入学先にこだわらなければ、誰でも合格できるー。受験生が定員の数を下回る「大学全入時代」が訪れようとしている。競争緩和の影響で、浪人生の急激な減少に加え、「大卒の価値」の地殻変動も起きているという。受験生にとっては志望校合格へのチャンスが広がった形だが、かつて「戦争」とも例えられた大学受験の変化は、日本に何をもたらすのだろうか。
(中略)
文部科学省の「学校基本調査」によると、90年代にピークを迎えた浪人生の人数は、その後大きく減少。大学入学共通テスト(旧センター試験)の志願者データでは、94年度に19万2208人いた浪人生の志願者は、2023年度には7万1642人まで減り、過去最少を更新した。一方、現役生が志願者全体に占める割合は過去最高の85.2%に達している。
(中略)
◆浪人生の「減少スパイラル」
(中略)
近藤さんによると、「浪人減」の主な要因は、少子化による18歳人口の減少と、大学の増加による定員増だ。日本の18歳人口は92年に約205万人に達したが、その後減少。2023年の入試に挑戦する18歳は約110万人まで減った。一方の大学は、1990年代以降、規制緩和による新設ラッシュが続き、92年度に523校だった大学の数は、02年度686校、12年度783校、22年度807校と、大きく増加している。
18歳人口が減って大学の定員が増えれば、志望校に合格しやすくなるため、浪人する人が減る。浪人生の減少は、翌年の現役受験生の「強力なライバル」が減ることにつながり、さらに翌年の浪人生が少なくなる。近藤さんは、こうした「浪人生の減少スパイラル」を背景に、早ければ23年度にも「大学全入時代」が到来すると予測。「浪人生が顧客である予備校にとっては『負の連鎖』かもしれないが、受験生にとってみれば、今はかつてなく志望校に受かりやすい『千載一遇のチャンス』と言える」と話す。
◆揺らぐ「就職は大卒有利」
日本社会では「大学進学は就職に有利」という考えが広まり、こうした共通認識が進学率を底上げすると同時に、大学の定員増も後押ししてきた。しかし、近藤さんはこうした価値観も揺らぎ始めたと感じている。
近藤さんが着目しているのは、現役生が大学進学を志望する割合の推移だ。18歳人口がピークだった92年当時は35.5%で、その後2000年代に掛けて50%台まで急上昇したが、2010年代は横ばいに。足下では60%前後で推移している。
進学しやすくなったのに、現役生の志願率は頭打ちになっているように見える。いったい、なぜなのか。
「08年に起きたリーマンショックの影響で、当時70%あった大卒者の就職率は2年間で61%まで下落しました。その後は働き方が多様化し、学歴がなくても動画配信などで稼ぐことができるSNS時代が到来。こうした世の中の変化で『いい大学に入っていい企業に就職すれば安泰』とか『大卒でなければ裕福になれない』といった価値観が崩壊したことが、志願率の頭打ちという形で現われたのではないでしょうか」(近藤さん)
(中略)
◆「浪人」から「勇者」へ
「浪人という言葉には、入れる場所がどこにもない人というイメージがあるが、最近は複数の大学に合格していながら、第一志望にこだわり、あえてもう一度受験に臨む受験生も目立つ」とも説明した近藤さん。受験事情が急速に変化する中、「浪人」という表現自体が、現状とそぐわなくなってきている側面もあるといい、「個人的には『浪人』ではなく『勇者』と呼びたい」と話す。
(中略)
全入時代が迫る中、受験先の大学を吟味する動きも加速しているという。駿台予備学校では、入試の最新情報や出願に向けた考え方などを説明する保護者会の参加率が年々増加。「進学先の選択肢が増える中、どこに出願すれば我が子が社会で生き残っていけるのか、真剣に検討する家庭が増えた」(駿台関係者)ためだ。10~20年ほど前まで半分以下だった参加率は、現在は8割前後まで上昇しており、両親がそろって訪れることも珍しくなくなったという。
◆「大学全入」がもたらすもの
