場、行き届かぬ公助の問題点を随時伝えます。
東京新聞 2022年11月17日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/214334