<ニュースあなた発>
千葉県浦安市の総合病院「東京ベイ・浦安市川医療センター」に勤務する放射線技師の男性が、医師の指示なく無断で同僚女性にコンピューター断層撮影(CT)検査をしていたことが分かった。法律に反する医療行為だが、病院は公表していなかった。県に情報が寄せられ、2021年11月、病院を口頭で指導していた。(加藤豊大)
「ニュースあなた発」に届いた情報を元に本紙が取材し、病院や県が認めた。
診療放射線技師法では、医師の具体的な指示を受けずに、放射線技師がCTなどの放射線を人体に照射することを禁じている。公益社団法人「日本放射線技術学会」によると、CTは放射線検査の中で被ばく線量が比較的高い。特に胎児は影響を受けやすく、妊娠の可能性のある女性らに対しては注意が必要という。
県によると、男性技師は夜勤をしていた18年11月23日、「腹痛が続く」と訴えた同僚女性に医師の指示なくCTを行った。女性の健康被害は確認されていないという。
県は21年8月になって、情報提供により問題を把握。指導を受けた病院は同12月、不審なCT画像がないか抜き打ちで確認したり、運用マニュアルを掲示したりする再発防止策を県に提出した。
過去には、12年に秋田県立リハビリテーション・精神医療センター(大仙市)で、14年には名古屋大医学部付属病院(名古屋市)で、放射線技師が医師に無断でCT検査やエックス線撮影し、いずれも懲戒処分を受けている。
国際医療福祉大の上田克彦教授(医用画像工学)は「医師は患者の不要な放射線被ばくを避けるため、CT検査が必要か慎重かつ厳格に判断している。技師が独断で実施することは重大な違反行為だ」と指摘する。
◆マニュアルはドアに掲示 「気付かなかった」
東京ベイ・浦安市川医療センターが千葉県の指導を受けてから丸1年。同じ放射線室に勤める職員から「病院から再発防止策の説明を受けた記憶はない。県への報告は形だけでは」と、病院の対応をいぶかる声が上がった。
職員らによると、病院が再発防止策の1つに挙げていた放射線室の運用マニュアルは、院内の1室のドアに掲示されているという。違法行為があった翌月の2018年12月の日付で、放射線照射について「技師の人権と安全を担保するためにマニュアルを作成し、防止策を講ずる」とある。ただし、院内の複数の関係者にマニュアルの存在を尋ねると「掲示されていたことすら気付かなかった」との答えが返ってきた。
病院側は本紙の取材に「県に報告した再発防止策を順守しており、既に解決済みの案件」と回答する。
県医療整備課は、病院が再発防止策を適切に実施しているかどうか実地検査を検討している。
この記事は「ニュースあなた発」に寄せられた情報をもとに、本紙記者が取材しました。「ニュースあなた発」は、読者の皆さんの投稿や情報提供をもとに、本紙記者が取材し、記事にする企画です。身の回りのモヤモヤや疑問から不正の告発まで、広く情報をお待ちしています。東京新聞ホームページの専用フォームや無料通信アプリLINE(ライン)から調査依頼を受け付けています。秘密は厳守します。詳しくはこちらから。
東京新聞 2023年1月3日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/223213
千葉県浦安市の総合病院「東京ベイ・浦安市川医療センター」に勤務する放射線技師の男性が、医師の指示なく無断で同僚女性にコンピューター断層撮影(CT)検査をしていたことが分かった。法律に反する医療行為だが、病院は公表していなかった。県に情報が寄せられ、2021年11月、病院を口頭で指導していた。(加藤豊大)
「ニュースあなた発」に届いた情報を元に本紙が取材し、病院や県が認めた。
診療放射線技師法では、医師の具体的な指示を受けずに、放射線技師がCTなどの放射線を人体に照射することを禁じている。公益社団法人「日本放射線技術学会」によると、CTは放射線検査の中で被ばく線量が比較的高い。特に胎児は影響を受けやすく、妊娠の可能性のある女性らに対しては注意が必要という。
県によると、男性技師は夜勤をしていた18年11月23日、「腹痛が続く」と訴えた同僚女性に医師の指示なくCTを行った。女性の健康被害は確認されていないという。
県は21年8月になって、情報提供により問題を把握。指導を受けた病院は同12月、不審なCT画像がないか抜き打ちで確認したり、運用マニュアルを掲示したりする再発防止策を県に提出した。
過去には、12年に秋田県立リハビリテーション・精神医療センター(大仙市)で、14年には名古屋大医学部付属病院(名古屋市)で、放射線技師が医師に無断でCT検査やエックス線撮影し、いずれも懲戒処分を受けている。
国際医療福祉大の上田克彦教授(医用画像工学)は「医師は患者の不要な放射線被ばくを避けるため、CT検査が必要か慎重かつ厳格に判断している。技師が独断で実施することは重大な違反行為だ」と指摘する。
◆マニュアルはドアに掲示 「気付かなかった」
東京ベイ・浦安市川医療センターが千葉県の指導を受けてから丸1年。同じ放射線室に勤める職員から「病院から再発防止策の説明を受けた記憶はない。県への報告は形だけでは」と、病院の対応をいぶかる声が上がった。
職員らによると、病院が再発防止策の1つに挙げていた放射線室の運用マニュアルは、院内の1室のドアに掲示されているという。違法行為があった翌月の2018年12月の日付で、放射線照射について「技師の人権と安全を担保するためにマニュアルを作成し、防止策を講ずる」とある。ただし、院内の複数の関係者にマニュアルの存在を尋ねると「掲示されていたことすら気付かなかった」との答えが返ってきた。
病院側は本紙の取材に「県に報告した再発防止策を順守しており、既に解決済みの案件」と回答する。
県医療整備課は、病院が再発防止策を適切に実施しているかどうか実地検査を検討している。
この記事は「ニュースあなた発」に寄せられた情報をもとに、本紙記者が取材しました。「ニュースあなた発」は、読者の皆さんの投稿や情報提供をもとに、本紙記者が取材し、記事にする企画です。身の回りのモヤモヤや疑問から不正の告発まで、広く情報をお待ちしています。東京新聞ホームページの専用フォームや無料通信アプリLINE(ライン)から調査依頼を受け付けています。秘密は厳守します。詳しくはこちらから。
東京新聞 2023年1月3日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/223213