(全文はこちら)
https://news.yahoo.co.jp/articles/b93bff2d80c64b22c2ce2873dfc0ef83a50eba19
(中略)
文部科学省の「学校基本調査」によると、90年代にピークを迎えた浪人生の人数は、その後大きく減少。大学入学共通テスト(旧センター試験)の志願者データでは、94年度に19万2208人いた浪人生の志願者は、2023年度には7万1642人まで減り、過去最少を更新した。一方、現役生が志願者全体に占める割合は過去最高の85.2%に達している。
(中略)
◆浪人生の「減少スパイラル」
(中略)
近藤さんによると、「浪人減」の主な要因は、少子化による18歳人口の減少と、大学の増加による定員増だ。日本の18歳人口は92年に約205万人に達したが、その後減少。2023年の入試に挑戦する18歳は約110万人まで減った。一方の大学は、1990年代以降、規制緩和による新設ラッシュが続き、92年度に523校だった大学の数は、02年度686校、12年度783校、22年度807校と、大きく増加している。
18歳人口が減って大学の定員が増えれば、志望校に合格しやすくなるため、浪人する人が減る。浪人生の減少は、翌年の現役受験生の「強力なライバル」が減ることにつながり、さらに翌年の浪人生が少なくなる。近藤さんは、こうした「浪人生の減少スパイラル」を背景に、早ければ23年度にも「大学全入時代」が到来すると予測。「浪人生が顧客である予備校にとっては『負の連鎖』かもしれないが、受験生にとってみれば、今はかつてなく志望校に受かりやすい『千載一遇のチャンス』と言える」と話す。
◆揺らぐ「就職は大卒有利」
日本社会では「大学進学は就職に有利」という考えが広まり、こうした共通認識が進学率を底上げすると同時に、大学の定員増も後押ししてきた。しかし、近藤さんはこうした価値観も揺らぎ始めたと感じている。
近藤さんが着目しているのは、現役生が大学進学を志望する割合の推移だ。18歳人口がピークだった92年当時は35.5%で、その後2000年代に掛けて50%台まで急上昇したが、2010年代は横ばいに。足下では60%前後で推移している。
進学しやすくなったのに、現役生の志願率は頭打ちになっているように見える。いったい、なぜなのか。
「08年に起きたリーマンショックの影響で、当時70%あった大卒者の就職率は2年間で61%まで下落しました。その後は働き方が多様化し、学歴がなくても動画配信などで稼ぐことができるSNS時代が到来。こうした世の中の変化で『いい大学に入っていい企業に就職すれば安泰』とか『大卒でなければ裕福になれない』といった価値観が崩壊したことが、志願率の頭打ちという形で現われたのではないでしょうか」(近藤さん)
(中略)
◆「浪人」から「勇者」へ
「浪人という言葉には、入れる場所がどこにもない人というイメージがあるが、最近は複数の大学に合格していながら、第一志望にこだわり、あえてもう一度受験に臨む受験生も目立つ」とも説明した近藤さん。受験事情が急速に変化する中、「浪人」という表現自体が、現状とそぐわなくなってきている側面もあるといい、「個人的には『浪人』ではなく『勇者』と呼びたい」と話す。
(中略)
全入時代が迫る中、受験先の大学を吟味する動きも加速しているという。駿台予備学校では、入試の最新情報や出願に向けた考え方などを説明する保護者会の参加率が年々増加。「進学先の選択肢が増える中、どこに出願すれば我が子が社会で生き残っていけるのか、真剣に検討する家庭が増えた」(駿台関係者)ためだ。10~20年ほど前まで半分以下だった参加率は、現在は8割前後まで上昇しており、両親がそろって訪れることも珍しくなくなったという。
◆「大学全入」がもたらすもの
(全文はこちら)
https://news.yahoo.co.jp/articles/b93bff2d80c64b22c2ce2873dfc0ef83a50eba19