ITmedia2023年01月20日 07時00分
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2301/20/news019.html
2024年度卒の就活から採用直結型のインターンシップ(就業体験)が解禁されることになった。政府は22年6月、経団連と大学でつくる「産学協議会」の報告(「産学協働による自律的なキャリア形成の推進」)を受け、インターンシップに関する就活ルールを改定した。
大学3年生の3月に企業説明会開始、6月選考開始という日程ルールは変わらないが、インターンシップに参加した学生の情報を採用選考に使用できるようになる。
対象となるインターンシップは「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」という名前で、参加期間は5日以上(専門活用型は2週間以上)、就業体験必須、募集時に必要な情報開示などの要件がついている。解禁は24年度以降のため、今の大学2年生の就活からとなる。
■すでに定着している、インターン→内定の流れ
とはいっても、すでにインターンシップは大学3年の夏から本格的に始まり、それが早期の“内々定”と連動し、採用選考と一体化している実態もある。インターンシップは15年の夏(16年卒)以降急増した。
大学3年生になった直後の5月頃に企業はインターンシップ参加者募集のポスターを作成し、大学に配布する。そして6月初旬から中旬にかけて各就活サイトが開催する「夏期インターンシップ合同説明会」が事実上の就活スタートになる。
(中略)
■広まる採用格差 苦しむ中小企業と学生
今まで大学3年生の年末に内定を出していた外資系企業やITベンチャーにとどまらず、多くの企業が囲い込みに走り、内定の早期化がさらに早まる可能性もある。
複数企業の人事アドバイザーを務めるティーブリッジェズカンパニー代表取締役の高橋実氏(高は正しくは「はしごだか」)はこう語る。
「内定の早期化が進むのは間違いない。人気のある企業とそうでない企業の採用格差がさらに拡大するだろう。今後、少子化で労働人口が減少していくと、例えば100人の学生に対し、10社に10人ずつ入ることはなく、70人が人気企業や大手企業に吸収され、残りの30人を巡って中堅・中小企業が奪い合う構図になる。採用力のない中小企業は今まで以上に厳しくなるのは間違いない」
人気のある大手企業と中堅・中小企業の人材獲得競争の格差が広がるだけではない。学生にとっても格差が広がる。
誰もがインターンシップに参加できるわけではない。一般選考のエントリーと違い、インターンシップは人数が限定されるためにエントリーしても落ちる学生も多い。
東京都内の私立大学のキャリアセンターの担当者は「インターンシップは8月の夏休みに集中している。大学としては数社のインターンシップに参加して企業を幅広く見てきなさいと言っている。しかし、人気企業ほど狭き門となっている。企業によっては就職する方が簡単じゃないかと思うぐらいの高い倍率になっている。学生の中には最初のインターンシップでつまずき、就活を投げ出す人もいる」と語る。
就活生の間でも早期に内定をもらう人と、いつまでも就活が終わらない人が発生する「就活格差」も発生するだろう。大学3年になった直後のインターンシップに落ち、最初の挫折を味わっても、先は長い。大学の友人が早期に内定を得るたびに不安と焦燥に駆られながら歯を食いしばり、ひたすら就活を続けなくてはならない。ようやく決まるのが大学4年の年末ということも起こりうる。
■就活ルールなき時代に
採用直結型インターンシップの解禁で「3月の広報活動開始、6月選考開始」という建前がますます形骸化していく。就活ルールの見直しはこれまで何度となく繰り返されてきた。
採用選考時期をめぐる協定は古くは1929年から始まり、戦後は53年に当時の文部省・労働省および大学団体と日経連による「就職問題懇談会」を結成、卒業年度の10月1日以降を選考開始とする「就職協定」が結ばれることになった。
だが、高度成長期の人材獲得競争の激化で協定破りが横行。60年代初期には7月末には大手企業の多くが採用活動を終了する「青田買い」が常態化し、60年代中盤以降は大学3年の2~3月に内定を出す企業も登場し、“早苗買い”“種モミ買い”とも呼ばれた。
その度に就職協定の日程が何度も改定され、2003年には経団連が「倫理憲章」を制定。賛同者に署名を求める形で05年卒の学生から適用されたが、それでもルール破りの企業がなくなることはなかった。
就職協定がなくなり現行の政府の指針の3月広報解禁、6月選考解禁もインターンシップ選考によって機能しなくなった。
そして今回の政府の方針変更によって、実施的に就活ルールなき時代に入ったといえる。
※全文は出典先で
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2301/20/news019.html
2024年度卒の就活から採用直結型のインターンシップ(就業体験)が解禁されることになった。政府は22年6月、経団連と大学でつくる「産学協議会」の報告(「産学協働による自律的なキャリア形成の推進」)を受け、インターンシップに関する就活ルールを改定した。
大学3年生の3月に企業説明会開始、6月選考開始という日程ルールは変わらないが、インターンシップに参加した学生の情報を採用選考に使用できるようになる。
対象となるインターンシップは「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」という名前で、参加期間は5日以上(専門活用型は2週間以上)、就業体験必須、募集時に必要な情報開示などの要件がついている。解禁は24年度以降のため、今の大学2年生の就活からとなる。
■すでに定着している、インターン→内定の流れ
とはいっても、すでにインターンシップは大学3年の夏から本格的に始まり、それが早期の“内々定”と連動し、採用選考と一体化している実態もある。インターンシップは15年の夏(16年卒)以降急増した。
大学3年生になった直後の5月頃に企業はインターンシップ参加者募集のポスターを作成し、大学に配布する。そして6月初旬から中旬にかけて各就活サイトが開催する「夏期インターンシップ合同説明会」が事実上の就活スタートになる。
(中略)
■広まる採用格差 苦しむ中小企業と学生
今まで大学3年生の年末に内定を出していた外資系企業やITベンチャーにとどまらず、多くの企業が囲い込みに走り、内定の早期化がさらに早まる可能性もある。
複数企業の人事アドバイザーを務めるティーブリッジェズカンパニー代表取締役の高橋実氏(高は正しくは「はしごだか」)はこう語る。
「内定の早期化が進むのは間違いない。人気のある企業とそうでない企業の採用格差がさらに拡大するだろう。今後、少子化で労働人口が減少していくと、例えば100人の学生に対し、10社に10人ずつ入ることはなく、70人が人気企業や大手企業に吸収され、残りの30人を巡って中堅・中小企業が奪い合う構図になる。採用力のない中小企業は今まで以上に厳しくなるのは間違いない」
人気のある大手企業と中堅・中小企業の人材獲得競争の格差が広がるだけではない。学生にとっても格差が広がる。
誰もがインターンシップに参加できるわけではない。一般選考のエントリーと違い、インターンシップは人数が限定されるためにエントリーしても落ちる学生も多い。
東京都内の私立大学のキャリアセンターの担当者は「インターンシップは8月の夏休みに集中している。大学としては数社のインターンシップに参加して企業を幅広く見てきなさいと言っている。しかし、人気企業ほど狭き門となっている。企業によっては就職する方が簡単じゃないかと思うぐらいの高い倍率になっている。学生の中には最初のインターンシップでつまずき、就活を投げ出す人もいる」と語る。
就活生の間でも早期に内定をもらう人と、いつまでも就活が終わらない人が発生する「就活格差」も発生するだろう。大学3年になった直後のインターンシップに落ち、最初の挫折を味わっても、先は長い。大学の友人が早期に内定を得るたびに不安と焦燥に駆られながら歯を食いしばり、ひたすら就活を続けなくてはならない。ようやく決まるのが大学4年の年末ということも起こりうる。
■就活ルールなき時代に
採用直結型インターンシップの解禁で「3月の広報活動開始、6月選考開始」という建前がますます形骸化していく。就活ルールの見直しはこれまで何度となく繰り返されてきた。
採用選考時期をめぐる協定は古くは1929年から始まり、戦後は53年に当時の文部省・労働省および大学団体と日経連による「就職問題懇談会」を結成、卒業年度の10月1日以降を選考開始とする「就職協定」が結ばれることになった。
だが、高度成長期の人材獲得競争の激化で協定破りが横行。60年代初期には7月末には大手企業の多くが採用活動を終了する「青田買い」が常態化し、60年代中盤以降は大学3年の2~3月に内定を出す企業も登場し、“早苗買い”“種モミ買い”とも呼ばれた。
その度に就職協定の日程が何度も改定され、2003年には経団連が「倫理憲章」を制定。賛同者に署名を求める形で05年卒の学生から適用されたが、それでもルール破りの企業がなくなることはなかった。
就職協定がなくなり現行の政府の指針の3月広報解禁、6月選考解禁もインターンシップ選考によって機能しなくなった。
そして今回の政府の方針変更によって、実施的に就活ルールなき時代に入ったといえる。
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